「あっれ〜キョーヤだ〜」

「…ねぇ」

「なんでこんなとこにいんのぉ?ってあれ、なんでキョーヤ逆さま?」

「いつまでそうしてる気なの…死ぬよ?ベル…」


そこはイタリア郊外

最近ボンゴレ10代目を亡き者にしようと考えているファミリーが密かに計画を立てていると

連合ファミリーからの連絡を受けてボンゴレ暗殺部隊ヴァリアーが行動に移った

今もなおヴァリアーを引き連れいているのは9代目の義息子であるXANXUSだ

彼は綱吉に忠誠を誓っていた

そして―――…


「あー?オレ死なないよ、だって王子だし」

「そんなこと言ってないで早く止血しなよ」


なかなかに手強い相手だったのか、ベルフェゴールは血を流して倒れていた

自分の血を見て興奮したのか、ターゲットは皆惨殺

貧血でも起こしたのか地面に仰向けになっているベルをキョーヤこと雲雀恭弥は見下ろす


「あー頭がくらくらするぅ」

「それだけ血、流してたら当たり前」


上半身を起こしてベルは頭に乗っているティアラの位置を調節した

それを見て呆れ半分に恭弥はしゃがむと目線をベルに合わせる


「ほら」

「へ?」

「そんなにふらふらして、途中で倒れられても迷惑なんだよね」

「…ししっ、キョーヤ優し〜」


差し伸べられた手に驚くも嬉しそうにベルはその手をとった

立ち上がるとやはり血が足りないのかふらふらだ

しっかりと支えられて、ゆっくりと歩く


「XANXUSとかが怒ってたよ」

「げ、マジ?」

「嘘吐いてどうするの」

「うぅわぁ…また仕事減るぅ」

「だったらもっと気をつけなよ」


綱吉に負けてからのXANXUSは丸くなった

それこそ、ヴァリアーの大黒柱たる存在として部下に気を配る

なんとなく最初は気持ち悪い気もしたし、XANXUS自身も戸惑っていたが

だんだん慣れてきた今ではお父さん的存在だ

そうなるとお母さんはルッスーリアになりそうだが…


「あの変態何かと気にかけるからホント口うるさい母親みたいだよね」

「確かに〜、昨日だってオレがせっかく死体持ち帰ってやったのに
『怪我してまで持ってこないで良い!』とか言われたし…」


それでも最後には新たなコレクションを喜んでいたのだが…


「ちょっとまって」

「ん?」

「君、昨日も怪我したわけ?」

「ゔ…」


うっかり口が滑ってしまったとでも良いたそうにばつの悪そうな表情のベルに半眼で見据える恭弥

貧血気味の顔からさらに血の気が引いていく


「せっかく黙ってたのに〜」

「なに、つまりこれって昨日の傷口からも出血してるってこと」

「動いてたら傷口開いちゃっただけだし…」

「いくつ」

「…5針」


それだけの大きな怪我をしているのにもかかわらず人殺しを楽しむこの性格を…

どうにかして欲しいのが恭弥の心境だ


「君は本当に…一体どれだけ人に心配かければ気が済むの」

「え、なになに?心配してくれてた?」

「僕じゃない、あの変態だよ」

「ちぇーつまんねぇの」


口ではあぁ言っているが恭弥が心配していることを知っているベルはほんのり笑顔だ

それが気に食わなくて恭弥は眉間に皺を寄せる

黒塗りの車に近づいて扉を開ける

ベルを半ばてきとうに後部座席に転がす


「いって、扱い酷ぇ…」

「迎えに来てやっただけ感謝してよ」


運転席に乗り込むと車を発進させる

恭弥が自ら運転手を買って出たことにベルは驚いた


「え、なに運転手いないわけ?」

「僕の運転じゃ不満でも?」

「いや、そんなのまったくないないけど…」

「だったらいいでしょ」


それなりのスピードでアジトに向かっている

もともと車よりも自動二輪を好む恭弥は車を運転するときも時速200近く出すことがある

早く帰りたいのもあるのだろう

このままベルに失血死されても困る


「……ベル」

「ん〜…?」

「…………なんでもないよ」


意識があれば平気だろう


  






「ほら、着いたよ」

「あはぁーぐぅらぐらするぅー」

「…自分で歩いてよね」

「むぅりぃー」


両腕を突き出して恭弥の首に回す

仕方がないと恭弥はベルを抱き上げた


「ゔお゙ぉい…なんだぁこりゃ」

「あぁスクアーロ…医療班どこ」

「あ゙ぁ?今日はみんなではらってるぞぉ?」

「…なにそれ、ふざけてるの」

「しかたねぇからお前が看病すれば良いだろぉ」


衝撃的なその科白に恭弥は思わずベルを落としそうになる

慌てて抱えなおして困惑する

このままにしておく訳にもいかない

そのうち失血死は必須だろう


「……仕方ない、か」


とにかく医務室に運んで止血しよう

医学の知識も多少なりともある


「もう少し、我慢してよね」

「ん〜?」


急いで医務室へ向かう



  






「応急処置しか出来ないけど…」

「キョーヤ、手当てうまいんなー」

「……大丈夫?」

「だぁいじょぉぶー」


口ではそう言っているが起き上がる力もないのだろう、ベッドの上から動く気配はない

何故そこまでして敵を倒しに行くのか

きけば、本当はスクアーロにあてがわれた仕事だったそうだ

それなのにわざわざ怪我したばかりなのに自分が行くと言ったらしい

XANXUSは反対したが言うことを聞かないので仕方なく、ということらしい


「……死んでたら、どうするつもりだったんだよ…」

「キョーヤ?」

「人に心配かけるようなことして…僕より先に死んだら許さないからね」


なんとも理不尽なその想い

でも、自分の身を案じてくれているのは確かで、恭弥の精一杯の気持ち

それを思うと嬉しくて、自然に笑みがこぼれる


「死なないよー…だってオレ、王子だし」

「…君が死ぬときは僕が君を殺すときだよ」

「じゃー平気だわ、キョーヤを殺すのもオレだし」


―――他のやつになんか、あげないよ
    
     恭弥はオレんだもんね


「……ベル?」

「スー…」


口にしようとした言葉は音になることなくベルの内をに刻まれる

小さな寝息がどれだけベルが弱っていたのかを物語る

普通暗殺部隊というのは人前では睡眠をすることはない

それだけ疲れているのか、それとも…


「……生きてて良かったよ―――ベルフェゴール」


安心したのか、恭弥もベッドの渕にうつぶせて眠る

そんな恭弥にXANXUSが毛布をかけたのはまた別の話…


 









 あとがけ

久し振りにCPアップです!
あ、でも久し振りにベルヒバです
ベルがキレてます…
雲雀さんはベルが心配で心配で仕方がなかった…
みたいなことを書きたかったんですけれども……
伝わっていたら幸いです

ここまでよんでいただきありがとうございました!