「こんなところにいたのか…骸」

「…これはこれは、キャバッローネの10代目がどうしてこんなところへ?」

「お前がここにいるって聞いてよ、いてもたってもいられずにな」


雨の中、佇むのは六道骸

傘を差し近づいてくるのは『跳ね馬』ディーノ


「くふ、あなたもそうとうの物好きですね」

「悪かったな」


言って、傘を差し出す

一瞬で濡鼠になるディーノをみて骸は目を見張る


「いつまでこんなとこにいる気なんだ」


土砂降りの雨の中、傘を持っているのに二人はぐっしょりと濡れている

もう傘なんて必要ないのではないかと思うほど…

自嘲気味に骸が笑う


「いつもで…と言われましても、僕は生きる意味を失ってしまいましたから…」


後ろを振り返る

そこには真新しい墓

小さく墓石に刻まれた名前は―――


「まさか、彼がこんなにも早く逝ってしまうなんて…誰が予想したでしょうか…」


『Kyoya Hibari』

抗争中、撃たれそうになった骸をかばって撃たれた

ボンゴレは雲の守護者を失って不安定となりつつある


「―――…いつ、誰が、どんな理由で死ぬのかなんて…この世界じゃ誰にもわからねぇよ」

「くふふ…そうですね、それを覚悟の上この世界に身をおいたのですから」


何が起きるかわからない

今まで当然のように隣にいたものが、いなくなってしまうことだってある

それがこんなにも…悲しいことだったなんて―――


「僕は、どうしたらいいのでしょう…」

「骸…」

「僕にとって、恭弥がすべてでした…恭弥も同じ気持ちだと信じています…
人との接し方に不器用で、どうすれば相手に想いが伝わるのか一生懸命で…
そんな恭弥を見てるのが幸せで...それなのに」


今、思い出せるのは血の海の中冷たくなっていく愛しい者の姿

 





『どうして、僕なんか…っ』

『君に死なれたら、困るんだよ』

『そんなの!僕だって同じです!!』

『は…ねぇ骸…』


震える手を一生懸命骸に伸ばす

その手をしっかりと握って骸は涙を流した


『僕は君を…きちんと、愛せてた?』


泣きそうな笑顔でそう呟く

その微笑がとても綺麗だと思ってしまう


『そんなの…そんなの!当たり前じゃないですか…っ』

『そ…、か』

『―――恭弥!』

『ありがとう、ごめんね、愛してるよ―――骸』


綺麗に微笑んで、骸の腕の中…恭弥は死んでいった

救援が到着したときにはそこに敵は一人も生きてはいなかった

死体の中心には全身返り血に染まった霧の守護者の姿

そしてぴくりとも動かない、雲の守護者の亡骸

  



「…骸」


―――お前の目には、恭弥しか映ってないのか?


―――この先ずっと、恭弥の残像だけを見つめて…生きていくっていうのか?


―――そんなの、オレは…


「ねぇ跳ね馬」

「……?」

「このまま、僕も恭弥と同じところへ逝けたら…幸せになれるでしょうか」

「―――っ!!」


それはつまり


「六道輪廻を巡り続けた僕が恭弥の元へたどり着けるでしょうか」

「…死ぬって、いうのか?」


傘を手放して、骸に一歩近づく


「……恭弥のいないこの世界には、いたって仕方がありませんから」

「オレは、そんなの許さない」

「?」


強引に肩を掴んで、こちらへ向かせる

それに多少驚いたような表情をみせる骸に、ディーノは泣きそうな表情


「オレじゃ…ダメなのかよ…っ」

「―――・・・」

「オレじゃぁ恭弥の代わりになれねぇのかよ…」


こんなにも、お前のことが好きなのに


「なにを…言って」

「オレは、ずっと…お前のことが好きなんだよっ」

「―――――…っ」


突然の、告白

しかし、恭弥の代わりになんて…


「…彼方は、優しすぎるんですよ」

「え…?」

「恭弥の代わりなんて、この世に誰一人と存在しません」


確かな拒絶

代わりなんてこの世にあってはならない


それでも


「…大切な人にいなくなられるのは、とても悲しいことです」

「骸…?」

「ですが…恭弥が救ってくれたこの命、無駄にすることなく生きてやりますよ」


それこそ、恭弥の分までも―――


「それに…」

「それに?」

「愛しいものに死なれる悲しみを、僕は知っていますからね」

「ぁ……」


骸が死んでしまったら、ディーノが今度は悲しむのだろう

優しくて一途なこの男はきっと、生きる気力すらなくすのだろう

今の、自分のように

そんな人間をこれ以上増やしてはならない


「生きて生きて生き抜いて…いつか恭弥がこの世に生まれ変わってくるまでこの人間界にしがみついてやりますよ」


ディーノの横をすりぬけて、放り出された傘を拾う

それをディーノに差し出して、一言


「帰りましょうか」

「―――おぅ」


ディーノを変わりにする気はない

恭弥を忘れる気もない

ただこの命朽ち果てるまで…






君を、想う





...fin










あとがき

やっちまった…っ!!
D→骸×雲
じんぼうディノ骸も好きです(爆
すみませんすみません
反省なら猿にも出来る!!
あぁもう極限にすみません
マイナーですみません、えぇホント
そして意味わかんなくてすみません;;;
ここまで読んでくださってありがとうございました!!




≫おまけ




  






ボンゴレのアジトにたどり着いてふと疑問


「でも、どうして僕があそこにいると?」

「ツナが教えてくれたんだ、骸が恭弥の葬儀の日からずっとあそこにいるからって」


それは、つまり…


「綱吉くんは、彼方が僕のことを好きだと知っていたんですか」

「うすうすだけど、気付いてたんだろうなぁ」

「……いいですか跳ね馬」

「ん?」

「僕の心は恭弥の者です、僕たちの間に彼方が介入する隙は1μたりともありませんからね」


言って、ずんずん歩いていってしまう

濡鼠になった骸をみて下っ端たちが慌ててタオルやら何やらをかき集めてくる

それをみて思わずディーノは苦笑を漏らす


「それでもお前は、ここにいてくれるんだろ?」









この、世界に――――…










「―――Grazie...Dino」










ここまで読んでくださりありがとうございました!

もともと「×ヒバ」においてありましたが今回復活部屋作ったのでこっちに…
ヒバリさんでてきて無いじゃん!みたいなノリなので…;;
2008.2.17.
 倉紗仁望