君は馬鹿で単細胞で何考えてるかわからなくて……だけど、とても暖かくて


とても、優しい人―――…





=== 焼きそばパン ===





「遅い」

「む……すまん」


昼下がりの応接室でこの部屋の主とも呼べる風紀委員長・雲雀恭弥が一言いう

それに謝るのはボクシング部主将・笹川了平

二人は幼馴染みだ


「だいたい、毎日毎日よくも飽きずにここにこれるね」

「それは恭弥とて同じだろう」

「ここは僕の部屋だから僕がいるのは当たり前」

「ここは学校だぞっ」


あぁいえばこう言う

馬鹿の一つ覚えのように毎日ここへ来てお昼をとっていく了平に恭弥は呆れていた

しかし最近毎日のようにくる了平を待っていてしまうのも事実…

一般生徒であれば近付くことの決してないこの応接室兼風紀委員室に

なんの恐れもなく毎日通えるのは幼馴染みだからかただの馬鹿か

おそらくその両方なのだろうが…

幼馴染みというのは厄介でお互いに家も近ければ帰り道も一緒

最近では帰りの遅い恭弥を心配してか、了平も部活だといって遅くまで学校に残っていることが多くなった


「今日も部活なの」

「おぉ!毎日極限に練習しているぞ!」


――極限に練習って日本語になってないよ


恭弥がそう思っているうちも了平は弁当を平らげて行く

書類に目を通しながらときどきその様を見ていた


「お前は食べないのか?」

「知ってるでしょ 少食なんだよ、僕は…滅多にお昼は食べないよ」


呆れ気味に応えると了平がいう


「恭弥は食べなさすぎだぞ!そんなんだからそんなに細っこいのだ!」

「細…………」


確かに恭弥は平均中学生男子よりもかなり華奢だ

肉つきが悪いのも少しコンプレックスになっている

それを指摘されると、さすがにきれた


「悪かったね…もともとこういう風に身体ができてるんだよ…」

「何を怒っているんだ?人間一日三食が当然だぞ、ほれ」

「っ…?」


そういって差し出されたのは一つ焼きそばパン

おそらく購買で一番人気のものだろうそれは了平の好物だった気がする


「了平のでしょ、それ」

「お前が食わなさ過ぎるから余分に買ってきた」

「な……」


天然なのか、馬鹿だとしかおもっていなかった幼馴染の行為に恭弥は少なからず驚きをあらわにした

もう片方の手に同じパンを握っていた

朝練の生徒が買い占めるといわれていて部活に入っていない生徒は滅多に食べることが無いという

了平も朝練をしているので朝一に買いに行くのだろう

それを今日はわざわざ二つ買ってきているあたり意外と律儀だ


「一緒に食うぞ!」

「だからお腹空いてないって…」

「人間食べねば生きていけん!」

「だからって」

「問答無用だ!!」


そう言って半ば無理矢理恭弥の口に焼きそばパンを押し付けた

少し切れかけて言葉を発していたため口が開いていたのを利用したのだろう

そこまで考えているほど頭が回っているとは思えないので偶然だろうが…


「むぐ…」

「どうだ!」

「……」


口に刺さった焼きそばパン

すでに口の中に入ってしまったものを出すのは行儀が悪い

仕方なしに恭弥はそれを噛み切る

ゆっくりと噛んで飲みこむ


「どうだ!」

「…まぁ、悪くは無いんじゃない?」

「はっきりしないな…」

「そんなものだよ」


だいたい、恭弥にこんなことをして怒られないのは了平だからだ

他の人がやったら速攻トンファーで咬み殺されていることだろう

その時5時間目開始の予鈴が鳴響いた


「む、もうこんな時間か…ではまた帰りにな!」


急いで弁当を片付けると応接室を出て行った

また帰りに…

つまり今日も一緒に帰るつもりで居るのは明らかで…

恭弥の仕事が終わるまで練習をしているつもりだろうことも、明らかだった


「……今日は早く仕事切り上げようかな…」


焼きそばパンを食べながら書類を手に取る

その呟きを聞いていたのは応接室前で警備をしている草壁だけだった



fin.





あとがけ…っ

焼きそばパ…っ!!
ヒバリさんが焼きそばパン片手に仕事してる様子が想像できな...ぃ、ね
初☆了ヒバはほのぼの…
この二人ってラブラブとか難しいな
頑張ります…っ