「こら!カイ、待ちなさい!」 「やだよーっ!」 バタバタと家を走り回る音に、サスケは目が覚めたようだった。時計をちらりと見れば、午前八時半。 「…なんだサクラ。朝っぱらから騒々しい」 「あ!サスケくんおはよう」 寝癖で頭がぼさぼさのまま起きてきたサスケに、サクラは頬にちゅっと口付けた。 「で?」 「カイったら、私の額当てどっかに隠しちゃったのよ。あ、カイ!待ちなさい!」 再びカイを発見したサクラは、追跡を開始する。 「貴重な非番だってのに…」 起きてしまってはもう寝られず、身なりを整えた。 (おはようのキス…やっぱり慣れねぇ…) サクラの前ではポーカーフェイスをやってのけたものの、思い出すと顔から火が噴きそうだ。結婚してから、サクラは毎朝、必ずするのであった。 「新婚かよ」 誰に何に突っ込むわけでもなく、そう呟くとリビングへ向かった。 「捕まえた!」 「きゃーっ!母さんにつかまったー!」 ちょうど、追跡も終わったようで、サクラの腕の中にはカイが。捕まったというのに、カイは笑顔。 「カイまさか、私をからかったの?!」 「バレちゃったー!」 「カイったら!もう…おしおきーっ!」 「母さん!くすぐったい!あははは!」 カイの体をくすぐりだしたサクラも笑顔。どうやら端から互いに本気ではなかったようだ。 「…サクラ」 「あ、ごめんサスケくん。今すぐご飯準備するね」 「おいこらカイ。サクラから離れろ」 「やだっ!」 「カイ、離れてくれないと、ご飯作れないんだけど…」 「やーだーっ!」 カイは一向にサクラから離れようとはしない。むしろ、離れまいとサクラにしがみつく。 「カイ離れやがれ!」 「いーやーだーっ!」 苛立ちが限界に達したのか、サスケはカイを引き剥がしにかかる。 「この野郎…っ!」 「あんまり引っ張ったら服伸びちゃう!」 「離さないもん…!」 少しの間引っ張っていたが、一向に離す兆しはなく、一時休戦。 「どうしたの?カイ。いつもはこんなことないのに…。」 「…だって母さん。」 「ん?」 「任務で遊んでくれないし、家にいたって父さんにとられちゃうから、一緒にいられないんだもん…。」 「だから額当てを?」 「ごめんなさい…」 完全に蚊帳の外のサスケをよそに、サクラは瞳を潤ませ、ひしとカイを抱き締めていた。 「おいサク…」 「ごめんねカイ。今まで相手してあげれなくて…」 「いいんだ。母さんがいるだけで、幸せだから!」 「カイ!」 ここで、サスケの苛立ちは、本日二回目の限界に達する。 「カイ…テメェ調子乗ってんなよ…。」 「サ、サスケくん?」 「いいじゃんか!いっつも母さんのこと独り占めしてるくせに!」 「してて悪いかよ!」 ギャーギャーと言い争いを始めた二人に、サクラも次第に呆れ始める。 「あのー、二人ともー」 「なんだサクラ!」 「なーに母さん!」 「私、そろそろ疲れたんだけど…。」 カイを抱いている腕も痺れ、言い争いの間に立つことでストレスは溜まる一方。 「よし!こうなったらみんなでお昼寝しましょう!」 「は?」 「やった!お昼寝ー!」 呆気にとられるサスケを残し、二人は縁側に行ってしまう。 「家族三人が揃うことなんて珍しいじゃない。たまには、のんびりしましょ。」 微笑まれると反論は出来ず、大人しくサクラの隣に座った。 「今日だけだからな…」 「うん、三人は今日だけね」 「?」 「二人目、できちゃった!」 「なっ…!?」 「おやすみなさーい!」 「おいサクラ!どういう意味だ!」 素敵な夢をあなたと。 (きっとそれは永遠に続くの) |