「おや…?」


散歩途中の道すがら

目に入った白い花

あぁ、もう…そんな季節なのか、と

思わず、手を伸ばす




=== regaletto ===





「で、あるからして…〜〜」

「……ふ、ぁ〜ぁ」


眠気の襲う、午後の授業

しかも、数学ときた

寝ていないやつが居るのかすら怪しく、教師の淡々とした声だけが教室に響き渡る

教科書を立てて、教師から見えないように欠伸をした綱吉は、そのまま落ちてくる瞼を拒むことなく居眠りに入った

遠くに聞こえる教師の声がシャットダウンすると同時に、別の声が聞こえてくる


「おや、随分お早いお出ましですね」

「……………うわぁぁぁぁぁ!」


夢の中へ入ったと思ったら、目の前に現れたナッポー頭

思わず固まって、状況を理解すると同時に上半身を起き上げ大声上げた

しかし、起き上がった途端にその人物の顎と自分の脳天が思い切りぶつかった


「っ痛〜、く…ない…?」

「…ここは夢の中ですから、ね…」


呆れたように顎を抑えているナッポー頭、もとい、六道骸

どうやら、木の幹に寄りかかっていた骸の膝枕でこの夢の世界に現れたらしい綱吉は、この状況がいまいち理解できていないようだ


「な、なんで…?」

「クフフ…君に用があったんですけれど…まさかこんなに早くお眠りになるとは思ってもみませんでしたよ」


苦笑をもらしなが持っていた本を横において立ち上がると、綱吉にむかってを差し出す

こちらも苦笑いを浮かべながらその手をとって立ち上がった

ここは骸の幻想世界

夢と夢とがリンクする、まやかしの世界

この場所に意識が繋がるのは、本当に稀なのだけれど…

骸は、待っていた、という

つまり、ここに繋がるようにまた能力(ちから)を使っているということ


「お前…またそういう疲れること…」

「綱吉くんに逢うためなら、暇つぶし程度の能力くらい使いますよ」

「…そうかよ」


いつでもまっすぐなその言葉にこっちが恥ずかしくなる

本人が気にしていないから厄介だ


「それにしても、まだ学校では?」

「…午後の、数学の、授業中」

「……居眠りですか、まさかその程度の睡眠でここに繋がるとは…僕の能力が上がったのか君が僕の意識に惹かれているのか…」

「ひ、惹かれてるって…」

「まぁ、どちらにせよ…こうしてお逢いできる時が増えるのは、僕としては嬉しい限りなんですけれどね」


クフフ、と独特の笑い方をしながら骸は綱吉の頬を撫でた

頬を染めながら綱吉は唇を尖らせる


「で…なんの用だよ…」

「あぁ、そうでした…これを君に渡そうと思って」

「これ…って、スズ…ラン?」


何処から出してきたのか、骸の手には小さなスズランのブーケ

白い花を、咲かせているそれは、どこにでも咲いているような、普通のスズランだった


「なんで、スズラン…っていうか、お、男が男から花なんかもらっても…」

「クフフ、僕からの気持ちです…受け取っておいてください」

「…ふぅん」


胡散臭そうにスズランのブーケを眺める

けれど、まんざらでもなさそうだ


「あぁでも、間違っても口に入れるようなことはしないでくださいね」

「は?」

「スズランは、どこにでも咲いている花ですけれど…実は毒草なんですよ」

「…なんでそんなんくれるんだよ」

「それは…、と…呼ばれてますよ」

「え」


遠くのほうから、聞き覚えのある声が聞こえる

呼ばれているのが分かる

この声は……


「今呼んでくれている自称右腕にでも、訊いてみるといいんじゃないですか?」

「え、ちょ…」

「それでは…また、」

「ちょ…、!!」




 


「骸!!!」

「10代目!!」

「っ、ご、獄寺くん…」


気づいたらもう目が覚めていて、綱吉の机の周りには獄寺と山本が居た

いきなり幻想世界へ連れて行かれたかと思ったた、今度は現実世界へと送りかえられて…

未だに状況が把握できていない

今のは、夢なのだけれど…


「…なかなか目覚められないので…心配しました」

「え!も、もう授業終わっちゃった…?」

「もう放課後だぜー」

「山本…」

「ところで…今、骸…って」

「あ、あー…うん、ちょっと夢に出てきて…アハハ」

「……そうッスか」


骸に対してあまり良い印象を持っていないのは、誰だって同じだろう

それは分かっているので、獄寺の反応に動返して良いのかわからなくなる


「ん?ツナ、それどうしたんだ?」

「それ?」

「その右手に持ってんの…スズランか?」

「え…?」


そういわれて、右手をみると、先ほど骸からもらったスズランのブーケが

幻想世界のもののはずなのに、なぜ


「そういえば、今日って5月1日っスね」

「5月1日って…何あるの?」

「ヨーロッパでは、5月1日に友人や恋人に相手の幸福を願ってスズランを贈る習慣があるんス…」

「……友人や…恋人、に…」


―――僕からの気持ちです…


「…、」

「10代目?どうかしたんスか?」

「な、なんでもないよ!帰ろう!」

「それなら、いいんスけど」

「さっさと帰らないと「またリボーンにどやされるからさーアハハー」


スクールバックにブーケをそっと入れて、しまう

そのまま帰路について、他愛もない話をして分かれた

部屋にかえってきてスクールバックを開けば、やはりそこにあるスズラン


「……たく、こういうことに能力使うなら…」


―――さっさと脱獄して、ここまでこいって話だ


らしくもないことを思って、顔をくしゃっとゆがませる

もう一度、今日中に眠って骸のところまでたどり着こう

そうしたら、自分もスズランを贈ってやろうなんて

やっぱり、らしくもないことを思ってしまったんだ―――





fin...




・・・あとがけ・・・

時間なさすぎてよくわからない話になってしまいましたけれども(^p^)
とりあえずかけてよかったです(ーωー)

ここまでお読みくださりましてありがとうございました!

2010.05.01.
倉紗仁望 拝

regaletto[伊] ちょっとしたプレゼント、小さい贈り物