今日という日を、どれほど待ちわびたことか…


「…恭弥さん、覚えててくれるかな」


そう、今日は俺の、誕生日







=== 君に... ===







誕生日を病院で迎えることとなった沢田綱吉、今日で13歳

昨日行われたリボーンによるイベントにより負傷してしまい悲しい思い出を作る


「あー…なんでこうなるかなぁ…」


何をやっても、ダメ

だからって、コレは酷いんじゃないかな…


「……あーもう14日になってるよ、悲しいなぁ、こういうの……」


そのまま睡魔に襲われて、次に目を覚ましたのはまだ朝日が昇らぬ暁降ちの頃

不意に窓から秋の風がはいってきて目が覚めた


「なん、だ?窓、開いてる?」


看護士が閉め忘れたのかと綱吉は上半身を起き上がらせる

しかしそこにはまだ沈まぬ満月を背にした人影


「ぇ…だ、れ」


―――泥棒

その言葉が頭をよぎる

ここは病院だ、金目のものは五万とおいてあるだろう

泥棒が入り込むにはうってつけの場所だ


「―――…っ」


最悪だ、まさか誕生日にこうも立て続けに不幸に会うなんて、と綱吉は考えた

しかも自分はすでに起き上がってしまって、相手に自分が起きている事実を伝えてしまっている

ゆっくりとその人影が綱吉に近づいて行く

万事休す、か


「なにやってるの」


しかし、聞こえてきたのは聞きなれた…聞きたかった声


「―――…ひば、りさん?」


並盛中風紀委員長にして最も恐るべき不良―――雲雀恭弥


「ほかに、誰に見えるって言うの、綱吉?」


月明かりが逆行になっていたので見えなかった表情が近くに来てやっと見えた

それは間違いなく恋人である恭弥だ


「ど、して?」

「今日は…君の誕生日、でしょ?」


――家に乗り込んだら君はいないし…


そう呟く恭弥に綱吉は申し訳なさそうに俯く


「すみません、またリボーンの奴に…」

「あぁ大体のことは赤ん坊から聞いたよ、ここの場所教えてくれたのも赤ん坊だしね」


きっと今の時刻、いつものリボーンは寝ているだろう

それにもかかわらず恭弥が来たときには起きていた、ということになる

それなりに気を利かせたのだろうか


「…まさかな」


でも、そうだと感謝したい

きっと家にいたら二人きりにはなれなかっただろうし…


「綱吉…?」

「あ、すみませんぼーっとしてて...」


考え込む綱吉に首を傾げる

いつの間にかベッドの端に腰掛けている恭弥ににっこりと微笑む


「きてくれて…ありがとうございます」


しかも、こんな朝早くに…

でも恭弥ならやりかねないと予想していた

自意識過剰すぎだと思っていたのだが…


「俺、雲雀さんが来てくれないかなって、思ってたんです」


ずっと携帯電話を見ていた

でも病院内では携帯は使えない

いろいろな機器のある病院内に余計な電波を与えてしまってはシステムに支障が起きる


「なんか、自意識過剰かな、って…自惚れ過ぎてるかなって、思ってたので…」


――すごく、嬉しいんです


ぽつりと呟いたその言葉に恭弥は呆れ半分にため息を吐いた


「馬鹿だね、ホント」

「す、すみませんっ自惚れてなんかいて」

「そうじゃなくて」


瞬間、唇をふさがれる

何が起こっのか一瞬わからなかったけれど、離れていく体温を感じて頬が紅くなる


「ひ、雲雀さっ」

「自惚れたって、いいんだよ」


綱吉の顎に手を当てたまま真剣な表情の恭弥に、心臓が跳ねる

いつの間にか身体を乗り出して綱吉の上に覆いかぶさるような形になっている恭弥…

綱吉は強い眼光に射抜かれて、息もできないような錯覚が起きる


「自惚れてくれなきゃ…面白くない、でしょ」

「―――…雲雀さん」

「僕らの関係、なんだと思ってるの?」

「―――…っ」


急激に頬が熱くなるのを感じる

どうしよう どうしよう どうしよう

動けない

瞬くことすらできない


「僕は綱吉のことが好きだから、ここにいるんだよ」

「雲雀さん...」

「自惚れていいんだよ…自惚れて、いいよ…僕だって、綱吉が僕の恋人だってことに自惚れてるんだから」

「え…」


驚く

何でもできて、何でももっていそうなこの人が自分が恋人であることに自惚れているなど…

想像もしていなかった


「僕はね綱吉...とても不器用で、どうやって人に接して良いのかなんて解らないんだ」


その言葉に思い出す

人を寄せ付けない、寄せ付けようとしないこの人の雰囲気

彼の配下ともいうべき風紀委員たちでさえ、彼を恐れているのだから


「でも、君は違うんだ…近くに居ると落ち着くからね」

「…雲雀さん」

「今でもどうやって接して良いかなんてかわらないよ、でも...それでも...綱吉が僕の恋人である事実は変わらないから…
すごく、嬉しいんだ」


初めてこの人の本心を知って気がする

初めて...この人のことを知った気がする

あぁそうだ、この人は…

とても不器用で、とても優しいんだ


「……俺、雲雀さん…大好きです」


両手を伸ばして、恭弥の首に抱きつく

恭弥は綱吉の背中に腕を回して抱きしめる


「ねぇ…名前で呼んで」

「え…」

「今度から、名前で呼んで..."雲雀゛じゃなくて...僕の名前、知ってるでしょう?」

「き……恭...弥...ですか?」

「そう」


視線を負わせて真面目な表情で言ってくる

気恥ずかしくなって、目をそらす


「呼んでくれないの?」

「――――…きょ…や…さん」

「…まぁ、それでもいいか」


そういうと触れるだけのキスを落とす

綱吉はいろいろな恥ずかしさで顔を真っ赤にしている


「まったく、コレくらいで真っ赤になってちゃどうしようもないね」

「ひ、雲雀さんが悪いんです!」

「だから名前で呼んでって...」

「な、名前呼ぶだけでこんな心臓が爆発しそうになるのに普段から呼べません〜」


もう泣きそうな綱吉の頭をよしよしと撫でてあげて、恭弥は思う

この根性無しにどうやってこれから自分の恋人だという自覚を持たせるか

でも、それは意外と簡単なこと…


「綱吉...愛してる」

「――――…っ///」


だって二人の気持ちはもう繋がっているのだから…




fin______...





あとがき
あ、すみませんこれ去年書いたやつです(爆
だから綱吉がヒバリさんを苗字呼び…っ
つか誕生日関係あるのか?!
去年の僕はなにがしたかったんだろう
そしてそれを掘り起こして載せちゃう自分って…orz
すみません、ホントすみません
去年書いたのに…1年経つのって早いですね(泣

2007.10.14.
 倉紗 仁望
 


再掲載しましたー!
ここまで読んでくださってありがとう御座います!
2008.2.3.
 倉紗 仁望