日本だというのに、人々は西洋の文化に浮かれている。
まぁ、今年は俺にはあまり関係のないこと。正確に言うなら、俺たちには。
あいつは塾、俺はバイト。受験が近いからとあいつは塾に通い詰めだし、俺は大学の授業料とかの為にバイト三昧。
去年より確実に二人で過ごす時間は減っていた。

「おーいうちはー。先あがっていいぞー」
「うーっす」

バイトが終わり、携帯を開く。新着メール、なし。着信、なし。
そうだよな。あいつだって頑張ってんだ。

(…会いてぇ)

冬休みに入ってから会っていない。といっても、冬休みは二日前からなのだが。

(…相当依存してんな)

身支度を済ますと、俺は更衣室を出た。




(バイト終わったかな?)

休憩、休憩だからと自分に言い聞かせ、携帯を開いた。電話も、メールもなし。

「はー…」
「どうした春野。どっかつまずいたか?」
「あ、いえ。違います」

私ってわがままだと思う。サスケくんと付き合っているだけで奇跡なのに、その上クリスマスを一緒に過ごしたいだなんて。
メールとか、サスケくんからしてくれるかな、とか期待して。

(あーもう集中できん!)

プリントに記された織田信長も明智光秀も、もうどうでもいい。勝手に争っとけ!
私は荷物をまとめると、塾長に一言告げて塾を出た。
外は雪がちらついていた。幸い、地面は凍っていない。

(…会いたいな)
「サクラ?」

聞こえた声に、顔を上げた。今、確かに―。

「お前、塾は?」
「…サスケくん」

振り返れば、愛しの人。

「…奇跡だ」
「は?」

サスケくんの眉間に皺が寄る。それでも、かっこいいと思う私は、きっとあなたに依存してる。

「サスケくん、バイトは?」
「とっくに終わった。お前、塾は」
「あ、集中出来ないから早めに切り上げた」
「そか」

集中出来なかったのは、あなたのせい。そう言ったら、あなたはどんな顔をするのだろう。

「そういえば」
「ん?」
「奇跡って」
「あ。…言ったら、絶対馬鹿にされるから言わない」
「しねぇよ」
「ほんとに?」
「あぁ」

言うか否か、少し迷ったが、言うことにした。あなたが、どんな顔をするのか見たくて。

「サスケくんに会いたいなって思ったら、サスケくんが声かけてくれたの。これってすごい奇跡だよ!」

サスケくんは無反応。
言うんじゃなかったと後悔していると、サスケくんから指を絡めてきた。

「…俺も」
「え?」
「会いたいって思ったら、目の前にお前がいた」

サスケくんの言ったことは、きっと本当。繋ぐ手が少し強くなったから。

「クリスマス、一緒に過ごせて嬉しいよ」
「俺も」
「来年は、ゆっくり過ごそうね」
「ん」

ケーキもツリーもないけれど、あなたがいれば、それだけでいい。





(それから、君に乾杯)




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