――…放したくない、君を…ずっと……


===放さない===


「好きっていうまで放さない」

「え…」


またいつものように恭弥に後ろから抱きすくめられている綱吉

いつもはなにも言わずに抱き締めて放れていくその行為だが…今日はいつもと違っていた


「言って…くれないの?」


泣きそうな声でそう呟かれて…綱吉は思案する


「……じゃぁ…言いません」

「――…っ」


それは拒絶の言葉なのか…それとも……


「…なん、で?」

「だって、言わなければ…ずっとヒバリさんと、こうしていられるってことでしょう?」

「…ぁ………」


驚く

まさか、こう返されるなんて、考えてもいなかったから…


「綱吉……」

「だからそんなに…泣きそうな声、しないで下さいよ…俺は恭弥さんが好きだから放れたくないんです」


―――…今はまだこの腕の中に…

「綱吉…」

「俺はずっとずっといつまでも恭弥さんの腕の中に居たいって思ってるんですよ?」


いつもはなにも言わないけれど…

放れていくその腕が名残惜しくてしかたがなかった

放して欲しくなかった

だから…


「放さないで下さい」


わがままだ

これはただのわがまま

でも、恭弥が綱吉のわがままを拒絶することは決してないと知っているから…


「うん……放さないよ、いつまでも……僕の綱吉」

「…っ」


不意に首筋に痛みが走った

恭弥が綱吉に咬みついたのだ


「きょ…恭弥さん?」

「消えたらまたつけてあげる…綱吉は僕のだっていうことを証明するしるし」


いつかは消えてしまうけれど…そのときはまたつければいい

そうすれば…いつまでも君は僕のものだから…


「…お…俺も…つけちゃダメですか?恭弥さんに…」


虚をつかれた恭弥はその台詞に目を見開く

綱吉がどんな表情をしているのか分からないけれど、きっと赤くなっているのだろう


「…つけてくれるの?」

「ぅ…ぁ……はい」


恥ずかしそうに頷く

そんなとろこが可愛いと思う


「こっち向いて、綱吉」


一度腕の力を緩める

しかし緩めただけで放す気はない

綱吉は身体を恭弥に向ける

ぎゅっと抱き付いて肩口に顔を埋める

チリっと、痛みが走る

でもこれは所有印

痛みなんかどうでもいい

残るのは至福の時


「放さないよ…綱吉」


君をどこまで逝ってもずっと―――…


「どこまでだって、ついて逝きますよ…恭弥さん」


約束を交した

決して放れることはないのだと…

放れることはありえないのだと――…