「お久しぶりです、恭弥くん!」

「……ど、ぅしたの…骸」

「いやですねぇ恭弥くん、パイナップルでいいですよぉ」

「………………………………………………」


突然現れた骸は何故か気持ち悪いくらい笑顔でそう言った





=== 手 ===





応接室での仕事中

全校生徒はこの夏場の茹だるような暑さの中、授業を受けている

恭弥はいつものようにクーラーをつけて適度な温度の中一人資料に目を通していた


のだが…、


「くふー…ここはいつも涼しいですねぇ」

「今日は一体何の用なの、骸」

「ですからーパイナップルでいいって言ってるでしょう?」

「ついに頭いかれた?」

「お褒めに預かり光栄ですー」

「……」


一体どうしたというのだろうか

嫌がらせにしては自分を犠牲にしすぎている

何か裏があるのかと恭弥は細心の注意を図る


「今日はお土産もあるんですよぉ」

「お土産…?」

「これです」


そういって差し出したのは見紛うことなくパイナップル

一体どこからそんなものを出したのか、恭弥は少し気になった

しかしそれよりも気になることはたくさんある


「……どうしたの」

「恭弥くんがパイナップル好きなんじゃないかなぁとおもいまして」

「別に、好きでも嫌いでもないけど…」

「そうですかーでは一緒に食べましょう」


そういうと応接室備え付けの給湯室に向かう

包丁を取り出して起用にパイナップルを食べられるようにしていく骸


「……本当に、どうしたっていうんだい」

「何がですかぁ?」

「いつもと違う」

「僕はいつも僕ですよ」


そういって綺麗に切りそろえられたパイナップルを皿の上に並べて持ってくる

テーブルの上におくとひとつフォークでさした


「はい、恭弥くんアーンv」

「……自分で食べられる―――…?」


   



骸の手からフォークを奪う

一瞬触れた手が、やけに暑い

もしかして…


「なんですか?」

「…なるほどね」


骸の額に手を添えた恭弥はすべてを悟った


「骸、寒くない?」

「そういえば寒いですねぇ」

「頭がふらふらするとか」

「あぁはい、今朝からずっとふらふらです」

「……まったく、犬と千種は何を」

「恭弥くん?」


額に手を当てて恭弥はうつむいた

明らかに紅潮した頬

熱があるもの特有の寒気

完全にこいつ、風邪引いている


「熱がある人間って、厄介だよね」

「?」


無自覚なのか、骸は何のことだと首を傾げた

呆れてものも言えない恭弥はケータイを取り出すと電話をかけた


「恭弥くん…?」

「少し待って…あぁ草壁かい?」


電話の相手は風紀副委員長の草壁のようで、短い会話の末恭弥は通信をきる

少しして草壁が応接室に駆けつけた


「委員長…」

「この資料整理、頼んだよ」

「うす」


テーブルの上にある資料の山を指差すと短い返答

おもむろに立ち上がると骸の腕を引く


「恭弥くん?」

「帰るよ」

「はい?」


そのまま骸を引きずるように引っ張って応接室をあとにした



  







「恭弥くん…?」

「乗って」

「……はい」


恭弥が愛車に跨る

後ろをさして骸も乗るように促した

半信半疑で後部座席に乗ると恭弥の肩に手を置く


「そんなとこ掴んでたら振り飛ばすから、こっち」


手を掴まれて恭弥の腰に手を回す

そのまま恭弥はエンジンをかけた


「ちゃんとつかまってなよね」

「……はい」


ふわりと微笑んで骸は返事をする

エンジン音をたててすべるように並盛中を後にした

流れていく景色を茫然と眺める

こてん、と恭弥の背中に体を預けた

運転に集中していた恭弥はそれを感じるとふっと微笑むと速度を上げた


  








「ほらついたよ」

「…?」


そこは恭弥のすんでいるマンション

てっきり帰るといわれたので黒曜センターにでも送り届けられると思っていた骸は首を傾げる


「隣町まで行って、その間に熱が上がられても困るからね」

「……」


バイクからおりた二人はまっすぐに部屋へ向かう

途中ふらふらとして危なっかしい足取りの骸を支えてたどり着いた恭弥の住まい

寝室にたどり着くと放るように骸をベッドに沈めた


「ちょっと待ってて、氷枕持ってくるから」

「っ、待ってください…っ」

「?」


慌てたようなその声にぴたりと足を止める

学ランの裾を掴んで不安そうな表情の骸に恭弥は息を吐く

床に膝をついて骸の顔を除きこむ


「どうしたの」

「い、かないで下さい…」

「でもそれじゃぁ氷枕持ってこれないよ?」

「いいですよ、そんなの…」


伸ばした手を必死に掴む骸に苦笑する

もう片方の手で額にかかる前髪をかきあげてやる


「…恭弥くんの手…冷たくて気持ちいいです」

「そう?」

「はい」


――あぁそうか、君は…


「ここにいるから、寝ていいよ」

「…どこにも行かないで下さいよ?」


――人の温かさを知らずに生きてきたんだ


「大丈夫だよ、ここにいる」

「…なら、少しだけ……」


すぐに、規則正しい寝息が寝室に響く

恭弥は柔らかい笑みを浮かべると骸の髪をいとおしげになでる

普段とは違う骸の表情

なんだか穏やかな寝顔を浮かべるたまにはこういうのもいいかもしれないなと思ってしまう

次第に眠気が襲ってきて恭弥はベッドにうつ伏せになって寝息をたてはじめた


  







「…ぁ?」

「おはようございます、恭弥くん」

「……あれ?」


いつの間にかベッドの上に眠っていた恭弥の隣には微笑む骸

窓からは紅く燃えるような夕焼け

もうこんな時間かと恭弥は上半身を起こすと伸びをした


「骸、もう熱下がったの?」

「まだ少し、動くのは億劫ですね」

「風邪薬飲むかい?」

「あまり、薬には頼りたくないですね…」

「…じゃぁなにか食べる?」

「作って、くれるんですか?」


きょとんとした表情でいう骸に少し引きつった表情をする


「病人に動き回られても、迷惑」

「それは…すみません」

「玉子粥でいいよね」

「えぇ、是非」


骸もベッドから降りると立ち上がる


「お手伝いします」

「いいから君は椅子に座って待ってなよ」

「そうですか…」

「さっさと風邪治して、さっさと二人のところに帰りなよね…多分心配してるよ」

「…はい」


恭弥が作った玉子粥を食べて、二人はもう一度…今度は一緒に眠りについた






  




あとがき

なんか書かなきゃ、って思って突発に思いついたヒバムクっぽいムクヒバ
なんでこんなことになったのかわからない
つか最後のしめどうしようか悩んだ…orz
駄文中の駄文だわぁ
スランプかしら…orz
がんばります

ここまで読んでいただきありがとうございました!!



⇒おまけ

 


「あ、骸さま…」

「ただいまです、千種」

「いきなりパイナップルもって消えたから心配してました」

「……そう」

「骸しゃん共食いれすかぁ?」

「なにかいいましたか?犬」

「なんれもないれす!!」


今日も骸は元気です







≫ここまで読んでいただきありがとうございました!