「はぁ?!」

「なんだ…不満か?」

「そうじゃなくて!何人いると思ってるんだよっ」



「獄寺と、山本と、笹川兄妹、ランボ、イーピン、ディーノ、フゥ太、ハル…」

「考えただけで無理だよ…」

「でも全員にはすでに言ってあるんだぞ」

「ふざけんなぁぁ!!!」







=== てがみ ===








突然の家庭教師からの宿題


「俺がイタリアに帰ってる間にファミリー全員に手紙を書け。できなきゃ死ね」


なんともわけの分からない宿題に綱吉は悩まされている

それが2日前

リボーンが帰ってくるまであと5日


「うわぁ…毎日顔あわせてる人に手紙なんて恥ずかしい…」


いざ書こうと思っても、なにを書いていいのかわからない

短くてもいい

とにかく手紙を書けばいいのだという


「……どうしよ」


とにかく、やるしかない




「綱吉に手紙…?」

「そうだぞ、今ツナのファミリー全員に書かせてんだ」

「全員って、山本武も入ってるのかい?」

「当然だぞ。あいつもツナのファミリーの一人だからな」


数日前のこと

突然応接室に顔をだしたリボーンに雲雀恭弥は少し驚いていた

最初、綱吉になにかあったのではないかと心配したのだがそうではないらしい


「ツナは全員に書いてるからな、おめぇもツナになんか書いてやれ」

「……毎日顔を突き合わせてるのに、今更なにを書けって言うんだい?」

「そんなのおめぇしだいだ、俺には関係ねぇー…じゃぁな」

「赤ん坊…っ!」


言って、リボーンは窓から出て行ってしまう

いったい、どうしろというんだろう


「……はぁ」


リボーンがいなかったころが懐かしいとすら思えてしまった



  


「今日じゃん…」


自室で綱吉はぐしゃぐしゃになった便箋に囲まれていた

すでに残すは一人というところにきている

しかし、何を書いていいのかさっぱり分からないのだ


「……毎日、いっしょにいるし...リボーン達より、付き合い長いし...」


ダメツナと罵られ、ずっとひとりでいたころからの恋人

恭弥への手紙が、まだ出来上がらない

紙を無駄にするばかりで一向に始まりすら見えてこないのだ


「あー、もうすぐリボーンのやつ帰ってきちゃうよぉー…」


一年生の6月まではそれは平和なものだったのに…

リボーンがきてからというもの、日常は変わっていった

唯一、変わらないといえば…


「―――…そうか、そうだよね」


ゆっくりと綱吉はペンを走らせた



その日の深夜


「できてるか?」

「あ、リボーンおかえり」

「なんだ、やればできるじゃねぇか」

「あっはっはっは」


乾いた笑みを浮かべる綱吉

リボーンはそんなのよそに手紙の内容を確認していく


「うわ!読むなよっ」

「それじゃぁちゃんとかいてるかわかんねぇじゃねぇか」

「ちゃんと書いたから!!」

「ん、これヒバリにか?」

「ひゃぁ!!!」


一番見られたくないものを見られて綱吉は顔を真っ赤にする

しかしそんな綱吉とは裏腹にリボーンは呆れ顔だ


「っは」


鼻で笑うと手紙を綱吉へ放る


「それ全部届けて来い」

「はぁ?!もう夜...っ!」

「大丈夫だ、全員おきてるように言ってある。早くいかねぇと全員寝不足になるぞ」

「うぅ…リボーンの阿呆ぉ」


泣く泣く手紙を鞄にしまうと夜の街に飛び出す

しかし、門柱を出たところで首根っこをつかまれてしまった


「ぐぇ…」

「ちょっと」

「え、あれ?!恭弥さん!!」


襟をつかんでいるのは紛れもなく恋人である恭弥

私服で、少し厚着をしている

見れば隣には恭弥の愛車である自動二輪がおいてあった


「こんな夜中に一人で行く気」

「…いっしょに行ってくれるんですか?」

「なに、この僕が綱吉をこんな夜中にひとりで歩き回らせるとでも思った?」


やっと襟から手を離されて向き直る

もう冬に近いためか寒い夜の下、恭弥の鼻先が少し赤くなっていた

ずいぶんとここで待っていたらしい


「…メールしてくれればよかったのに」

「どうせバイクなんだし、寒いのは同じだよ…ほらこれ着て」


そういうと綱吉サイズのダウンジャケットを取り出す

いつもバイクに乗る時に着せられるものだ

風が冷たくて、しもやけにでもなったら大変だ


「手袋は持ってるでしょ」

「はい!」

「それじゃ、行くよ…まずは笹川の家から」


静かな並盛に排気音が響いた



  



「あとはどこ?」

「あとは…山本の家です」

「……そんなの捨ててさっさと僕の家に帰ろ」

「えぇ?!ダメですよ!!ちゃんと届けないと待ってるかもですし」

「いつまでも待たせておけばいいよ、むしろ死ねばいいとおもうよ」

「恭弥さん!!」


どうしてこうもこと山本となると機嫌が悪くなる

その理由を知ったのはついこの間のことだったけれど、自分はもう気にしていないのだ


「とにかく!竹寿司ですっ」

「……わかったよ」


しぶしぶといった感じで山本宅へ向かう

なんだかんだいって綱吉には逆らえない恭弥である

甘い、といったほうが適切かもしれない


「お、来たのなー」

「遅くなってごめんね、山本」

「いいって!どうせヒバリの奴にごねられてたんだろ」


黒い笑みをしながら綱吉の後ろでバイクを止めている恭弥をみる

恭弥も負けじと睨み返していた


「えー…と、はいこれ」

「お、サンキューな。これは俺から」

「あはは、ありがとう山本」

「終わったならさっさと帰るよ、綱吉」


すでにバイクに跨っている恭弥をみて綱吉は少しあわてる

山本に別れの挨拶をすると恭弥の後ろにしがみつくようにして乗る


「また明日学校でなぁー」

「うん!」


排気音に紛れて綱吉の声が届いたかは定かではない

山本はテールランプの光が見えなくなるまで手を振っていた


「……あー、明日学校来そうにないのなーツナ」


悔しそうにしながら玄関を閉じた



 





「泊まってくでしょ?」

「はい!」


恭弥の家に着いて嬉しそうに返事をする

なにも荷物を持ってきてはいない

すでに生活に必要なものはすべてここにあるからだ


「お風呂は入ったの?」

「はい」

「そう、つまらないな」

「えー恭弥さんのえっち」


あははと笑いながら綱吉がいう

何を今更とでもいいたそうな恭弥は息をついてコートを脱いだ


「それで?」

「へ?」

「僕への手紙はないわけ」

「あ!あります!!あります、けど…あの、あとで読んでくださいね?」


おずおずと差し出した封筒はなんともかわいらしい小鳥の絵が描かれている

それが無性に可愛く思って苦笑する


「......仕方ないね、はいこれ」

「わぁっありがとうございます!」


恭弥も綱吉宛の手紙を差し出した

達筆な字で“綱吉へ”と書かれていた

思わず、自分の字の下手さ加減にうんざりしそうな綱吉だ


「明日、家に帰ってから読みますね」

「その前に学校があるけどね」

「むぅ…」


学校という言葉に綱吉は剥れた表情

学校に行く、というのは別に良い

良いのだが、授業とか勉強とか教師とかそういうのが嫌いな綱吉にとってはあまり良い印象はない

恭弥がいる応接室に行くのなら話は別だ


「それじゃぁ、そろそろ寝ようか、明日も早いし」

「そうですねぇ」


パジャマに着替えて、ベッドにもぐりこむ

何も言わずとも恭弥の腕を枕に抱きしめられながら眠りについた



 
 



「うわぁ〜緊張する」

「さっさと開けやがれ、最後の一通だろーが馬鹿弟子が」

「だってだって!恭弥さんからの手紙だぞ!?何かいてあるのかって思ったら…っ」

「てめぇがあけねぇなら俺が開けてやる」

「わわ!!」


颯爽と綱吉の手から手紙を奪い取る

綱吉の静止なんか聞く気もないのかさっさと封を切った

中身を見て、呆れたように綱吉の手にそれを返す

すぐに部屋から出て行ってしまったリボーンに首をかしげながらも自分もそれをみる


綺麗な文字が5文字


たったそれだけだけれど、中身は自分が書いたものと同じ...


「〜〜〜〜っ恭弥さん!!」


嬉しそうに手紙を抱きしめるとベッドの上に倒れこんだ





「……やられたね」


同時刻、自室にて手紙の封を切った恭弥も同じようにベッドに沈んでいた












『綱吉へ...

   愛してるよ

        恭弥より』



『恭弥さんへ
 
   愛してます

        綱吉より』』












「揃いも揃って、バカップルが…」


呆れたようにため息を吐くリボーンがいたとかいなかったとか…





fin.



あとがけ!!

ひさしぶりのひばつな...っ!!
やった!やったよ!
このネタ去年から考えてたのにぜんぜん形にしようとしなかったんだ!(爆
なんかもう感無量
やりとげたぜ、やったぜ

ここまで読んでくださってありがとうございましたっ

2007.10.21.
 倉紗 仁望