空には満月。空気は澄み、満月がとても綺麗に見えた。その光で地上は照らされていた。
その中を動く影が一つ。木の葉の里の里境ギリギリの場所に位置する大木の枝で動きが止まる。そこに腰かけると、静かに目を閉じた。
暫くすると、もう一つの影がそこに辿り着く。

「サクラ」

静かに名を呼んだのは、後に到着した影。声は落ち着いていて、どこか優しい。

「サスケくん」

それに応えるよう、閉ざしていた瞼を上げ、名を呼んだ。その声は柔らかく、懐かしむようだった。

「久しぶりだね」
「あぁ」

青年は少女の隣に腰かけると、満月を見上げた。少女もそれに倣い、見上げた。

「…次は、いつ会えるかな」
「…さぁな」
「私…もう離れたくない」
「…それは出来ない」

少女の声が涙で震え、青年は静かに答えた。何かに耐えるように、拳を強く握り締めた。

「俺にはやるべき事がある。それを達成するまでは、…一緒にいれない」
「そんな…!里に戻ろうよ!…復讐なんて、幸せになれないよ…」

少女はすがるように青年の服を掴む。涙に邪魔され語尾は消え失せ、青年の胸に体を寄せた。青年は少女を優しく抱きしめると、耳元で囁く。

「お前に俺の幸せは分からない。…ただ、」
「…?」

「全てを成し終えたとき、またこうして、お前に側にいてほしい」

それは心からの願いなのか、少女を抱きしめる腕に力がこもる。

「絶対…連れ戻してあげるんだから…!」
「あぁ」
「絶対…離れてあげないんだから…!」
「…楽しみにしてる」

青年は少女を拘束していた腕を解くと、静かに唇を重ねた。離れたかと思うと、またすぐに唇を重ねた。まるで、別れを惜しむかのように。

「また…満月の夜に、此処に来る」
「もう行っちゃうの…?」
「あまり長居をすると、リスクが上がる」
「そっか…。また満月の夜にね」
「またな」

最後に口づけを交わすと、青年はその場を離れた。それは一瞬で、瞼を上げた少女が見たのは、風が舞って葉が揺れる様子だった。




(さっき会ったばかりだというのに、こう思ってしまうのは何故?)



20100208



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