『うわぁー…っ』
俺は昔からダメツナで
いつも泣いてばかりいて、ずっと独りで淋しくて
『また、ないてるの…?』
でも、そんな俺に優しくしてくれた人がいたんだ
その人の名前とか、どこの誰なのかとか、今でも解らないけれど…
俺にとってそれはかけがえのない大切な思い出の一つになっていたんだ
=== 遙 === 綱吉said. ===
「ふぅん…」
「その時のその人に今逢えたら、御礼を言いたいなぁって未だに思うんですよねぇ」
学校帰りの夕焼け空
煌々と最後の光を地上に照らすその太陽はゆっくりと沈んでいく
二人の影はどこまでも伸びていく
「あぁそうそう、この公園でよく転んだりしてたんです」
家に程近い小さな公園
まだ遊び足りないのか子供達が母親の言葉を無視して砂を掘る
「昔からドジだったんだね、綱吉」
「ゔ…」
今でもその性格は変わらない
ドジで、なにもないとろこで転んでしまうようなほほえましいけれど情けないその癖
でも、あの頃とは違って隣には恭弥がいる
『だいじょうぶだよ、ほらたって』
『う…っヒック』
『…ほら、バイキンが はいったら あぶないよ』
『ぅ…ん、ヒック』
『なかないの、おとこのこは つよくなくちゃ いけないんだよ』
『-――うん…っ!!』
「あの人はいつも俺のこと、助けてくれたんですけど…いつの間にかいなくなってたんですよね」
「……」
ある日を境に、その公園に現れなくなったその子には、二度とここで出逢うことはなかった
転んでもその人は来てくれなくて、それがなんだか悲しくて、泣いた
泣いて泣いて、気付いたときそこにはもう誰もいなくて
それが虚しくて--―泣いた…
「ちょっとした、心の支えだったんだと思います…」
「…そう」
「でも、今は違いますよっ!恭弥さんがいてくれますから!」
あの頃とは違う
もう自分には大切な人がいる
いつも守ってくれて、申し訳ないと思うけれど嬉しくて
彼方の隣にいられることがこんなにも幸せ
「……大丈夫」
「恭弥さん…?」
「君は…ずっと僕が守るよ」
「……?」
そう言って綱吉の頭を撫でる
表情は見えないけれど、声がとても優しくて切ない
「さぁ帰ろうか、綱吉」
「…はいっ」
いつの間にか最後の光を放っていた太陽は姿を消して月が二人を照らす
砂場には小さな穴がぽっかりと開いていた
子供達の忘れ物か、シャベルが一本堕ちていた
二人はそれを一瞥して再び帰路へとついた
...fin
あとがき
元拍手でしたぁ
少し長い間おいてた希ガス…
ここまで読んでいただきありがとうございましたvv