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春暁
春の日は柔らかく暖かい。
君との優しい時間は。
まるでそこだけ切り離された空間にいるよう。
「慈郎ー?」
忍足は中庭を見渡した。
そこで一人、寝息を立てている人物を発見した。
「おった。」
忍足は小さく溜め息をついた。
足早に慈郎に歩み寄った。
「慈郎、起きたってや。」
側に屈んで困ったように言う。
「後で俺が跡部に怒られんねんで?」
慈郎の身体を軽く揺すって覚醒させた。
「んー。忍足ぃー?」
「あぁ、起きた。」
割りとすんなりと目を覚ました慈郎に忍足はホッとして。
思わず良かった、と呟いた。
「もう部活の時間やで。」
「今日は行かないー。」
「それ言うなら今日も、やろ?そんなん言わんと。」
頼むわ、と忍足は苦笑いした。
うとうと、とまた慈郎は目を瞑って。
「あかんて!目ぇ覚まし!」
「春だから無理ぃ〜。」
「何言うてんの!」
「昔の偉い人も言ってたC。」
「誰んことやねんそれ!」
慈郎は屈んだ忍足を引き寄せて隣に座らせた。
そしてその膝に頭を乗せると満足気に目を閉じた。
「……しゃあないなぁ…。」
忍足は観念したように呟いた。
今日の部活は諦めよう、と溜め息を吐く。
少し困ったように、それでも幸せそうに。
忍足は跡部の鬼の様な怒り顔を想像してクスクス笑った。
慈郎はもう当分起きてはくれなさそうだ。
忍足は慈郎のふわふわとした頭に手をそっと載せた。
切り離された空間。
君との時間は、こんなにも優しい。
緩やかな陽射しを体に浴びる。
暖かい。
忍足は、欠伸を一つした。
急に睡眠欲が顔をだす。
この分なら、忍足も数分経たないうちに眠ってしまいそうで。
まどろみの中で、忍足は優しい風を感じた。
春眠暁を覚えず
処処啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落つること知る多少
END+++++
なんか、この二人の絡みちょっと可愛…(笑)
きっと、跡部は慈郎を蹴飛ばしてでも起こして連れて(連行して)いくけど忍足はつられて一緒に寝てしまうんじゃ…。
という妄想から生まれたものです。夢見がちですみません。
最後の漢文(書き下しですが)は孟浩然の唐詩です。かなり有名ですよね(笑)
この詩の世界観が綾瀬はとっても好きです(聞いてない)
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