無事に家までたどり着くと、サクラがコーヒーを出してくれた。普段なら美味そうに香るコーヒーが、今は気に触って仕方がない。サクラがどうしたのかと聞いてきたが、答えられない。というより、答えるのが恥ずかしい。

「飲まないの?」
「いや、その…」
「あ!もしかして!」

サクラはそう言うと、キッチンへと姿を消した。何をしているのか不思議に思ったが、カチャカチャと音がするので何かを準備しているということは分かった。程無くしてサクラは両手に何かを持ってきて、俺の正面に座った。

「砂糖とミルク、いる?」
「!」
「多分薬の影響だと思うのよね。味覚にも影響したのね。興味深いデータだわ」

砂糖とミルクを机の上に置くと、巻物を取りだし何かを記していく。何を書いているのかと覗き込むと、若返り薬について書き込んでいた。それが気に食わなくて、サクラの手を取る。手のひらが小さくなっているため、片手じゃいつものようにいかず、両手で制する。

「サスケくん?」
「書くの、やめろ」
「え?」
「…書くの、やめろ」

俺はそう言うことしかできなくて、情けなくなった。その意を汲み取ってくれたのか、サクラは静かにペンを置くと、俺を抱き締めた。

「うん、やめる。ごめんね」
「別に…」

すると、急に頭痛に襲われる。頭を押さえ耐えていると、熱を持ったように熱くなる。

「サ、サスケくん?!」
「痛っ…!」

視界が歪んだかと思うと、一瞬にして頭痛や熱は引く。状況を把握しようと自分の手を見ると、元の18歳の俺のものに戻っていた。家に帰ってきた際に着替えた服が体に張り付き、気持ち悪いことこの上なかった。

「サスケくん!元に戻ったのね!よかったー。あはは、なんか今の格好、サイみたいだねー」

笑われたことと、サイという単語。その二つに俺の中の何かが切れる。とりあえずまとわりついて気持ち悪いTシャツを脱いだ。

「え、なんで脱ぐの?」
「なぁ、サクラ。俺に何を言われても怖くないんだったよな?」

そう、俺を抱き上げながらサクラが言った言葉。俺は忘れてはいなかった。そして今、仕返しを試みている。

「確かに怖くないって言ったけど、それはあの可愛い姿だったからで…」
「誰が可愛いって?誰が?」

俺の中のあるスイッチが完全に入ったようで、サクラとの距離を詰めていく。サクラが後ずさるので、倍の早さで間合いを詰めて、今度は俺がサクラを抱き上げた。

「やだ!」
「何がだ?何が嫌なんだ?」
「だって、これから…」
「これから何だ?はっきり言わないと分からないな」
「っ!馬鹿ー!」

サクラが叫んだが、俺は気にすることなく寝室へと向かった。





20100211



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