今日の日を永遠に





「お誕生日、おめでとう御座います。」

柳生はニッコリと笑ってそう俺に言った。
俺はなんとなく幸せな気分がして。
今なら空だって飛べそうな気がした(気だけね)

「柳生、覚えててくれたんだ!」
「もちろんですよ。」

柳生はニコニコと笑う。
俺は嬉しさのあまり柳生に飛びついた。

「丸井君、苦しいですよ?」

柳生が少し困ったように。
それでも優しい声色で講義をする。
俺はすぐに離れてゴメン、と笑った。

「さんきゅーな!プレゼント、請求していい?」
「ええ。何が食べたいですか?好きなもの、おごりますよ。」
「そうだなー。じゃあ帰りまでに考えとくぜぃ。」
「はい。待ってますね。」

柳生はにこりと笑って部室に向かった。
俺はスキップでもしそうなくらいうきうきして。
たぶん、朝連の時間ずっとニヤニヤしていたんじゃないだろうか。
我ながら不審だと思った。
それでも自然ににやける顔は止められなかった。
自分でも相当おかしいと思う。




「丸井先輩、ニヤニヤして気持ち悪いっす。」

隣で着替えていた赤也が唐突にそう言った。
多分いつもなら「なんだと!」と怒鳴っている。
だけど今日は笑ったまま赤也の方を向いた。

「そうかそうか!」
「え?あの、“なんだと!”とか言わないんすか?」

赤也は変な顔をした。

「そんなことでブン太様は怒ったりしねぇよっ。」
「……ずいぶんとご機嫌っすね…。」
「そうかぁ?いつもと変わんねぇよ!」

ははっと笑って赤也の背中をバシバシと叩く。

「い、痛いっす!」
「悪い悪い。」

赤也は気味の悪いものを見るような目で俺を見た。
失礼な、っと思うけど気分がいいから口にしない。

自分でも相当…(以下略)





楽しいことが控えているときは時の流れが嫌に遅い。
俺はどれだけ自分が柳生が好きなのか。
それを再確認した気がした。

俺は授業中に時計ばっかり確認して。
度々教員にご指導を頂いた。
絶対今日だけで成績下がりまくったと思う(もう気にしねぇ)
そう思っていてもワクワクして。
柳生と何食べようか。
何処行こうか。
それを考えるだけで顔がにやけた。






「よし!やっと帰れるぜぃ!」

今日は都合良く部活がお休みだ。
それだけきっと、柳生といられる。
俺は嬉々として柳生の教室の扉を開いた。
「柳生!帰ろうぜぃ!」
ガラッっと扉を開きながら俺はそう言った。

「おー来たなブン太。」

そこに仁王がいた(マジ最悪)
教室には仁王のほか誰もいない。
柳生は何処に行ったんだろう。

「……なんでお前がいんの?」

今までの高揚した気分が一気に冷めた気がする。
誕生日にまでこいつの顔を見るなんて(朝連でも見たけどさ)

「ちょっとお前に言わないかんことがあるき。」
「わりぃけど俺、今から柳生と飯喰いに行くから。」
「そのことなんじゃがな、それ嘘じゃ。」
「あ、お前柳生が何処にいるか知って……は?」

待て待て待て。
なんか一瞬目の前が暗くなったぞぃ。
いや、よく聞こえなかったから定かじゃねぇけど。
こいつ、今嘘だって言わなかったか?

「だからな、嘘なんじゃよそれ。」

開いた口が塞がらない。
俺は多分今相当な間抜け面をしている。

「何でお前がそれ知ってんの?」
「朝の柳生な、あれ俺なんじゃ。」

俺俺、っと仁王は自分を指差した。
つまり、朝俺を誘った柳生は仁王の変装した柳生で。
ということは俺を誘ってくれた柳生はただの幻で(実際は仁王だけど)

「って、何のためにだよ!」

俺は思わず芸人のような突っ込み方をした。
飛び掛らなかっただけでも俺は偉いと思う。
自分を誉めてやりたいね。

「誕生日じゃったけぇ、せめてお前に夢見さしたろ思って。」
「そりゃどうも。じゃあ、柳生はもう帰ったんだな。」
「おう、もうとっくに。」
「つまり本当は柳生は俺の誕生日なんて知らなかったと。」
「おう、そういうことじゃね。」

おれは、はははっと乾いた笑いを洩らした。
……殺したい。
目の前にいるこの詐欺師を。

「ははっ、おかしいな。目から汗が出るぜぃ。」
「ブン太、それは涙という名の心の汗じゃ。」
「上手くまとめてんじゃねぇ。」


4月といえどもまだ多少は肌寒い。
日はすでに傾きかけていて。
長い影が二つ、教室に伸びていた。

俺は心の汗を拭いながら、去年の12月を思い返した。
仁王の誕生日。
この詐欺師もまた、柳生に誕生日を忘れられていて。
それを見た俺は「ざまぁねぇな!」っと大笑いした気がする。
確か仁王はその時「覚えときんしゃい」と言っていた。

なるほど。
すっかり忘れていた。

4月20日、俺の15の誕生日。
俺は今日という日を一生忘れない。

多分。




END+++++





一足遅れてお祝いです。
涙のお誕生日おめでとう!ブン太……!(爽笑)
大丈夫だよ、柳生は平等に誰の誕生日も覚えていませんから(最低)
多分自分の誕生日も言われるまで忘れていますよ☆
柳生に祝ってもらいたかったら前日までにあらかじめ言っておかないといけない気がします。
(06.04.27)


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