スティグマ



『その烙印──


焼きゴテを。
その青白い柔肌に押し付けて作る、痛々しくも神々しいその烙印を。

最愛の君に。
殺してしまいたいほど愛しい君に。

僕は捧げると誓うよ。』



++スティグマ++



太い枯れ枝を掴んで、力任せにへし折ったような。
なんとも形容しがたいそれは、骨の折れる音。


「っあ、ああぁぁぁ!!」


階下の踊場で痛みにのたうちまわるセブルスを、階段の上から冷たく見下ろす。

「ああスニベリィ。君があんまり苛立たせるものだからつい蹴り飛ばしちゃったよ」

なんて、笑顔で言ってのけながら、セブルスに一歩一歩ゆっくりと近づいていく。
それは、ぞっとする程。

「やっ……!来るな!!」

見開かれたその目は、追い詰められた草食動物のそれと似通っていた。
さしずめ、追い詰める側は餓えた肉食獣と言ったところだろうか。


差し伸べた掌は、セブルスの不自然に歪んだ足首を掴んだ。


「いっ!!やめっ……離せ!離せ!!」
「うるさいよ」


患部を、手の甲に青筋が浮かぶほど強く力を込めて握られたセブルスは痛みに耐えきれず涙を零した。


「やめ……やめて、くれ。頼、むから……」


その懇願に、口角が持ち上がる。
それでもセブルスを見つめる視線は酷く穏やかだ。



「しょうがないね。じゃあ許してあげる」



耳元に口を近付けて囁くように言う。
その声音は、心なしか甘めいた響きを含んでいた。



「ただし、君は“独りで勝手に自分で”階段から落ちた。いいね?」
「解った……解った、から……」



セブルスは、ボロボロと涙を零したまま、幼子がむずがるような首を左右に振った。








それをただ、僕はでくのぼうのごとく見つめていた。
彼は漸く満足したのか、僕の方へと歩いてくる。
先程までの出来事が、まるで夢だったと思わせるほど酷く自然な笑顔で。

「待たせてごめんね、リーマス。さあ行こうか」

謝るべき対象は、僕じゃなくてセブルスだろうに。



(例え、それがごめんねで許されるかどうかは別として、だ)



「構わないよ」

そう言ってジェームズと連れたって歩き出す。


セブルスは壁に手をついて立ち上がると、足を引きずりながら僕らに背を向けてよろよろと歩いて行った。



好かれているとは言い難い彼のことだ。
きっと、誰も手なんか貸してくれない。





罪悪感とやるせなさで出そうになった溜息を僕は飲み込んだ。
そんな僕の様子に気が付いたのか、彼……ジェームズは僕の顔を心配そうに覗き込んだ。



「どうかした?」
「なにも、ないよ」




目眩がする。
セブルスの骨の折れた音が、耳について離れなかった。





END+++++





なんか精神的に病んだ小説でごめんなさい……。
スティグマというのは“偏見”と“先入観”とかそういう意味合いの単語ですが
、語源は奴隷につけた烙印だそうで……。
それを聞いた瞬間ジェセブ書くしかない!と……。
ごごごごめんなさい……。
(07.08.19)


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