「恭弥さぁんvvv」

「……酔ってるの?綱吉」

「酔ってなんかいませんよぉ〜」


わずかに紅潮した頬

肌蹴たシャツ

そして手には酒のビン

誰がどう見ても酔ってるとしか言いようのない光景に恭弥はこめかみを抑えたい衝動に駆られた

後ろには綱吉と一緒に飲んでいたと思われるキャバッローネファミリーボス・ディーノの姿

今日は両ボスの会席だったのだ

店の周りと内部には守護者やロマーリオ他側近等が警護に当たっていた

そろそろ時間だと想い恭弥が迎えに来て見ればこの様だ


「悪ぃな恭弥、ツナの奴こんなに酒弱かったなんて知らなくてよ…」


綱吉はあまり飲まない質なのでこんなに酔っているのを見るのは恭弥でも初めてだ

呆れ半分に恭弥は綱吉の手を引いて抱き寄せる


「おーおー様になってるなぁ彼氏さん」

「うるさい、それじゃぁ僕たちは帰るから」

「おー、ツナを取って悪かったな、恭弥」


元家庭教師と生徒という間柄、ディーノはにかっとした笑みで手を振る

それにイラっとしてさっさとその場を後にする


「おー怖、恭弥はかわんねぇなぁ」

「ボス、俺らもそろそろ」

「そーだな〜」


こうして会席は終了し、綱吉は恭弥に支えられてアジトに戻った

まっすぐに自室に向かい座らせる


「きょーやさぁん」

「ちょっと待ってて、今水持ってくるから」


そういって綱吉から離れて水を用意しようと歩き出すが、ぎゅっと袖を掴まれる


「置いてかないでくらさいおー…」

「大丈夫だよ、水をとりに行くだけだから…」

「やぁー」

「………」


こうなってしまっては手のつけようがないのは長年の経験から知っている

恭弥は呆れ半分に息を吐くと綱吉に目線を合わせた


「それじゃぁシャワーでも浴びてくる?」

「んー…」


首を横に振ってからぽすっと恭弥の胸板に倒れこむ

それを受け止めて背中に腕を回すと頭を撫でる


「きょーやさぁん…」


まるで猫のように顔をすり付けてくる綱吉に「何?」と一言問い返す


「――…抱いて?」

「――――――…なっ」

「最近全然シてないれすよぉー仕事ばっかりれ一緒にいる時間もなくて…俺すごぉく寂しいですぅ」


確かに最近は仕事仕事で二人だけの時間がまったくと言って良いほどなかった

だからといって酔っている綱吉を襲うのも気がひける


「恭弥ぁ〜」

「―――…っ!!」


普段はそういう風に呼んでくれないのに、こういうときに限って!!

紅潮した肌 肌蹴たシャツ 上目遣いに極めつけは涙に潤んだ瞳

恭弥のなけなしの理性はもろくも崩れ去った










翌日


「…っん?」


先に目を覚ましたのは綱吉

とても暖かい何かに包まれている

視線を上げれば想い人のキレイな寝顔


――あぁ恭弥さん…睫長いなぁ…綺麗な寝顔…
   肌もこんなに白くてきれ……ぃ?

   肌……?


「みぎゃぁぁぁぁ!!!」


目の前にあったのは恭弥の胸板

それに気付いた綱吉は大声を出して上半身を起こし飛びのこうとした

その大声に恭弥は驚いて起きる

上半身を起こすと隣で眠っていたはずの綱吉が上半身を折り曲げて頭を抱えている姿を見つけた


「……大丈夫?綱吉」

「頭が、割れ……」


自分が二日酔いだということを知るよしもなく大声を出してしまった綱吉はこめかみを押さえて悶えていた

それに嘆息して一言


「まったく、強くもないのにあんなに飲むから…」

「す、みませ…」

「ちょっと待ってて、二日酔いの薬、持ってくるから」

「あ、それくらい自分、で―――っつぅ…」


ベッドから降りて立ち上がろうとするも、腰に走った激痛によりへたり込んでしまう

この腰の痛みが何を指すのか良く知っている綱吉は血の気が引いていくのを感じながら恭弥に向く治った


「あ、の……恭弥さん?」

「覚えてないの?…まぁそれもそうだね…君、昨日帰ってくるなり僕のこと誘ってきたんだよ」

「な…っ///」


驚愕の事実に綱吉は顔を真っ赤に染め上げる

恭弥はそれに苦笑しつつも意地悪な笑みを浮かべて続ける


「まったく、なけなしの理性を吹っ飛ばすようなセリフ言ってくるし、一回だけならって思って始めたのに
綱吉が何回もねだってくるし、あげく、もう寝ようと思って横になれば僕の弄って―――」

「わーわーわー―〜〜〜〜〜っぅ」


またも二日酔いのことなど忘れて大声を出してしまい身悶える

それに苦笑して綱吉に二日酔いの薬を手渡す


「これからお酒は控えめに、ね」

「ご、ご迷惑おかけしました…」

「まぁ、僕としては珍しい綱吉をたくさん見ることができて満足だけど」

「今すぐ忘れてください…」


恥ずかしさで顔を上げられずにいる綱吉に恭弥は微笑む


「でも、ま…酔ったときでもないとあぁは言ってくれないからね」

「な、なにがですかっ?」

「秘密」

「きょ、恭弥さぁん」


たとえ酔った勢いだったとしても、僕のこと「恭弥」って呼んでくれたのはすごく嬉しかったよ、綱吉







あとがけ

あれれ、ハッピーエンド??