昔話を始めましょう


昔々、天帝には機織りの上手な娘がおりました

名は織姫

この娘が大層働き者でした

もう一人、夏彦星という一人大層な働き者がおりました

天帝は二人の結婚を許しました

めでたく夫婦となった二人は夫婦生活が楽しくて仕方がなくなってしまいました

織姫は機織りをしなくなり、また彦星も牛を追うことをやめてしまいました

このことに怒った天帝は二人を引き離し間に川を隔てました

これが天の川です

そして年に一度、七月七日の日にだけ逢うことを許したのだといいます

大雨が降って川が増水し渡れない時は二人を哀んだ無数のカササギが自分の身体で橋を作ったといいます




そんな7月7日を目前に…


「あの恭弥さん」

「…なに?」

「明日の夕方、暇ですか?」


上目遣いに訊ねてきた綱吉に、暇ではないとは言えなかった






=== 星に願いを 彼方に幸福を ===





  




別れ際に交わした約束

珍しい綱吉のからの誘いに恭弥が驚くのは必須

私服に身を包んで愛車に跨ると沢田家へと向かう

時刻は午後6時


「あら、いらっしゃい恭弥くん」

「こんばんわ、奈々さん」


恭弥を出迎えたのは綱吉の母、沢田奈々

来ることを知っていたのかすぐに中へ入れてくれた


「つーくん!恭弥くんきたわよぉ」

「うわぁ!!ちょっと待っててください!!」


二階から聞こえた綱吉の声に奈々と恭弥は顔を見合させて苦笑を漏らす


「ごめんねぇ、もう少し待ってあげて?」

「いつものことですから」


慣れてしまったこの状況

半ば呆れつつもそこらへんが可愛いと思うから重症だ


「もう少し時間かかると思うから上がって行って?」

「……それじゃぁ、お邪魔します」


素直に靴を脱ぐとダイニングに通される

そこにいたのはエスプレッソ片手にのんびりとしている赤ん坊・リボーンの姿があった


「おめぇも飽きねぇなぁ」

「今日は綱吉からの誘いだよ」

「ま、俺としてはツナにやる気がでれば好都合だしな
織姫の父親みたいに二人を離すようなことはしないぞ」

「…そうしてくれるとありがたいね」


きっと一年もの間逢えないとなると生きていけないだろう

綱吉には恭弥が栄養源なように恭弥には綱吉が栄養源となっているのだ

その時大慌てで階段を降りて来る綱吉

転げ落ちないか心配だが今日は大丈夫らしい


「お待たせしました、恭弥さん」

「そんなに待ってないけどね」

「恭弥くんは優しいわねぇーvよかったわね、素敵な彼氏がいてvV」

「か、母さん…っ///」


自分の息子に彼氏がいることに疑問を持たないのかと思わず考えてしまう恭弥だ

それにリボーンも呆れたそうな表情になる

まぁそこらへんはさすが奈々とでも言うべきか至って本人は本気だ

許されない恋だと知っていて、かつ、許してもらっている

だからこそ手放したくない


「それじゃぁ行こうか、綱吉」

「はい」

「いってらっしゃーい、気をつけてね二人とも」


あたりが暗くなくなりつつある中

二人はバイクに跨って、沢田家を後にした




  






「う、わ…ぁ」

「…これは、すごいね」


大空を見上げて感嘆の声

並盛にある小さな山、その頂上

そこには一面に広がった星屑

俗に言う天の川が二人の真上に広がっていた


「こんなに星が見えるところがまだあったんですね」

「…そうだね」

「あれがベガですか?」

「そうなんじゃない?僕そんなに星には詳しくないよ」

「…何でも知ってそうですけどね」

「それは褒めてるのかい?」

「はい」


優しく微笑んで綱吉は言う

その笑顔を見てるだけでなんでも許せてしまう自分がどれだけ綱吉にほれているのかがわかる

甘やかす気はないが、ついついいうことを利いてしまうのだ


「そういえば綱吉、短冊に願い事とか書いたのかい?」

「い、一応…」

「なんて書いたの」

「ね、願い事は人に言うとかないませんよっ」

「…まぁ、それもそうだね」


ボンゴレはこういう行事にうるさい

たしか去年も七夕に何かをやらされた記憶がある

綱吉にはしかし苦い思い出でもあるのだが…


「……でも、織姫と彦星は一年に一度しか逢えないんですよね」

「うん…?」

「そんなのいやだなぁって思うはずなのに、その日を思って一生懸命生きるのって凄いって思うんです」

「……うん、でも二人にはそれが幸せなんじゃないかな」

「え…」

「だってさ、仕事もせずに楽して暮らしてたらすぐに飽きちゃうと思わない?」

「ぁ…」

「だからさ、毎日を一生懸命生きて、それで一年に一度、必ず逢える日があるって素晴らしいことだと思うよ」


世の中には、逢いたくても逢えない人がたくさんいる

何年何十年に一度しか逢えないかもしれない

それを思うと、織姫と彦星はどれほど幸せだろうか


「それに、父親に反対される事だってあるでしょ」

「…そう考えると、ちゃんと認められてる二人は幸せ、ですよね」

「僕らもね」

「え…?」

「さっき赤ん坊が僕と綱吉を引き離す気はないって言ってからね」

「リボーンが…っ?」


まさかあのリボーンがそんなことを言うなんて想いもしなかった

あの家庭教師なら10代目になるために邪魔なものはすべて排除しそうだから…


「僕は、綱吉の成長に欠かせない人間なのかもね」

「…そうだと、嬉しいです」


ずっと一緒にいることが出来るのは、嬉しい

短冊に書いた願い事はすでに叶っているのかもしれない




  




彼方と、いつまでも一緒にいられますよう…

ずっとずっと、彼方が幸せでありますよう…



願いを、こめて―――…




   

...fin








あとがき

七夕ーということでヒバツナの七夕
テスト中に書いてたものにちょいと手を加えたものだったり←

ホント、テスト中に何やってんねん自分 orz

でもこれ書けてよかった気がします
ここまで読んでくださってありがとうございましたぁ