「なぁなぁ、今度は何する?」

「……」

「おーい」

「……あなたは、本当に…毎日のようにここに来ますが、仕事はどうしたんですか」


人が本を読んでいるというのに、話しかけてくるのはキャバッローネファミリー10代目ボス、跳ね馬ディーノ

週に2、3度の頻度で顔を出すこの男は自称、僕の恋人…


「ちゃんとやってるって!」

「…まぁ、最近ボンゴレの勢力拡大に伴って、マフィア界も平穏ですからお暇なのはわかりますが」

「暇でもないさ、俺だってボンゴレの同盟なんだからな」

「…だったら、こんなところに来ていないで仕事をしたらどうですか…
第三勢力のボスっていう自覚、あります?」

「あるに決まってるだろ、良いんだよ…お前のとこに来るのは俺の大切な時間なんだから」

「……、」

「あ、照れた?」

「う、うるさいですよ」


どうかしてる

こんな男が来るのが、待ち遠しいと思う日があるなんて

いつでも、好きなものを用意しておく

本当に、どうしたと言うのだろう

絆されている


「…もうそろそろ行かないと、部下が心配しますよ」

「大丈夫だって、骸んとこに来てるのはみんな知ってんだからよ」

「……僕が、軟禁されているという事実をあなたは理解していないでしょう」

「そんなのどうだって良いだろ?実際骸は何もしてこないし」

「時期を待っている、と言ったら…?」

「それでも、俺はお前を信じてるからな」

「―――……、っ」


イライラする


大きな音を立てて、テーブルの上にあったカップが割れる

中にあったコーヒーがクロスに、絨毯に、滲みを作った

無意識に、右目が力を発したのだろう


「あー…ぶね、大丈夫か?!怪我してねぇか?」

「……あなたは、どこまでお人好しなんですか…」

「なんだよ、怪我してた大変だろ?」

「そうじゃない…!」


いきり立って、大声を上げてしまった

驚いた様子の彼に、僕は渋面を作って言う


「この力の所為で、カップが割れたんです…それくらいわかるでしょう…」

「だからって、お前の意思じゃないだろう?」

「どうしてそんなことが言えるんですか、僕の力だ、僕が思って行動したと考えるでしょう」

「でも、カップが割れた時、俺なんかよりお前の方が驚いてた」

「―――…」

「自分でやったんなら、驚くわけ無いだろ?」

「それも、演技だとしたら…」

「いい加減にしろよ、骸」

「っ…」


突然、声のトーンが変わる

怒っているような、そんな…


「そんな顔して、そんなこと言うなよ」

「そんな、顔?」

「今にも泣きそうな面して、どうして人を突放そうとすんだよ」


泣きそうな…?

僕が?

いつ…


「俺に、お前をそんな顔させるようなこと、させないでくれよ…」

「―――、」


思わず、頬が熱くなるのを感じた

どうしたというんだ、本当に

なんだっていうんだ、この男はいつもいつもいつも


「誰の所為だと、思ってるんですか」

「骸…?」

「誰の所為で、僕がこんな思いをしてると思ってるんですか」

「…俺の、所為だな…悪い」

「―――っ、違…」

「?」


思わず出た否定の言葉に、僕も、跳ね馬も驚く

口元を抑えて、視線をそらした

何を、言おうとしていたのだろう…

こんなこと言ったら、また調子に乗るに決まってるのに


「骸…?」


あぁもう、そんな顔しないで下さいよ

素直になるのは得意じゃないって云うのに...


「―――あなたが、悪い訳じゃない…悪いのは…」


僕の方だ

 




「ディーノさん、今日はやけに遅いなぁ…」

「大方あの変態パイナップルとまたもめてるんじゃないの」

「アッハハ、そうかも知れませんね」

「いい加減素直になればいいのに」

「ホントですよね!今日だってせっかくの誕生日なんですし」

「……誕生日、ねぇ」


そんなこと、きっと骸は気付いていないんじゃないかな




  





「僕が、悪い…んですよ」

「骸…」

「最初は、いつもヘラヘラと僕の所にやってきて、何をするでもなく世間話して帰っていくあなたが鬱陶しいと思って

た時期もありましたが」

「(あったのかよ…)」

「最近では、あなたが来るのを…待ってる、自分がいて…」

「―――…」

「なんなんですか、本当に…僕の中で、あなたがどんどん大きくなっていくんですよ!」


自棄になって、吐き捨てて、身構えたのに…

なのに、なぜ何も言わないんですか

調子が狂う

ここで名前を叫びながら抱きついてくるのを予想したんですが…


「……跳ね馬?」

「ぅ…あー…その、なんだ」

「何ですか」

「骸があまりにも可愛いこというから本来の目的を思い出した」

「は?」

「いや、いつ言おうか迷ってて…」


なにやらごそごそし始めた跳ね馬に怪訝な表情をする

いったいなんだ

いやいやその前に僕の科白に対する返事は何処へいったんだ


「骸」

「!!」


悶々と考えていたら名前を呼ばれて驚いてしまった

僕としたことが…


「Buon comlpeanno!骸w」

「……は」


いきなりどこから出したのか知りませんが、深紅の薔薇の花束を差し出してきた跳ね馬

それにしても…誕生日?

今日は…


「お前、今日が何月何日か知らないのか?」

「………」

「やっぱり…せっかくツナがカレンダー置いてくれたのに」

「誕生日…僕の?」

「そう、今日は6月9日…お前の誕生日だろ?」


カレンダーなんて、気にしていなかった

勝手においていった沢田綱吉には悪いですが、この空間にいての時間の経過などあまり意味が無い

外界と隔離されたこの空間での時など、合ってないようなもの

唯一ある時計とカレンダーもあまり意味を成していない

眠くなったら眠るし、お腹が空いたら食べる

よく考えたら引篭り生活そのものですね


「ほら」

「……」


薔薇の花束を受け取って、腕の中に収める

棘をそがれた深紅の薔薇

跳ね馬の無駄な優しさだろう

薔薇には棘があるのが普通だというのに…


「誕生日、おめでと」

「……あ、りがとう…ございます」


どうしてだ

どうやっても逃れられない

この男の甘い罠

嵌っていくのは、僕の意思なのだろうか


「どちらにせよ…」

「ん?」

「いえ……それで、さっきの僕の告白に対しての返事は?」

「!」


きっと今僕は、意地悪気に笑っているのでしょう

もう、ツンデレも疲れましたし

答えなんて、聞いたところで知っているのですけれど…


「Ti amo!」


ほら


そうやってあなたは僕を離さない…――――



fin...







≫あとがけ

あー…
骸さん、誕生日おめでとうございましたorz
もう6月11日です
11日になって5分経過しました
ゔお゙ぉい…orz
間に合わなくてごめんよ
そしてグダグダでごめんよ

ここまで読んでくださりありがとうございます!

おまけでヒバツナ⇒

 





「あ、なんか今日はもうディーノさん帰ってこないような気がします」

「ワオ、偶然だね、僕も今しがたそう思ったところだよ」

「わぁ、以心伝心ですね!」

「そうだね、あの種馬が帰ってこないならもう僕たちはフリーってことだよね」

「あっちはあっちで楽しんでいるだろうし、俺たちも俺たちで楽しみましょうw」

「誘ってる?」

「もちろん」