俺は朝に滅法弱い。まず目が開かないし、覚醒するまでにかなりの時間を有する。そんな俺をいつも辛抱強く起こしてくれるのはサクラで。たたき起こすでもなく、サスケくん、おはよう、と優しく声をかけ、カーテンを開けてくれる。日光を浴びた俺は、少しずつ覚醒し、ようやくベッドからはいずり出ることが出来るのだ。 ところがどうだ。朝にはそこそこ強いはずのサクラが、なかなか覚醒しない。そのかわりなのか、俺はいつになく目覚めがよかった。 「サクラ。」 「……ん、んん?」 「朝だ。起きろ。」 「んー…。」 サクラは目を開けることなく、分かっているのかいないのかはっきりしない返事をした。そしてそのまままた寝ようとする。いつもの俺がこんな感じなのかと思うと、サクラに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。 とりあえず、サクラに倣いカーテンを開けた。光が差し込んできて、思わず目を細めた。サクラを窺うと、すやすやと寝ていた。 「…マジかよ。」 ベッドに腰掛けると、俺の体重でベッドが揺れた。 「…サクラ。」 「…ん。」 「起きろって。」 「…なにぃ?」 「朝だ。」 「そう…。」 再び寝そうになるサクラに、ため息をついた。無理矢理サクラの体を起こすと、しばらくサクラの様子を観察する。目を開けてはすぐにうとうとと体を揺らす。それを何度繰り返したか分からなくなったとき、ようやくサクラと目が合う。 「…あ。サスケくん。おはよー。」 「ん、はよ。」 「…お腹へった。」 「…作ってやるから、とりあえずベッドから出ろ。」 「うん。」 欠伸をしながら伸びをして。ベッドから出るのを見届けてから俺は先にリビングへ。簡単な朝食を作っていると、洗面所から大きな物音と。 「いったーい!」 サクラの叫び声が聞こえた。慌てて駆け寄ると、サクラは洗面所のドアの前でうずくまっていた。痛みに耐えているのか体は小刻みに震えていた。しゃがんでサクラと視線を合わせる。 「何やってんだよ、お前。」 「ぶ、ぶつけた…!」 「は?」 「おで、おでこ…!」 額を押さえている手をどかせると、少し赤くなっていた。回りを見ると、閉まったままのドア。恐らく寝ぼけたまま歩いて、ドアが開いているつもりだったのだろう。どこまで抜けてんだ、今日のこいつ。 「たんこぶになったりしないかなぁ?」 「大丈夫だろ。」 「うーん…。」 「おかげで目も覚めたろ。顔洗ってこい。」 ドアを開け、サクラを洗面所に促す。サクラはのろのろと立ち上がり、顔を洗い出した。 「サスケくん?キッチン行ってていいよ?」 「またどっかにぶつけたとか騒がれたら面倒だからな。連れてく。」 「もう大丈夫だって!」 「ほら、顔洗ったらこっち来る。」 有無を言わさず、サクラの手を取る。 「ねー、朝ごはん何にしたの?」 「秘密。」 「サスケくんが作るご飯久しぶり!」 食卓につき、朝食を並べる。サクラは目を輝かせてそれを見ている。 「…なんだよ。」 「オムレツ!しかもふわふわ!」 「お気に召したようで何より。」 「食べていい?食べていい?」 「どうぞ。」 「いただきます!」 サクラは幸せそうにオムレツを頬張り、食事中終始ニコニコと笑っていた。 「それにしても、お前今日目覚めが悪かったな。」 「あー、うん。なんでだろ?」 「疲れてんのか?」 「自分では疲れてないと思ってるんだけど…。…あ。」 「あ?」 「あれじゃない?日頃の私の大変さを知るための神様のいたずらとか。」 デザートのヨーグルトを食べながら、サクラは悪戯っ子のような笑みを浮かべた。俺が呆気に取られていると、ふふ、と笑ってヨーグルトを平らげた。 「でも、私サスケくん起こすの好きだよ。サスケくんの寝顔見れるし。」 「おま…っ!」 「サスケくんの寝顔可愛いんだよー。」 「お前は涎垂らしてたぞ。」 「え!嘘!」 「嘘。」 ひどいと騒ぐサクラを無視して、食器を片付ける。それに続きサクラも食器を片付ける。二人で並んで、食器を洗う。 「サクラ、明日はちゃんと起きろよ。」 「うん。サスケくんもね。」 どちらともなく、笑いがこぼれた。 20110206 |