「父さんっ!父さんばっかずるい!!」
「ばぁか。お前にゃ百年早えーんだよ!!」


●二匹の猫●



ある日の昼下がり。
ポカポカ陽気の陽射しの中、賑やかな声がする。

「父さんばっかずるい!!俺も!俺も!!」
「はっ」

サスケは我が子に向かって鼻で笑うと、桜色に顔を埋める。

「サスケくん…。大人気ない…」

はぁ…とため息も付け足す。

「俺もっ!」

母の服の裾を引っ張り、必死に抗議する。

「サスケくん」
「?」
「カイにかわってあげて?」
「…」

こんなに至近距離で見つめられれば、首を縦に振るしかない。

「やったぁー!!」

我が子、カイは先程まで父がいた場所に飛び込んだ。

「えっへへぇ」
「甘えん坊ねぇ。誰に似たのかしら。」

カイの頭を撫でながら、サクラはサスケの方をチラリと見やる。

「…何だよ」

自分の場所を奪われて不機嫌なのか、何時もより幾分か低い声で返す。

「何でもない」

微笑を溢しながら、視線を戻した。

「母さん!俺、大きくなったら母さんと結婚する!!」
「女の子みたいなことを言うのね。」
「俺は男だっ!」
「はいはい」

息子からの結婚宣言に苦笑する。
まったく、どこまでそっくりなんだろう。

「でもね、カイ」
「うん?」
「大きくなったら、母さんよりも素敵な人が出来て、母さんのことなんか考えれなくなっちゃうかも」
「男に二言は無いもんっ!俺は、母さんと結婚する!」
「そう?嬉しい」

ギュッと抱きしめてやれば、嬉しそうに応える。
容姿だけでなく、対応の仕方まで似たのか。

「残念ながらそれは無理だな」
「何でだよ父さん!!」

今まで黙っていたサスケが喋り出す。

「サクラは既に、俺と結婚してるからな」

ふんっと、誇らしげにカイと目を合わせる。

「ずるい父さん!父さんばっかり母さんとらぶらぶしてぇ!!」
「おいっ、お前らぶらぶなんて何処で覚えてきた!?」
「カカシ先生がそう言ってた」

カイはそれだけ言うと、母の方へ向き直り、抱きつく。

「あの野郎…。カイに変な言葉覚えさせやがって…」

仮にも父親であるサスケは、かつて世話になった恩師に怒りを覚えた。
そして、いつか殴りに行こう、と予定をたてた。

「あら?カイ、眠いの?」
「う〜ん…」

目を擦りながらこちらへ頭を預けてくる。
何度かリズムよく優しく背中をたたいてやると、カイは規則正しく寝息を始めた。

「やっと二人きりだな」

カイを別室に連れていき戻ってくると、待ってましたと言わんばかりにサスケが近くに来た。

「寂しかった?」
「死ぬかと思った」

思わず苦笑する。

「構ってくれるんだよな?」

軽い口づけの後、耳元で囁かれる。

「家には子供が二人もいるのね」
「黙ってろ…」
「んっ」

深い口づけをしたまま、ソファーになだれ込む。

「ちょっ、サスケくん!」
「大丈夫だろ。カイは寝てるし」

再び深い口づけを交わしたところで、聞こえるはずのない声が響いた。

「あーっ!!父さんと母さんがイチャイチャしてるー!!」
「カイ!?」

サクラは急いで身なりを整え、サスケはサクラの上から退きながら舌打ちした。

「寝てたんじゃねぇのかよ」
「暑くて寝れない」

そう言いながら、カイはサクラの元へ駆け寄る。
せっかくの夫婦の時間が終わってしまった。

「母さんは渡さないもんねーっだ!!」

べぇっと威嚇された。
さて、父と子によるサクラ争奪戦はいつまで続くやら…。





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