「骸…」


紅潮した頬


「……なんですか?恭弥くん」

「僕のこと、好き?」


上目遣いに、潤んだ瞳


「…えぇ、愛してますよ」

「僕も、骸好き」


普段では決して言ってくれない甘い言葉と柔らかい笑み


「………恭弥くん、嬉しいです、嬉しいのですが…」

「?」


極めつけにはきょとんとした表情で首をカクリと傾けた


「〜〜〜…っまさか、たった2杯程度でこんなに酔ってしまうなんて」



―――予想外です。






=== 甘えんぼ ===






「こんばんは、恭弥くん」

「…どうしたの、珍しいね」

「くふふ、珍しいワインを頂いたので一緒にどうですか?」


ことの始まりは、こんな感じでした

ワインを片手にアジトにある恭弥くんの部屋に訪れたのは夜の10時を過ぎたころ


「……へぇ」


それだけ言って部屋に戻って行ってしまいます

入っても良いという暗黙の了解に僕は思わずニヤけます

珍しく部屋に入れてくれた恭弥くん

手土産を持って来て正解だと思いました


「おや?」


食器棚からワイングラスを取り出している恭弥くん

そのグラスはあまり使われてそうになく新品同様で、曇り一つありません

しかもこれは有名ブランドのもの…


「恭弥くん、ブランドものに興味なんてありました?」

「…あぁそれ、この間の誕生日に綱吉がくれたものだよ」

「あぁ確かに、このブランドはボンゴレ御用達の…」


ボス、沢田綱吉は誕生日等の記念日に敏感で本人の了承を得てから盛大にパーティーを開くこともあるほど…

恭弥くんはそういうのを好まないから開いたことはないけれど…


「律義ですよねぇ」

「ホントに…」

「多分これ、オーダーメイドでしょうね」


世界に一組だけの特別なもの

誕生日にふさわしいものをと自分でデザインまでする

優しいボンゴレだからこそできる所行でしょう


「実はこのワインも先程綱吉くんから頂いたんです」

「へぇ…?」


ソファーに腰掛けた恭弥くんの隣に座ってワインをテーブルに置く


「恭弥くんと一緒にどうぞだそうですよ」

「…なるほどね」


――ホントに…余計なお世話だよ、綱吉


一瞬何か思い出すような表情になった恭弥くんに首を傾げながらワインのコルクをとるとグラスに注いでいきます

恭弥くんはそれを眺めています


「それじゃぁ乾杯しましょうか」

「何に?」

「そうですね…今宵二人で過せることに…」

「……クス」

「「乾杯」」


それから1時間

僕が見る限り恭弥くんは完璧に酔っているようです

僕の肩に頭をコツンと傾けている恭弥くんは可愛いです

僕の理性との闘いに火蓋が切って落とされました


「骸、おかわりいる?」

「そうですね…せっかくですし頂きましょう」


珍しくお酌をしてくれる恭弥くん…

酔っている彼も可愛いですが、素のままでこういうことをしてくれた方が恋人としては嬉しいですね

でもこんなのも良いかも知れません


「………」

「どうかしましたか?」

「ねぇ骸…」

「はい?」


急に首に腕を回されて顔が正に目と鼻の先にあります

理性と格闘中の僕には刺激が強過ぎます

しかし…


「抱いて…?」

「――――…」


その瞬間、理性との闘いは僕の完敗に終わりました


   











自分に腹が立つ

誕生日くらい祝ってやりたいと思ってたから…

だから昨日は普段しないことを言ったりしてみた

案の定悦んでいた骸に苦笑が漏れる


「まったく…」


なんでこんなのが自分の恋人なのかと疑問に思う

ベッドサイドに置いてある水差しの水を飲もうと骸の腕から抜け出る

所在なさげに骸の腕が放り出される

やっぱり腰には激痛


「…っ、」


水を飲んで部屋の中を見る

脱ぎ散らかった服が乱雑に床を覆っていた

片付けようかとも思ったけど少し動く度に激痛の走るこの腰を抱えてそれは無理

仕方ないから寝直そうと思ったらいきなり後ろから引っ張られた


「っ、?」

「恭弥くん…」

「なに…」

「おはようございます、起きていたんですね」


目を覚ました骸の腕の中に逆戻りして微笑まれる

ホント、無駄に顔だけは良いよね


「昨日は大変だったんですよ?」


骸は僕が酔ったふりをしていたことを知らない


「……そうみたいだね」

「おや…?」

「…なに」

「いえ、ここで殴られると思っていたのですが…」


失礼な…

確かにいつもだったら速攻殴り倒してるけど…


「……だって今日、骸の誕生日なんでしょ?」

「――…、」


予想通りの驚いた表情

ここまで予想通りだとなんだかつまらないね


「どうして知って…」

「綱吉が教えてくれたよ」

「……まさか昨日のことは計算のうちですか?」

「さぁ、なんのことだい?」

「〜〜〜〜…っ」


してやったり

僕に顔を見せないように抱き締めてくる骸に笑う


「やられましたね」

「ヤられたのは僕だよ」

「くふふ…完敗ですよ、恭弥くん」

「ワオ、僕に勝てると思ってるの?」


僕に勝つなんて一生無理だよ

そう言って不敵に微笑んでやると骸が顔を近付けて来た

大人しく目を閉じてやると唇に柔らかい感触


「…誕生日、おめでと」

「くふ、ありがとうございます」



珍しく甘えてくれる恭弥に骸はご満悦

誕生日である骸の方が甘えるのが普通なのだろうが、いつもデレデレな骸は逆に恋人な甘えて欲しいと思う

最高のプレゼントは一生手放すことのない大切な思い出


 

fin.






 あとがき

酒に酔った雲雀さんが書きたかったのに結局フリですか…orz
もう少し絡ませたかったな…

ここまで読んでくださりありがとうございます!!