―――大丈夫だよって、行って欲しかっただけかもしれない


それはまだ、始まりの物語



=== A story of an beginning ===




「他愛もない…この程度でこの僕に刃向かうなんて数億年早いよ」


そこは校舎裏

満開の桜がフェンス向こうの道路一杯に花弁をを散らしている

校舎裏には1本の桜がある

その下に佇む一人の少年

足元には転がる無数の屍

否、事実死んではいない

死んだように動かないといったほうが正しいのか

少年の手には血の染まり鈍く光るトンファー

未だ呻くここの――並盛中学校の制服に身を包んだ少年達


「まだ息があったんだ」


その頭を無造作に蹴り飛ばす

少年の着ているものは学ラン

ここ、並盛中の初期の制服を肩から羽織っている

左の袖には『風紀』と書かれた腕章

これをみれば彼が風紀委員であることは一目瞭然だ

しかし、まるでその姿修羅の如く

白いはずのワイシャツに飛び散る返り血

この人のどこが風紀委員なのだろう


そこに一人の少年が現れた


「うわぁー迷っちゃったよぉ…ここどこだろ」

「……?」

「え―――…」


その時一陣の風が吹き抜け桜の花弁を散らした


「あ…」


桜の木の下に佇むその少年をみて思わず、息を呑む

そうその姿はあまりにも…


「綺麗…」


美しかった



  






「どうしたの、君…」

「え、あ、あの!今日から一年生になる沢田綱吉です!!」

「は…、あぁうん…僕は雲雀恭弥…って、もう入学式始まるんじゃない?」

「ちょっと…迷っちゃって、あはは」


学ランの生徒は雲雀恭弥

もう一人の少年は沢田綱吉

これが二人の初めての会話だった


「で」

「へ…」

「君、僕のこと知らないわけ」

「え…あぁ、はい…新入生ですし」


なにを当たり前なことをとでも言いたそうな顔で綱吉が首を傾げた

それに少し驚いたような表情をする恭弥


「へぇ…なるほどね、どうりで」


そう言ってトンファーについた血を一振りして払う

そこでやっと綱吉は桜の木の下にある屍の山に気付く


「…それ全部ヒバリさんが?」

「そうだよ、僕は風紀委員だからね 風紀を乱すものは何人たりとも許すことはない」

「すごいですねぇ」


感心しているとでも言いたそうに綱吉は瞳を輝かせる

それに虚をつかれて目を見開く


「君…怖くないの?」

「何がですか?」

「僕のこと…怖くないのかって聞いてるんだけど」

「ヒバリさんが、ですか…?」


それ以外に何があるのか

恭弥は一瞬この少年にはそういう感情が欠落しているのではないかとすら感じでしまった

しかしそんなことはないようだ


「確かに、そんなにたくさんの人を一人でやっつけられるのは凄いと思いますけど…」


言いよどむ綱吉


「ヒバリさんは悪い人に見えないですから、大丈夫ですよ」

「―――…」


素直に驚く

なんなんだこの少年は

一体なにをみてそう言いきれるのか不思議だった

こんな、どこにでも居るような平凡な少年が―――…


平凡…?


そんな、言葉では言いきれないような何かがこの沢田綱吉という少年には宿っているのかもしれない

どうしてそんなこと思うのかは正直解らなかったが…

何故、そんなに綺麗に笑うのか

何故、こんなに惹かれるのか

何故、欲しい言葉を…言ってくれるのか


「ク…クスクス…」

「ヒバリさん?」

「君、いいね…クスクス」

「―――…///」


思わず言葉を失う

それほどまでに美しい

これはきっと心からの笑顔

こんなに美しい笑みを綱吉は見たことがなかった


「クス…あぁ、もうこんな時間だ…入学式、始まるよ?」

「ぅえっ?!ま、マジですか?!」

「うん」

「えぇ〜ど、どうしましょう!!」


慌てる綱吉に恭弥は一つ微笑む

トン、といつの間にか目の前にいた恭弥に目を見開く


「おいで、連れて行ってあげるよ」


手を差し出されてそんなことを言われた

迷うことなく、その手をとった

思えばあの手をとったその瞬間から運命の歯車は回り始めていたのかもしれない

ゆっくりとその物語は時を刻み始める


「ありがとうございます、ヒバリさん」

「クス…これからよろしくね沢田」

「――…はい!!」


きっとあのときから恋に落ちていたのだろう

それはまだ始まりの物語に過ぎないのだが…






...fin


 


あとがき

そんなわけで、初めての出逢いヒバツナ!!!!
書くのが遅いよ!
二人の出逢い設定はもう始めからできてたのに小説として書いていなかったことに驚く
きっとそのときの気分でこの物語は大きく違うのでしょうが、今の心境ではこんな感じです
もしかしたら他の出逢いバージョンも書くかもです
あぁでも入学式桜の木の下でっていうのは変わらないから…
たぶんこんな感じです!
文才がなさ過ぎるのでもうなきたいです

ここまで読んで下さり本当にありがとうござます!
このあとにおまけをw



 










「―――…」

「あ、おはようございます恭弥さん」

「……おはよう、綱吉」


そこは二人が始めて出逢ったあの桜の下

今はすでに葉桜となっているその桜の木はもうすぐ夏を迎えるこの時期の太陽に燦燦と照らされている

夏を感じさせる風に誘われてこの場所に足を進めたのは数時間前のこと

絶好の昼寝スポットのひとつであるこの場所にははじめ恭弥しか居なかったはずなのだが


「いつ、きたの」

「ほんの1時間くらい前です 恭弥さん探してたら風が吹いてここに導いてくれた気がしたんですけど…」


膝枕をしてずっとここに居てくれたのだろう

東に傾いていた太陽はすでにとても高い位置にあった


「あぁ、僕もなんか…ここに呼ばれた気がしたよ おかげで懐かしい夢を見た」


そう、あれが始まりだった


「懐かしい夢、ですか?」

「うん…」


君があの時迷子になっていなかったら

君があの時あの場所に来ていなかったら

きっと今の僕はどこにも居なかったに違いない


「綱吉」

「はい?」

「愛してるよ」

「―――はい、俺も愛してます」


この関係が永遠であると願う

いつまでもこのまま二人で―――


それはまだ、ほんの始まりにすぎない物語