また明日 また明日

聞こえてくるのは約束を紡ぐ別れの言葉

明日にまた逢えると、信じて疑わない言葉

それは知らず知らずのうちに結ばれる小さな約束

今日もまた、その言葉を呟く


「それじゃぁまた明日ね〜」

「おぉ…、気をつけて帰れよ」

「うんっ、シズもね!」


大好きな彼、平和島静雄との分かれ道

帰る方向の違う私たち

いつも送ってくれようとするけれど

私はそれをやんわりと断る

嬉しくない訳じゃない

むしろ嬉しい、もっと一緒にいたい

でも、迷惑はかけたくない

きっと彼は、迷惑だなんて思ってないだろうけれど…

それでも私は、今日も笑顔で手を振った

優しく微笑んで手を振り替えしてくれる彼を、心の底から愛してる


「まーったく、どーしてシズちゃんなのかな〜?」

「なぁに臨也、またそんなとこに隠れてたの?」


彼と分かれて角を曲がる

もう彼の背中は見えないところで、臨也が不満そうな顔で待っていた

送ってもらいたいけど、できない理由のひとつ


「気付かれたらゆかこと帰ること出来なくなるからさぁ〜」

「家が近所だからって、毎日一緒に帰ることないと思うけど…?」


臨也とは幼馴染

小学校から一緒で、その後中学、高校と同じになるなんて思ってもなかったけれど

それなりに仲は良いと思う

少なくとも、彼と臨也ほど嫌い合ってはいない


「ゆかこさ、シズちゃんの彼女やってるんだから、それなりに狙われやすい立場にいるって自覚あるわけ?」

「大丈夫大丈夫、何かあってもシズが助けに来てくれるもん」

「ハハッなにその自信!どっからそんな自信が出てくるのかこっちが聞きたいよ」

「それだけ愛し合ってるってことでーす」


へらへらと笑っている自分の顔は、きっとすごく緩んでいることだろう

盛大に惚気てやれば、臨也は嫌そうに顔を顰めている

臨也がどれだけ彼を嫌っているのか知っているから、私は大げさに肩を竦めて息を吐く


「どーしてそんなにシズのこと嫌うのかなー?私には一生理解できそうに無いよ…」

「なんでそんなにシズちゃんなんか愛せるのかなー?オレには一生理解できそうに無いよ」

「わかんなくたって良いよー私だけシズの良いトコ知ってていれば充分だって、シズが言ってたもん」

「うげぇ、いい加減惚気るのやめてくれる?」

「はいはいわかりましたよー、っと…そうだ!私買い物して帰らなきゃだからここで!」


そうだ、帰りに牛乳買ってきてってお母さんに言われてたんだっけ

うっかりうっかり、忘れるとこだった

そう言いながら笑うと、臨也が繭を顰める

なんだ、そんなに一緒に帰りかたっかのか?


「一人で行く気?オレおいて?」

「別に一人で行けるし?臨也だって一人で帰れるでしょ?別に一緒に帰る必要だって無いんだし」


たとえ幼馴染であったとしても、高校生にもなって一緒に帰らなきゃいけない理由なんて無い

別段危ないところへ行くわけでもないし、通いなれた道だし…


「ちゃんとあれ、持ってる?」

「あれ?…あー、うんうん、臨也くんオリジナル熊も一殺☆改造スタンガンでしょ?」

「何それ相変わらずゆかこはセンスのかけらもないよねー?」

「一言で言ったらそんな感じでしょ?全く臨也は昔から心配症なんだからー」


カラカラと笑うと、視線をそらして右下に売る向いたかと思うと思い切り溜息を吐かれた

訳が分からなくて首を傾げてみると、不意に臨也がこっちを見た


「いい加減さーオレの気持ちに気付いてくれてもいいと思うんだよねー」

「臨也の気持ち?人、ラブ!ってことじゃなく?」

「うーん…それもあるけど―――…」

「へ…、」

「こういうことも、気付いてくれない?」

「…っ?」


突然、臨也の顔が近づいてきて、軽くだけれど触れるだけのキスをされた

いきなりの行動にびっくりした私がその場に凍りついたかのように固まってしまった

私の反応を見て臨也が面白そうにクツクツと喉の奥で笑っている


「くく…変な顔」

「っっ〜もー…嫌がらせとか趣味悪〜い」

「―――…、」

「いくらシズが嫌いだからって、嫌がらせの対象に私まで含めないでよね…あ、だからってシズにちょっかい出すのもやめてよね」

「―――、っ」

「臨也…?」


目を見開いて、瞬きすることなく目を泳がせている臨也に首を傾げる

すぐに視線をそらされて、軽くうつむき加減になった臨也は、小さく笑いながら答えた


「……ハハッ、ヤーダよ」

「ちょ、…」

「じゃぁね、ゆかこ…また明日〜!」

「臨也っ……もー」


後ろ手に手を振りながら逃げるように早足に去っていく臨也の背中を見送る

嘆息すると、気持ちを切り替えてスーパーへ向かう

また明日、きっと私は彼の送っていくという言葉を断って臨也と帰るかもしれない

でも本当に明日がそうなるとは限らないけど…


「たまには、甘えてみようかなー」


そうすればきっと、臨也と一緒に帰ることは無いだろうし

あんな嫌がらせもしてこないだろう、うん

そう思いながら、池袋へ一歩足を踏み出した





「ハハ、ゆかこのあの顔…面白かったな〜」


驚いて、固まって、オレの方だけを見ている

でも、なにか違った


―――いくらシズが嫌いだからって、嫌がらせの対象に私まで含めないでよね…


イヤガラセ?

そうだ、あれはシズちゃんへのイヤガラセ

別に特別ゆかこが好きだとか、そんなこと思ってない

だってオレは、人が好きだ

ゆかこもそのうちの一人

なのに…


――あれ、今オレ…


傷つい、た…?




―――  ど う し て こ ん な に 胸 が 苦 し ん だ ろ う …




気付いてしまえば、後の祭り




fin...




≫≫あとがけ≪≪

久しぶりに書いた文章!
まさかのDRRR!まさかのシズちゃん彼女設定なのに臨也しか出てない!
本当にこいつうざいな!←褒めてる
初DRRR!なので臨也の口調ってこんなんだっけかと詐欺疑惑浮上中

でも負けない!
頑張ってまだまだ書きたい文章いっぱいあるので頑張ります^^
ではではーw

2010.07.01.
倉紗仁望 拝