「むーくーろ〜」

「…綱吉くん…僕の名前は、そんなに間の抜けた名前ではありませんよ」


ピコピコピコ…

ベッドの縁を背もたれに、テレビに向かってコントローラーを駆使しパズルゲームをしている骸は、呼びかけられて呆れたように呟いた

しかし、呼んだ本人はそんなこと気にしていないようで、ベッドの上で仰向けになっている体勢を建て直しうつ伏せに骸の後頭部へ話しかける


「お前さーチョコ好きだよなー?」

「無視ですか…好きですけど、それが何か…」

「はい、アーン」

「!」


目の前に差し出されたのは、四角い形をしたチョコレート





=== Salty Chocolate ===





「…チョコ」


差し出されたチョコレートに、一時静止をすることも忘れてしまう

もちろん、どんどんパズルは積みあがってゲームオーバーになってしまった

そんなことも気にせずに、綱吉の手にあるチョコレートを見つめた


「好きなんだろ?」

「好き、ですけど……」

「じゃ、ほら…アーン」


にっこり笑って、人差し指と親指に挟んだチョコを差し出す

一体何処からそんなものを、と思いながらも…若干散らかっているこの部屋の状況から考え

どこから菓子が出てきてもおかしくは無いとすら思えてしまった

ここは、綱吉の部屋

今日は家中の人間が出かけていて二人きりだ


「…あー」


少し躊躇しながらも、口を開けて綱吉の指からチョコを受け取る

奥歯で咬むと、違和感を覚えた


「…ザリ?」

「ん?」

「綱吉くん…このチョコ、しょっぱいですよ?」


眉間に皺を寄せながらチョコを胃に納める

チョコの中に、小さい粒が混入していた


「あー、だってこれソルティチョコだもん」

「ソル……塩、ですかっ」

「何だよー、今流行ってるだろ?塩キャラメルとか、塩バニラとか…」


ぶぅー、と唇を尖らせて不満そうに言う

しかし骸は、さらに不満そうな顔をする


「チョコはチョコ単品で食べるのが一番です!」

「じゃーアーモンドチョコとか、マカダミアが入ったチョコとか…」

「チョコ単品がいいです」

「…チョコケーキとか、マフィンとかは食べるくせに…」

「それはケーキやマフィンと云った形になっているでしょう?固形チョコは、チョコだけで食べたいんです」

「えーそれってわがままー」

「人の味覚の趣味に文句言わないで下さい」

「そりゃ、そうだろーけど…」

「チョコに異物なんて邪道です!」

「……」


骸のチョコ好きに、少し不満を覚える

好物が、チョコレートとプロフィールにまで書き込むくらい、チョコ好き

恋人としては、嫉妬せざるを得ない


「俺とチョコだったら、どっちが好き?」

「は…ぃ?何言って…」

「骸は、チョコと俺と、どっちが好きなんだって聞いてるの」

「……、そ…んなの…」

「そんなの?」

「く、比べるものが…違うでしょう…!」

「違くないし…骸の好きなもので、一番は何なの?」


意地悪な表情をしながら聞く

骸は頬を染めて、焦っている様子だ

困ったように、俯いてしまった骸を見て、楽しそうに笑う


「骸ー?」

「…そんなの、比べられるわけ、無いじゃないですか…」

「なにそれ、俺ってチョコと同じなの?」

「…僕は、チョコが好物です」

「知ってる」


さっきから、その事を話しているのだから

今更そんなことを言われても…と、綱吉は首を傾げた

骸は俯いたまま話を続ける


「それは、食の趣味として好きなのであって……綱吉くんと比べるのは、おかしいんですよ」

「なにがおかしいの?」

「僕にとって綱吉くんは、一番大切な存在ですよ?」

「うん、それも知ってる」


さも、当然…といわんばかりに自信満々に言う綱吉に、苦笑を漏らす、


「僕は、綱吉くんがいなければ…ここに留まる理由なんてないんです」

「…」

「綱吉くんがいるから、生きてるんです…綱吉くんのいない世界でなんて、生きて居たくないんです」

「…骸?」


ゆっくりと、顔を上げる

でも、視線は逸らされたままで、頬が紅潮しているのが見て取れた


「食べる、という行為は…生きる為に必要なことでしょう」

「そう…だけど…」

「ですから、綱吉くんと共に生きる為に…僕は食を摂るんです」

「…あー…もー…お前ってホント、まどろっこしいな」

「な、なんですか!その言い草は!」


ぐでーっと、ベッドの外に腕を投げ出して突っ伏す

空を彷徨っていた手が骸を捕らえて引き寄せる

突っ伏したまま、綱吉が呟いた


「つまり、俺のことが一番ってことだろ?」

「…なんとでもとってください」

「うん、じゃーそうする」

「まったく…」


呆れたように息を吐き、綱吉の頭に左腕を回して髪を撫ぜる

やわらかいそれが、骸のお気に入りの一つでもあることを綱吉は知らない


「骸」

「はい?」

「愛してる」

「…、またそういう…恥ずかしいことを…」

「骸は?」

「……愛、してます、よっ…綱吉くん」


照れたように、言葉を詰まらせながら言う

それが無性に可愛くて、破顔する

自分の頬を、骸のそれに摺り寄せて、笑った


「じゃー、残りのチョコ…食べるよな?」

「え…」

「俺の為に、食べて、生きてるんだろ?」

「綱吉く…」

「食べさせてやるから、ちゃんと全部食べろよな?」

「――…、はい…


黒い笑みで言われて、NOとは言えなかった

半泣きになりながらも、骸はチョコを完食したという…




Fin...?








・・・あとがけ・・・


ツナ骸…でした
いや、仕事の休憩中に同期の方がソルティチョコなるチョコを下さりまして…
骸さんって、こういうチョコは邪道だーとか言ってそうですよねっていう話になって…
思わず…^^
綱吉じゃなくても良かったかも
ディーノでも良かった…か?
でも、黒ツナ書けたから満足!←
もう少し黒くしたかったな…
スレツナ大好きなんですスミマセン

では、ここまで読んでくださってありがとうございました!

2009.4.8.
倉紗仁望 拝