『会いたかった』
『私もよ』
『あぁ、愛しているよ…』
『愛しているわ、誰よりも』

さぁ、落ち着きなさい春野サクラ。とにかく今は落ち着いて状況を整理するの。
今日私は書類を片付けようと決心した。でも一人じゃなんかつまんないからサスケくんを誘ってみた。そしたら快く承諾してくれたからサスケくんの家にお邪魔した。課題が一通り終わって、休憩しようってなったのよね。そしたら、私の鞄に入ったままになってた、いのから借りたDVD。いのがかなり良いって言ってたし、せっかくだから一緒に見ることにした。
そのDVDは洋画で、男女が何度も危機を乗り越えながら任務をこなしていくというもの。苦楽を乗り越えた二人にはいつの間にか愛情が芽生えていて、さっきのシーン。

『この任務が終わったら、一緒に暮らそう』
『それってプロポーズ?』
『そう受け取ってくれると嬉しいな』
『…喜んでお受けするわ!』

前々から思ってたけど、洋画のキスシーンって色気がありすぎるのよ。キスシーンでなくても色気があるってのに!わわ、キスし始めちゃった。

「……」
「……」

き、気まずい!
ちらりと目だけ動かしてサスケくんを盗み見た。サスケくんは顔色一つ変えず、DVDを見ていた。思わず、クッションを抱きしめる腕に力を込めた。
意識してるのは私だけ?こんなにドキドキしてるのは私だけ?サスケくんは、何とも思ってないのかな…。

「おい」
「……」
「おい」
「あ、はい!」
「終わったぞ」

テレビを見れば、スタッフロールが流れていた。色々考えている間に終わったのか。

「な、なかなか良かったね、この映画!」
「そうだな」
「さ、勉強を再開…」
「サクラ」

DVDを素早く回収し、そのまま机に向かおうとすると、サスケくんに腕を掴まれた。その力は意外にも強くて、勢いあまってサスケくんに寄り掛かる形になる。

「ど、どうしたの?」
「何考えてた?」
「はい?」
「映画見てる間、何考えてた?」

サスケくんの口元が、にやりと形を変えた。もしかして、全部お見通し?
でも私の思い過ごしだったら墓穴を掘るだけだから、とりあえずごまかしとこう。

「べ、別に?いのにDVDいつ返そう、とか」
「俺の方ちらちらと見ては、顔赤くしたり、クッション抱きしめたりしてたろ」
「えぇ!」

思わず私は自分の両頬を押さえた。私、顔赤くなってたの?というか、サスケくんに気づかれてたの?すでに墓穴掘ってたってこと?!

「で、何考えてた?」
「…き、気まずいな、と」
「ほう、何で?」
「そ、その…。……………から」
「聞こえん。もう一回」
「え!…洋画のキスシーンって、色っぽいから」
「…そういうこと考えてたのか」
「か、考えてないよ!」
「何想像したんだ?俺はまだ何も言ってないが」
「…!!」

今日のサスケくんは、いつも以上にSだ、鬼畜だ、変態だ。私がこれ以上なく恥ずかしい状態を楽しんでる。こんなことなら家で一人で書類片付けるべきだった…。

「別に、今さらだろうがそんな行為。キスも、それ以上も」
「さ、サスケくん!」
「ま、俺はその初々しい反応、好きだけどな」
「好きって…」

サスケくんは私のおでこに、軽く口付けると、私の髪をさらさらと手で梳きはじめた。その状況がなんだか恥ずかしくなって、私は目線をずらす。

「また変なこと考えただろ」
「それはサスケくんでしょ!」
「どうだか」

髪を梳いていた手が、そっと頬に触れられる。そのまま顎を持ち上げられたので、私はおとなしく目を閉じた。




(いつまでたっても慣れないの)



20100421



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