君との出逢いは、とても昔…

それこそ、忘れていた大切な思い出の中に―――…






=== 小さな記憶 ===






「ランボ!イーピン!!いい加減にしてよ!」


日曜日 快晴 記憶を手繰る

今日も今日とて日曜日にお父さん状態の沢田綱吉

せっかく綺麗にした部屋が瞬く間に散らかっていく


「ほら二人とも!」

「なにすんだっツナのくせにー!」

「今日は恭弥さんが来るから外で遊んできてっていってるだろ!」


そう、今日は恭弥が来る

久し振りに私服で逢えるので綱吉は楽しみにしていたのだ

ランボとイーピンの追いかけっこが始まらなければ…


「いいか二人とも、今日は大人しく下に行ってて」

「なんでー」

「だから!今日は恭弥さんがくるんだってば!!」

「ランボさん関係ないもんねぇ」


その言葉に綱吉は切れる

ゴンっと鈍い音がしてランボの頭を拳骨で殴る


「っつ…」

頭を殴ったときに髪の中にあった10年バズーカまで殴ってしまった綱吉は手に痛みを感じだ

途端、ランボが目を潤ませて泣きはじめる


「が・ま・ん〜っ」

「してないだろ!」

「何してるの綱吉」

「きょ…っ!!」


ランボを叱ってやろうと思った瞬間、扉が開いて恭弥が入ってきた

驚いている間にランボが10年バズーカを取り出す


「うわぁぁぁぁ!」

「お、こらランボ!!」


慌ててランボを取り押さえたがすでに遅く、10年バズーカが発射されていた

煙が部屋に充満する


「ケホっランボ!」

「うわぁぁぁぁっ」

「え…?」


腕の中に居るのはいつもの5歳児のランボ

もしかしたら先ほど殴ったときにどこか故障でもしてしまっていたのか…


「……っ?!」

「ったぁ…」

「…も、しかして…恭弥さん?」


やっと煙が晴れて恭弥が居たところにいたのは小さな少年だった

背格好からして5歳くらいだろう

どうやら10年バズーカが逆に作用してしまったようだ


「…あなた、だれ?」


綱吉をみて首を傾げる恭弥(5)は今の恭弥をそのまま5才にしたような感じだった



 


一方


「……ここ、どこ?」


10年バズーカの逆作用で10年前に飛ばされた恭弥は先ほどまでいた部屋と違う道路にたっていた

少し違うが、ここが並盛町だということもわかる

そこでやっと、以前綱吉に聞いた10年バズーカにあたってしまったということに気がついた


「……なるほどね」


とりあえず、ここらへんを一周してみようと恭弥は歩を進める

少し歩くと公園の前までくる


「った…」

「?」


不意に足に衝撃

そこには3〜4才くらいの少年


「ご、ごめんなさい!」

「…綱吉?」

「ふぇ…」


それは沢田綱吉(4)がいたのだ



 




恭弥(5)が現れたことでランボとイーピンは部屋から逃げ去っていた

リボーンは今朝からどこかへ出かけているので居ない

部屋には二人だけだ


「えーと…恭弥(5)くん、でいいのかな?」

「そうだけど…なんでぼくのことしってるの」


何故だろう、現在の恭弥と変わらないその口調にいつものように恭弥と話しているような感覚だ

だが、目の前に居るのは10年前の恭弥(5)

どうしようかと思いあぐねていると恭弥(5)が一言


「なに、ぼくはゆうかいでもされたの?」

「違うよ!!あの、信じてもらえないかもしれないけどここは君が居たところから10年後の世界なんだ」

「…なにそれ」

「なんていったら良いのかな…この10年バズーカって奴で10年後の君と君が入れ替わっちゃったの」


そういってランボが置いていった10年バズーカを見せる

これで信じてもらえないことは明らかなので綱吉は必死で説明を考えている

しかし、それは取り越し苦労だったようだ


「ふぅん…まぁしんじてあげるよ」

「ホントに…?」

「なんか、あなたがあまりにもひっしだから…」

「ありがとう…っ」


思わず恭弥(5)を抱きしめる

それに驚いたのか恭弥(5)は硬直


「あ、ごめんつい癖で」

「くせ?」

「あぁなんでもないよ!」


嬉しいと恭弥に抱きつく癖がある綱吉は慌てて離れる

しかし恭弥(5)は綱吉の膝の上から離れようとしない


「恭弥(5)くん…?」

「あなた、きれいだね」

「え?」


上目遣いに綱吉を覗き込んでくる恭弥(5)綱吉は一瞬硬直する

いきなり何を言い出すのかと驚く


「ねぇもしかして僕があなたの運命の人じゃない?」

「え――――…」


その科白、どこかで…


  


「なんでおにーちゃん、おれのなまえしってるの?」

「…なんでだか、わかる?」

「わからないからきいてるのー」


確かにそういわれればそうなので恭弥はつい苦笑する

綱吉(4)の目線にあわせてしゃがみこんだ


「僕が君の運命の人、だからだよ」

「?」

「君が大きくなったらわかるよ、僕は君を守る…これからずっと、ね」

「おにーちゃんは…?」

「じゃぁね」


そういい残すと恭弥は歩いていってしまった

綱吉から聞いている時間は5分

そろそろその時刻になろうとしている

もと居た場所にもどるとすぐに煙に包まれた

 


「―――…ただいま、綱吉」

「…おかえり、なさぃ」


先ほどまで恭弥(5)がいた場所に現れた恭弥

もちろん、綱吉の膝の上だ

そこから降りると綱吉を抱きしめる


「…俺、思い出しました」

「へぇ…奇遇だね、僕もだよ」


二人が出逢ったのは、お互い存在すらも知らない小さなときのこと

それは気がつけばいつの間にか忘れてしまうほどの小さな記憶

でも、それはいわば予言


「あの時、入学式のときに俺たちが出逢えたのって…運命、ですよね?」

「クス…そうだね、そうとも言えるね」

「恭弥さん、実は覚えてたとかないですよね」

「まさか、子供の頃のことなんて覚えてる訳ないでしょ…お互い名前も聞かなかったし」

「あ…」


確かにその通りで、綱吉は複雑そうな表情をする

百面相する綱吉に思わず微笑んでキスを落とす


「もー…」

「綱吉って小さい頃から綱吉って感じだったよ」

「あ、それ解ります、恭弥さんも恭弥さんって感じがしました」

「なにそれ…」

「恭弥さんはどんなときでも恭弥さんだってことですよ」


なんとなく解ったようなわからないような

恭弥を息を吐くと綱吉を解放する


「じゃぁ綱吉、今日はどうしようか?」

「あ、話そらしましたね」

「いいから、今は僕との時間を大切にしてよ」


小さい頃の些細な記憶よりも今を大切に

でも、その小さな記憶も大切なものには違いないと綱吉は大切にその記憶を閉まっておいたのだった




...fin



 
あとがけ

なんかもうこんな出逢いかたも良いかなって思って書いたらしい
フォルダ整理してたら発掘した一品でした