逢いたいな…

 
  無性に…そう、思う








  === 想いはいつも彼方のために === 恭弥said. ===







 
  「後3分で応接室に来て」

  『え?』



  困ったような、君の声



  『今から、ですか?』



  当然の反応だろう

  だって、今は授業中だ
  
  電話をかけたのは、つい3分程前の話


    
  「……」



  三回ほどコールしても君が出ないから、少し苛立ちがでてきた

  僕からの電話なんだから、ワンコールで出なよね  




  『もしもし?』




  プツっとコールが途切れたのは5回目のこと




  「遅いよ」

  『今、授業中ですよ?』

  「それでも、すぐにとりなよね」



  
  このケータイは、僕専用なんだから

  音が鳴れば、僕だってすぐにわかるでしょう?


 
  『どうかしたんですか?』  

  「後3分で応接室に来て」

  『え?…今から、ですか』



  解っていて、その反応

  でもこれは、いつもと同じ会話



  『…』




  おそらく、教師にでも何か言いたそうな目でもしているんだろう

  そんなことしなくても、僕に逆らう奴がどうなるかわかっているのにね…


  
  『じゃぁ、すぐに行きますから、待っててくださいね』

  「荷物も持ってきなよね」

  『…了解です』



  僕がすぐに君を返すはずが無い

  会話が終了したので、通話を切る

  あの子は、3分といったらきちんと3分できてくれる

  本当に…そういうところが可愛いよね



  「失礼します…」




  ノックもしないで扉は開く

  僕が行ったことを実践してくれている証拠

  君が特別な子なんだって言う、何よりの証拠

  二人だけしかしらない…唯一の…


 
  「ぅっぷ…?」



  入ってきた綱吉を受け止めて、扉を閉める

  僕よりも一回りも二周りも小さい君は、腕の中ニすっぽりと収まる


  
  「……ヒバリ、さん?」



  2年A組 沢田綱吉

  僕の、一番大切な子… 

  抱きしめていると壊れそうなほど…細い



  「…どうか、したんですか…?」

  「…別に」


 
  それなのに、いつも僕を気遣ってくれる

  だから、癒される

  でも、いつもと何か違う…

 

  「綱吉…シャンプー変えたの?」

  「え…?」


  
  そうだ、いつもと違うのはこの香り…

  でもこれは…


  
  
  「よく、分かりましたね」
 
  「いつもと香りが違うからね…」



  ―――僕の好きな匂いだ



  呟いて、もっと強く抱きしめる

  強く、優しく…壊れてしまわないように
  


  「ヒバリさんて、動物に例えたら黒猫ですね」



  突然の、言葉

  何故そこにたどり着いたのかは、解らないけれど  
  


  「…綱吉は、ウサギみたいだよね」

  「えぇ?」


  
  クスクスと笑う君

  うさぎ…か

  確かうさぎは…



  「それで…今日は何か御用ですか?ヒバリさん」

  「あぁ…これをね―――」




  寂しいと、死んでしまうんだったね…

  それじゃぁ、寂しく無いように…ずっと僕が傍にいる…

  いつもと同じだけど、今日からは少し違うよ

  寂しい思いなんて、絶対にさせないから――――…