「ちゃぉ〜」

「……なんで君がここに居るの」

「キョーヤに逢いに来たに決まってんじゃん」

「イタリアに帰ったんじゃなかったの…ベルフェゴール」


リング戦から数日がすぎた

いつものように応接室で仕事をしていれば突然扉が開いて先日まで敵であったヴァリアーの幹部…

ベルフェゴールが当然のように現れた


「帰ったには帰ったけどさぁ〜暇だから来た」

「…君は暇だからってわざわざ海を越えてこんなところに暇つぶしに来るの」

「しし、だってオレ王子だし」


どこか楽しそうに笑う

恭弥もどことなく口元が笑みの形になっていた


「それで今日は何?」

「今日はぁ〜変態の焼いたクッキー」

「…あぁあの」

「あいつ変態だけど菓子は絶品だからさぁ」


恭弥に逢いに来るたび何か手土産を持ってくる

今日は変態扱いされているヴァリアー幹部・元XANXUS晴の守護者だったルッスーリア作のクッキーらしい


「そうそう、紅茶葉も」

「あぁ、僕が淹れるよ」

「マジ?ラッキー」


機嫌が良いのか恭弥自ら紅茶を淹れてくれるという

いつもなら書類と睨めっこしてるうちにベルが淹れるのだが…


「今日は珍しく風紀が乱れてないからね、何があったのk知らないけれど」


少し不思議に思いながら恭弥は紅茶を淹れ始める

恭弥に背を向ける形になるソファーに腰掛け背もたれに両肘を着いてその様子を眺める

そして口元を笑みの形にゆがめたベルが恭弥には聞こえない程度の声で呟く


「群れてる奴らっての、全部オレがやっつけたもんね」

「何か言った?」

「なぁんも」

「?」


恭弥の仕事が増えて二人の時間を邪魔されないように

ベルは恭弥が見つけたら取り締まるであろう連中を先に病院送りにしていた

殺してはいない

今から恭弥に逢いに行くというのに血に染まるのはイヤだと思ったからだ

二人で逢える機会なんてそうそうあるわけではないのだから…



  

「どうしたの」

「へ?」

「紅茶、冷めるよ」


恭弥に指摘を受けてやっと目の前に並んだティーセットを思い出す

今は余計なことは考えない方が良いと判断した


「じゃぁキョーヤ…久し振りに逢えたことに、乾杯?」

「なにそれ、けっこう最近来たでしょ」

「一日でも逢えない日があったんだからさぁ〜久し振りじゃん?」

「そう?」

「ひっでー、オレはキョーヤに一日でも逢えないとブルーなんだけど」

「ふぅん」


どうでもいいと良いたそうに紅茶に口をつける

これは恭弥なりの照れ隠し

それを知っているのでベルはニッと口の両端を吊り上げて笑顔になるとクッキーに手を伸ばした


「今度は僕がお茶菓子を用意しておくよ」


ピタッとクッキーに伸びていた手が止まる

視線も恭弥にあわせる


「……キョーヤ?」

「貰ってばかりじゃ性に合わないしね」


目を閉じて紅茶を一口

その姿があまりにも綺麗だと思った


「〜〜〜っ…キョーヤ、それ反則だって」

「は?」

「無自覚だし…まぁいいけど」


ベルはクッキーを掴むと口へ運んだ

さすがルッスーリア作なだけあって絶品

王子の舌にもあう一品

もちろん、恭弥にも


「…あの変態、けっこうやるね」

「変態のくせにな」


遠く海を越えたヴァリアーアジトでルッスーリアが一人くしゃみをしたとかしていないとか…


「あ、オレまんじゅうっての喰いたい」

「まんじゅう?餡は粒餡?漉し餡?」

「何それ、じゃぁキョーヤの好きなので良いよ」

「そう、じゃぁ今度用意しておくから、来るときは連絡くらいしてよね」

「へーい」

「まぁソレまで生きてればね」

「ひで…オレ負けないし」


いつもいきなりやってくる王子に恭弥も少し呆れていた

連絡がないのは無事の証拠だとよくいうけれど……


「たまには連絡してよね」

「りょーかい、ってオレのケーバン知ってんの?」

「…………」


ピタリと恭弥の手が止まった

それにベルは笑う


「あちゃー、けっこう抜けてっとこあんのキョーヤ」

「うるさいよ」

「うしし、じゃぁこれオレの連絡先ね」


そういって恭弥にメモを渡す


「記録したらその紙隠滅してね〜これでも暗殺部隊なもんで」

「あぁそうだったね」


メモを左手にケータイを右手に持って登録していく

そんな恭弥の姿を眺めながらベルは思う


――今度またがいつなのかは解らない…

でも、二度と逢えないなんてことは絶対になり

それまでオレは死なない、だって王子だし

キョーヤも死なない…だってキョーヤだし


でも・・・


「じゃね」

「今からまたイタリア?」

「そーボスがうるさくってさ」


空が漆黒に染まる頃、ベルフェゴールは帰っていく


「じゃぁ、また逢えるように」

「祈りをこめて」


『A presto.』









A presto=近いうちに逢いましょう。またね。





fin.



あとがけ

初ベルヒバでした
ベルが書きにくくて仕方がありません
そんでもって最後まで「A presto」にするか「Arrivederci」にするかで悩みました
でも後者だと骸さんになってしまうので…
あってるのかどうかはわかりません(このダメ人間

ここまでお読みいただきありがとうございました!