「喜べ骸!今から俺ん家行くぞっ!」

「はぁ?!」

「荷物は、別に良いか、必要なもんは俺ん家にもあるしな!」

「ちょ、一体…っ」

「よっしゃ行くぞぉー」

「説明しなさいこの馬鹿馬ーーー!!!」







=== すき ===








ボンゴレ本部アジトにある一室

生活に必要なものは全てそろった部屋

六道骸が、軟禁されている場所


「……」


骸は任務以外でこの部屋から出ることを許されていない

窓も小さく、人が通り抜けられるスペースはない

任務のないときは日がな一日本を読んで過ごしている

しかしこの部屋に訪問者がいないわけではない

いろいろと厄介な敵に追われているとき、綱吉が部屋に隠れにきたりする

他の守護者も同様だ

守護者以上のものでなければここの出入りは禁じられている

例外は、骸の部下である城島犬と柿本千種

そして、この男


「跳ね馬、いい加減沢田綱吉の甘さに甘えるのもどうかと思いますよ」

「いいじゃねぇか、許してくれてんだからさ」


跳ね馬ディーノ

キャバッローネファミリー10代目ボスである彼は何かにつけて骸に逢いに来る

自称、恋人


「だいたい、あなたは行動が唐突過ぎるんです」

「んー?」

「僕にだって、用事があるんですよ」

「軟禁されてんのに?」

「……軽く傷心が痛む言葉を吐きますね」

「ゔ…悪ぃ」


ディーノの運転する車の中

助手席でいつ事故をおこすかとはらはらしながら骸はシートベルトを握り締めていた

そこまで信用無いのかと少ししょぼくれる


「クフフ、まぁ…こういうのも楽しくて良いかもしれませんけれど」

「骸…」

「あなたはいいから前だけ気にしていてください、あなたと心中なんて真っ平御免被ります」

「りょーかい。」


部下がいないと何も出来ないディーノでも、隣に骸がいるとそれがなくなるから驚きだ

何事もなく、二人は無事にティーノの家、キャバッローネのアジトに辿り着いた








「おかえりぃ、ボス」

「おーロマーリオ、車頼むわ」

「へいへい、ゆっくりしていきなよ」

「どーも」


ロマーリオは骸のことをどう思っているのだろうか

見た目からでは、なんとも言いがたい

哀れんでいるようにも、嫌っているようにも、好いているようにも思えない

おそらく“ボスの恋人”という認識でしかないのだろう

お互いに、感情など無いのだろう


「ほら骸、こっちこっち」

「……」


ただ、この男を除いては…



 

   


「それで、何故今日?」

「んー…あ、骸!セツブンって知ってるか?」

「馬鹿にしてるんですか、日本の風習でしょう」

「そうそれ!!ツナに聞いたんだけどよ、今日らしいからやらね?」

「は?」

「豆も分けてもらったんだぜー」


そういってごそごそとポケットから袋を取り出した

もちろん、中に入っていたのは豆


「ちょ、まさかそんなことをするために僕を連れ出したなんてことはないでしょうね」

「んー…違う、といえば違うけど…」

「けど?」

「骸と一緒に豆まきしたかったのは事実だな」


にかっと笑って言うディーノに呆れてしまうのはいつものこと

そして、流されてしまうのも、いつものこと

わかっているのに、どうしても流されてしまうのだ


「やろうぜ!骸」

「………仕方ないです、ねっ!!」

「うおぉぉ!?」

「豆まきというからには、鬼役が必要でしょう」

「だからって人に向けて投げるな!痛い!!痛い痛い!」


すべての恨み辛みをこめたように豆をディーノにぶつける

するといきなり骸が豆を投げるのをやめた


「骸?」

「豆が勿体無いですね、日本人は裕福だと云いますがこれは勿体無い。
“勿体無いお化け”が出ちゃいますよ

「……?」

「あなたまさか!もったいないおばけを知らないんですか?!」

「……」


コクリ、と頷くディーノに骸は呆れたように拳を震わせ口を開いた


「勿体無い勿体無いと、世の中さまざまなものが勿体無く消費されていくでしょう!
そういう人のところへ勿体無いお化けがやってきて説教した挙句魂を奪っていくそうですよ!」

「………………骸って、可愛いよなー」

「何を言っているんですかあなたは、気持ち悪いこといわないでください。ちょ、触るな!


骸の頭を腕の中に収めて頬を摺り寄せる

抵抗するも、無駄に力の強いディーノの腕から逃れられない

もっとも、本気で抵抗しているようにも見えないのだが…


「……ちょっと、いつまでそうしてる気ですか、動けません」

「んーもうちょっと…久しぶりだしぃ」


骸が外に出ることを許されているのは本当にほんの少しだけだ

今回のような異例の外出は本来ならば許されない

なのに、何故今回は許されたのか

いくら綱吉が甘いからといって泊まりで外出など…

  



「……いったい、どういうことなんですか」

「いーじゃん、骸は気にしないで良いからさ、明日になるまで一緒にいてくれれば満足だから」

「は?明日……?」

「ん。俺の誕生日」

「……………………………………はぁ?!」

「あー、やっぱり知らなかったかぁ」

「ちょ、何…言ってくだされば何か……、っ」

「何か、なんだ?」


きょとんとした表情でディーノが首を傾げる

骸は慌てて自分の口をふさぎ、ディーノに背を向けた


―――な、なにを考えているのでしょうか僕は…っ!!

こんな種馬の為に何か用意できただろうに、なんて、馬鹿じゃないですか

なんで、こんな……


「ありえない…」

「骸…?」

「あなたは、一体僕に何をしたんですか」

「は?何って…何も…」

「だったらなんで…っなんでこんなに……」

「?」


わけが分からないのかディーノが困ったような表情

骸は俯いたままで、言葉を捜すように


「こんな、に……あなたが、愛しいんですか!!」

「―――…、っ?!///」


唐突な告白

今まで聞いたことも無いような言葉

何故、今


「なんなんですかこの感情は、鬱陶しい…誕生日なんて、知らなかった自分に、腹が立つ…っ」

「ちょ、骸さーん?どうしたんだよいきなりそんな…」

「大体!誕生日なら誕生日と早く言ったらどうなんですか!そしたらプレゼントでもなんでも用意しておいたのに…」

「…………………………………あれ、可笑しいなぁ俺まだ寝てるのかな、うんそうだ、これは夢だ、夢」

「ちょっと」

「そうじゃなきゃ骸が見せてる幻覚か何かか…だって、あの、骸が、こんなこと言う訳ないもんなーアッハッハ」


現実逃避し始めたディーノがもぞもぞと自分のベッドに潜り始める

どうやら自分はまだ寝ていると思っているらしい

それに骸が切れた


「いい加減にしないさいよ種馬、これが夢だとでも言うんですか、僕が今力を使うことを禁じられてるの知っているでしょう」

「いて、痛ぇ!痛い痛い!!髪をひっぱるな!ハゲる!」

「痛いなら夢じゃないでしょう、何を考えてるんですか」

「だだだだだってよ!骸なんかおかしくね?!」

「僕は至って正常です」


眉間に皺を寄せ、腕を組み仁王立ちの骸

ディーノはベッドの上で正座をすると骸をじぃーっと見つめる

見られているのが分かると眉間の皺がよりいっそう濃くなった


「なんですか」

「……お前、骸だよな?」

「何を今更」

「……今までよ、俺が何度も好きだって言ったって、なんも返してくれなかったのに…」

「………あぁ、コレが、好きという感情なんですね」

「は…」

「僕は、愛情というものとは程遠いところで生きてきましたからね…“好き”というのがどういうものなのかよく分からなかったんです」

「…骸」

「なんですか」

「やっぱお前可愛いなぁ」


へにゃぁっと破顔する、いつものゆるい笑顔

あぁ、なるほど、と骸は思った


――この表情を見たときの思いは、“好き”だという想いだったんですね


頬の熱が上昇するこの現象

どうしてこうなるのか分からなかった

好きだから、この表情が、大好きだと思うから…


「…仕方が無いですね、プレゼント、何も用意してませんけど、明日まで一緒にいて差し上げましょう」

「プレゼントなんていらねぇよ、骸が俺のそばにいてくれるだけで嬉しいし」

「……よくもまぁそう恥ずかしい科白が言えますねぇ?」

「お前も十分恥ずかしいこと言ってると思うけど…」

「なにがですか?」

「……」


あれ、骸って実は世間知らず?

っていうかなんか天然?

あれ、こんなやつだったっけ…?

いつも不敵に笑って、他人を蔑んで…

んん?


「…なんかホント…ツナに逢ってから骸って円くなったな」

「何か言いましたか?」

「なんも」


首を傾げる骸を抱き寄せて満面の笑み

抱き締められた骸は、訳が分からないとでも言いたそうな表情をしてから、少し幸せそうな表情をした後、目を閉じた

好きだと思う

この人が、どうしようもなく……


「ありがとうございます、ディーノ」


この感情を手に入れられたことが、何よりも嬉しい




fin______.
 






≫あとがけぇぇ!!

あれれ?!誕生日ほとんど関係なくね?!
だって事実この人たちの時間軸まだ2月3日……orz
しかも誕生日二週間も過ぎてる
もう、どうにでもなれ
骸さんってこんな人だったっけ
自分受け子書くと徹底的に受けになる
何故だ
もうどうにでもなれぃ
うちのD骸はこんなかんじで、どうでしょうか

ここまでお読みいただきありがとう御座いました!!

2008.2.17
 倉紗仁望