「サクラちゃん、男が出来たらしいぜ!」 任務が終わり、親しい仲間で居酒屋に足を運んでいた。酒で会話は盛り上がり、馬鹿みたいに騒いでいた矢先のことである。ビール片手に、ナルトは大声で話しはじめたのだ。 「ふぅん、で、どんな男?」 「かなりの美形らしい!」 「焦らさずに言えよ!」 一方、サスケはそんな会話を雑音とでも言わんばかりに聞き流していた。サクラの男とは自分のことであり、ナルトの口から出てくる名前は自分のものだと思っていた。 「そーれーはー!」 「それは!?」 「サイ!!」 「!?」 サスケは思わず、飲んでいた酒を吹き出しそうになった。それをなんとか嚥下すると、ナルト達の会話を聞く。 「マジかよ!」 「この目で見たからなぁ、間違いねぇってばよ!」 サスケはそこまで聞くと、勢いよくジョッキを机に叩きつけ、居酒屋を出る。その様子を見ていた仲間は、今までの盛り上がりが嘘のように静まり返る。キバが肘でナルトを突き、状況を確認する。 「え、ナルト。さっきの話、ガチ?」 「いやいや。だって今日、エイプリルフールだぜ?」 「…めんどくせぇなぁ」 サスケは家まで一直線に走り、扉を開ける。その音に気づいたのか、奥からパタパタと足音が近づいて来る。 「サスケくん、お帰りなさい」 「…サクラッ!」 笑顔で迎えてくれたサクラだが、そんな余裕のないサスケは、サクラの両肩を掴むと真っ直ぐ見据える。 「…お前、浮気してんのか?」 「へ?」 サスケの口から出た思わぬ言葉に、サクラは目を丸くした。サクラは驚き、すぐに言葉が出てこなかったのだが、その間にサスケは不安を覚える。 「…ナルトの言ってたこと、本当なのか…」 「ナルト?…あぁ!」 「?」 「サスケくん、今日、4月1日!」 サクラのその一言を聞き、サスケの思考は一瞬の間停止する。そして、すべてを理解し脱力した。 「あはは、サスケくん可愛いー」 「うっせ…」 サクラの肩に顔を埋める。サクラの匂いを身近に感じ、サクラの声が間近で聞こえる。 「…本当かもしれないって、心配だったんだからな」 「…うん」 「疑った俺が、馬鹿だったけど」 「私はサスケくんしか見えてないから。でも、心配してくれて嬉しかったなぁ」 「ナルトとグルになって俺を騙したくせに、よく言うぜ」 「サスケくんがこんなに簡単に騙されると思わなかったのよ」 サクラはくすくすと笑いながら、サスケを優しく抱きしめた。それに応えるように、サスケもサクラの背に腕を回す。 「好き、サスケくん」 「ん、俺も」 4月馬鹿とは誰のこと (今日は馬鹿になってもいい日でしょ?) 20100401 |