ある時代のある日。 烈火国の王子―うちはサスケは、花嫁を探しに桜花国に来ていました。 ●王子様の花嫁探し● 「王子、この国が最後です。この国で見つからなければ、隣国の姫様と婚約していただきます」 「断る」 桜が咲き乱れている道を、王子一行が通り抜けます。 王子はたいそうな美男子でありましたので、道行くおなごの目は釘付けになってしまいます。 『烈火国の王子様だわ!』 『素敵!どなたと婚約なさるおつもりなのかしら?』 そんな黄色い声には目もくれず、王子は桜花国の城を目指します。 「ようこそいらっしゃいました」 城へ入れば、召し使い達が深々とお辞儀をして出迎えてくれました。 「王子は長旅で疲れていらっしゃる。すぐに宴の準備を」 こんなときは従者もちょっと威張れます。 召し使いに命令口調で用件を伝えます。 「かしこまりました」 召し使いが手を叩けばあら不思議。 色とりどりの料理や、華やかな踊り子達が現れました。 「…」 「おい、酒を」 王子の眉間に皺がよったのを発見した従者は、気をきかせて再び手を叩きます。 「いや、酒はいらん」 しかし、そんな気遣いも、王子さまはあっさりと撤回してしまいます。 「おい、あいつは誰だ?」 「あいつ…と申しますと…」 王子が指さす方を見やれば、一人の踊り子がいるではありませんか。 「あいつをここへ呼べ」 「あっ、はい。かしこまりました…」 王子の発言の意図が分からず、首をかしげますが、王子の命令は絶対なので、とりあえずその踊り子を呼びます。 「お前、名は?」 「春野サクラにございます」 深々とお辞儀をするサクラの髪を、王子は手にとります。 「お前、この国の姫君か何かか?」 「滅相もございません!私目はただの踊り子…、姫様はもっと素敵な方です」 「へぇ…。ま、そんなことはどうでもいい」 ニヤニヤと笑う王子の言動に、従者もサクラも首をかしげます。 「お前に決めた」 「はい?」 「おい、俺の親父と、ここの王に伝えとけ。俺は、こいつと結婚する」 「なっ…!?王子、この娘はただの踊り子…!お気を確かに!」 「あ?誰の気がおかしいって?」 従者にがんをとばしつつ、サクラを自分の腕の中へとおさめます。 「あの…?」 今だ状況把握が出来ていないサクラは、頬をほんのり染め、王子に問いかけます。 「サクラ、だったな」 「は、はい」 「お前は今日から"うちはサクラ"だ。いいな?」 王子は、腕の中の姫に口づけをしました。 「挙式は明日にでもあげるか。善は急げ、だ」 桜が舞い散る桜花国で、炎の燃えたぎる烈火国で。 波紋が広がったのは、言うまでもないだろう。 |