「おかえり、ランボ」

「…た、ただいま、戻りました」


帰ってきたら、目の前に愛しい愛しい恋人様がいらっしゃった




=== May I kiss you? ===





「ボンゴレ〜」

「だからごめんって言ってるだろぉ」


ボンゴレ日本支部、ボス執務室

ボスの机に涙と鼻水とを垂れ流しながらめそめそ泣いている大きな子供

ボンゴレ10代目雷の守護者、ランボ

本来なら、ボヴィーノファミリーに在籍しているはずの少年


「仕方ないだろー…あの人は匣の研究のことになると他のこと考えないでフラフラどこか行っちゃうんだから…」

「分かってますけど…なにもこのタイミングで匣の情報を流さなくても…」

「だ、だからゴメンって…」


執務室にはボンゴレ10代目である沢田綱吉と、ランボの二人きり

本来なら、ここにもう一人いる予定だった

その人はあぁ今いずこ…

もともと人の言うことなんて聞く人ではないけれど

せめて、せめて今日だけはと拝み倒したのに…


「結局、無駄に終わっちゃったんですね」

「悪かったよ…そのかわり、ちゃんと盛大にパーティーは開くから……」

「10代目!」

「え、獄寺くんっ?」


突然、執務室に綱吉の右腕、獄寺隼人が駆け込んできた

何事かとふたりは獄寺を見る


「偵察に行ってた部下からの連絡が入りました」

「本当に?!みんな無事なのっ?」

「それが、結構手強い相手だったみたいで…」


慌しい雰囲気

瞬時に、あぁ今日のパーティーはお流れだな、と判断する

どうしてこうも、自分はタイミングが悪いのだろうとランボは肩を落とした


「ごめんランボ…今日のパーティーは…」

「大丈夫です、偵察ってあの3日間連絡が途絶えてたって言う部隊でしょう?そちらを優先させて下さい」

「本当にごめん!この埋め合わせはするから!!」

「いえ…それより、おれに出来ることはありますか?」


守護者として、出来ること

今はきっと猫の手も借りたい状況だろう

最近平穏だったから、こういうのは本当に久しぶりだ


「じゃぁ、悪いんだけど…頼める?」

「お安い御用です」


そのまま仕事に移る

気付いたときには、もう深夜になろうとしていた……―――





「あー…なんとか落ち着いたね」

「すみません、俺の部下がへまやったばっかりに」

「命に別状は無いんだから、大丈夫だよ」


ミーティングルームで報告会

みんなぐったりと疲れた様子だ


「お疲れ様です、珈琲でも如何ですか?」

「わぁ〜ありがとうランボ〜」

「け、アホ牛にしては気が利くじゃねぇか」

「ごめんね、ランボ…せっかくの誕生日なのに…」

「良いんですよ、毎年祝ってもらってますし」

「毎年祝わなきゃ意味無いじゃん、年に一度しかないのにさ」

「その気持ちだけで充分ですよ」


それに、一番祝ってもらいたい人に祝ってもらわなければ意味がない

ランボはお盆を持ったまま、ミーティングルームを出て行こうとする


「あれ、ランボもう戻る?」

「えぇ、先に休ませていただきます…ボンゴレも獄寺さんも、ゆっくり身体を休めてくださいね」

「うん…ありがと」

「では、お先に失礼します」

「…あ!ランボ!」

「はい?」

「誕生日おめでと!」


祝う祝うといっておいて、肝心の言葉を言っていなかったことに気が付く

そういえば言われていないな、と思いランボは笑顔で返した


「ありがとうございます」


無機質な廊下を、部屋に向かって一人で歩く

部屋の扉に差し掛かったところで、ぼふんっと大きな音と煙が周りを包み込んだ


「また、10年前ですか…」


慣れてしまった感覚と、これまたタイミングの悪い、と一人息を吐く

煙が晴れて、見えたのは真っ暗な道

どうやら、自分はどこかへいこうとしていたようだ

こんな夜遅くに、一人で何処へ……


「あれ、君…」

「!」

「何、また例の何とかバズーカってやつ?」

「……ひ、ばりさん」

「何、人をお化けでも見るような顔して…」


暗い道の向こうから歩いてきたのは

今、逢いたくて…逢いたくて仕方が無い人の10年前の姿

どうしようもない衝動にかられて、涙が溢れてきた


「…何いきなり泣き初めて…まだ何もしてないんだけど」

「俺の前に現れた時点でなにかしてますよぉ」

「はぁ?」

「逢いたかったんですから〜!」


10年後の世界で、今なにが起きてるのかなんてさっぱりな10年前の雲雀恭弥にとってそのセリフはわけの分からない物でしかない

仕方がないな、と息を吐くとランボに近づいていく


「ほら、仮にも僕と同じ年のくせに…子供みたいに泣くな」

「ヒバリさんの方が10も年上ですよぉ」

「それは現実の話でしょ…今は関係ない」


ポケットからハンカチを取り出して、呆れたようにランボの涙を拭ってやる

鼻をすするランボに苦笑を漏らす


「それに、今日って君の誕生日なんでしょ?」

「な…なんでそれを…」

「赤ん坊から聞いてるよ、子供の君が、僕に逢いに行こうとして迷子になってるってね」


なるほど、それでこんな時間に一人で外にいたのか

などと、一人で納得する

10年前のことなんて、よく覚えていない

まったく、子供の頃から何一つ変わらない


「僕には関係ないと思ったけど…僕を探してくれてるなら、僕も探してあげなきゃって思ってね」

「う〜…ありがとうございます…」

「もうそろそろ5分経つんじゃない?戻ったら僕に祝ってもらいなよ」

「でもヒバリさん、今出張に行ってて…」

「ふぅん…でも、期待してみても良いんじゃないかな?」

「え?」

「だから、僕から祝いの言葉は言わないでおくよ」


瞬間、再びぼふんっと音がして、煙に包まれる

目の前にいるのは、子供のランボ


「お!ヒバリ!!」

「お帰り、ランボ…誕生日おめでとう」

「にゃははははー!おれっち!今日から大人になったんだもんね!」

「へぇ…それは頼もしいね」


さて、10年後では今頃…

恭弥は10年後の事を思い浮かべながら、ランボを抱きかかえて沢田家へと足を向けた













煙が晴れて、目を開ければそこは自分の部屋

そうやら子供のランボは、ちゃんと自室にいたようだ

でも、明かりがついてる

子供のランボには、手の届かない場所にスイッチがあるはずなのに……


「やぁ、遅かったね」

「!?」

「おかえり、ランボ」

「…た、ただいま、戻りました」


何事かと思って、目を見開く

だって、ここにいるはずのない人だから


「何、お化けでも見たような顔してるけど?」

「え、だ、だって!ヒバリさん今出張中だって、ボンゴレが…」


先ほど、10年前の恭弥と同じようなセリフをいって、クスクス笑うその人

25歳の、雲雀恭弥

ランボが、今日一日中逢いたくて仕方が無かった本人


「あぁうん、帰ってきた」

「え、でも…」

「だって約束したでしょ?」

「…っ」

「誕生日くらい、一緒にいたいって君が拝み倒してきたんだから…」


――あぁでも、あと少しで日付が変わってしまうね


そんな事を言いながらクスクスと笑う

本物

幻覚なんかじゃない

今年の誕生日は、逢えないと思ってた

でも…


「ヒバリさん…っ!」

「あーもー…本当に君はいつまで経っても子供だね」

「だって嬉しいんですよ!俺との約束守ってくれるなんて…」

「約束は守る、知ってるでしょ?」


知ってる

いつも、なんだかんだ言っても約束を違えたりしない

そんな人だから、好きだって思える


「あ、ヒバリさん…一つわがまま言ってもいいですか?」

「何?」

「え、っと…あの、キス、しても良いでしょうか」

「…」

「い、嫌ならいいんですけど!!」

「……仕方ないね、今日は特別に許してあげる」

「!!」

「でも、その前に…」

「え」

「誕生日おめでとう、ランボ」


それは、今日一番聞きたかった言葉

この人の声で、この表情で、言われたかった…


「〜〜っありがとうございます!!」


最高の、プレゼント




Buon Compleanno!






>あとがけ<

やれば出来る!←
なんとか間に合った!
1時間で書けるものですね!!!
頑張った!
更新予定と全然違いますけども…orz


ランボ、誕生日おめでとう!


ここまで読んでくださりましてありがとうございました!

2009.5.28.
 倉紗仁望 拝