「サスケくん」
「なんだ」
「なんで、ケーキ?」
「お前好きだろ」
「ま、まぁ」

そうだけれど。
普段ならケーキの"ケ"の字も発しないサスケくんが買ってきてくれたのは、私が食べるのに丁度いい大きさのケーキ。イチゴがつやつやしていて美味しそう。

「そういえば、今日帰ってくるの早かったね」
「急いで終わらせてきた」

はて。サスケくんがそんなに急いで仕事を終わらせてまでしたいことって何だろう。プレゼンの準備?企画書のまとめ?

「何悩んでる」
「サスケくん」
「何だ」

「後ろめたいことでもあるの?」
「はぁ!?」

わ、怒っちゃった?
だって分からないんだもの。不倫してる時とか、男は優しくなるってテレビで言ってたし。
はぁ、やっぱり不倫なのかなぁ。そりゃそうよね、私より綺麗な人なんていくらでも―…

「サクラ」
「あ、はい。」
「俺が何と言っても、笑うなよ」
「笑わないよ。すべて受け止めて見せる」

そう告げるとサスケくんは、頭を掻きながら向かい側の席に座った。

「ウスラトンカチと、山中に言われたんだ」
「何を?」
「今日は、11月22日だからって」

今日?今日って何かあったっけ。お互いの誕生日でもないし、結婚記念日でもない。
いつまでも意図が読み取れない私に呆れたのか、サスケくんはため息をつきながら話し出した。

「…今日は、いい夫婦の日なんだと」
「…あ」
「だから、日頃の感謝を形にしろって言われたんだ」

これ、と渡されたのは、小さなラッピングをされた箱。
開けろと顎で催促され、丁寧にラッピングをほどき、蓋をあけると、指輪が入っていた。

「…サスケくん、これ」
「俺からの感謝の気持ちだ」
「でもこんなに高いもの受け取れないよ!」
「いいんだよ。俺が、お前に贈りたいんだ」

目頭が熱くなるのを感じた。サスケくんが涙で霞む。

「これからも、よろしくな」
「こちらこそ…っ」



私たちなりのいい夫婦

(で、サクラ、俺には?)
(そんな!急に言われても…)
(じゃ、遠慮なくもらう)
(だから何にも用意してな…きゃっ!)




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