「綱吉は、今日が何の日か、知ってる?」

「え…?」

「…どうしたの、そんな驚いて」


突然の恭弥の言葉に、綱吉は予想外に驚いた

逆に驚いてしまった感のある恭弥は首をかしげた


「いやあの…さっきも国語の授業で同じ質問されて…来週答えてやるとかなんとか」

「…あぁなるほどね、うん、それは驚くね」

「あはは…」

「で、結局なんの日か、知ってるの」

「いえ…、なんの日なんですか?」


きょとん、と首をかしげた綱吉が可愛くて思わず苦笑

ゆっくりと焦らすように口を開いた


「今日は赤穂浪士討入の日、だよ」

「あこう…?」

「忠臣蔵って、聞いたことあるでしょ」

「あー…ドラマとかでよくやってますね」

「そう、元禄15年12月14日に大石内蔵助が吉良上野介宅に討ち入って仇討ちに成功したんだ」

「…さすが恭弥さん、何でも知ってますね」

「これは日本人なら持っているべき知識だよ」


当然なのだといわれてなんとなく恭弥がすごいと思う

授業にでてもいないし、いつ勉強しているのかもわからない

それでも頭は良い


「でも、なんでいきなり…?」

「…その時の将軍が、五代将軍、徳川綱吉だったんだよ」

「へ…」

「それで、あぁそういえばって思ったんだけど…」


――さすがに、名前が同じだからって知ってるわけでは無いものだね


そういって苦笑する恭弥に困ったように笑い返す

なにもできないダメツナ、なんて呼ばれてて、徳川将軍と同じ名前なんて大それてると思う

名前負けするってこういうことなんだろうな


「おれは、誰かの上に立つってことできないですよ」

「何言ってるの、仮にも世界最大マフィアボンゴレファミリー10代目が」

「もー…マフィアになる気なんてないですって」

「でも、綱吉で良いと思うよ、僕は」

「何がですか?」

「ボスが、綱吉だったら徳川綱吉みたいなことはないと思うよ」

「徳川みたいなって?」

「ホントに君、そういうことには無知だよね…」


呆れたように言って、息を吐く

なんだか馬鹿にされているような気がして綱吉は頬を膨らませた


「どーせ俺はダメツナですよー」

「ま、そこが可愛いんだけどね」

「もー…それで?」

「うん、徳川綱吉は悪政といわれる政治を行ったんだよ」

「悪政?」

「悪い政治ってことだよ」

「それくらいわかりますよ」


また馬鹿にされた、と頬を膨らませる

恭弥は笑って続けた


「とにかく徳川綱吉は政治経済を混乱させるようなことばかりしていてあまり評判が良くないんだ」

「ほえー…」

「さっきの忠臣蔵のように、大石内蔵助の主君がいじめにあっていてね、頭に来て江戸城で吉良上野介に切りかかったんだ
でも少し額を掠っただけですぐに取り押さえられて、そのまま裁判もなく、外の地面の上での切腹をさせたのも綱吉だよ」

「……なんだか、その人可愛そうですね」

「そうだね、そこは“徳川綱吉”と“沢田綱吉”の違いだよ」


人を思うことが出来る

部下を慕うことが出来る

綱吉だから、ついてくる人間がいる


「少なくとも君は、部下に死の命令をしたりはしないでしょ」

「それは…」

「綱吉は、優しいからね」


そう、絶対に揺らぐことのない優しさ

誰かを守るために戦って、何かを祈るように拳をふるって…

守りたいものを守るために、強くなる


「綱吉だからこそ、ボスに相応しいと思うよ」


それこそ何も言わずとも、みんなが綱吉を慕ってる

綱吉には、大切なものがたくさんなる

その分だけ強くなる

だから、強くなれる


「…恭弥さん」

「だからこそ、そんな綱吉を、僕は、守るよ」


君が誰かを守るために戦うのなら

僕は君を守るために戦う


そう呟いた恭弥に綱吉は困ったように微笑んで、幸せそうに頬を染めた

大丈夫だと、思う

あなたが居てくれるだけで、自分は強くなれる

出逢えて良かったと、思えるんだ


「俺、もっともっと強くなります」

「うん」


少しずつ、自分の中で変わり始めていること

いつも、誰かを信じているから

強くなれるんだ






≫あとがけ

なにもいうな…orz
むしろいわないでやってくださいスミマセン
忠臣蔵の話だったのに最後なんか違う
まぁいいや、楽しかったし・・・
君に会えてよかったをイメージして…!!

2007.12.14.
 倉紗 仁望