「そんでね!トド松がいっしょに買い物行ってくれた!」
「トド松?」
「俺のおとーと!」
「弟さんがいるんですね」
「うん!あとおそ松兄さんとカラ松兄さん!チョロ松兄さんと一松兄さんも!」
「そ、そんなに?6人兄弟?」
「そう!俺達六つ子なんだ!」
「む、むつご…?!」

今日は面会開始時間に来た!
だからいっぱいいっぱいお話できるね!
人と話すの得意じゃないから、昨日の話をすることにした。
トド松がいっしょにハンカチ買いに行ってくれた!って。
そういえば兄弟のこと話してなかったね!
そこから話さなきゃ!

「みんな同い年でみんな同じ顔してる!あとみんなニート!」
「そ、そうなんだね…」
「あ!でもでも!全然性格とか違うの!俺はこんなんだけど、トド松はバイトしたり女の子と良くデートとかしてる!」

ちょっと待ってね〜って言って持ってきた画用紙を開く。
えんぴつを持って、ちゃんと伝わるように文字にする。
ぼくは伝えるのが下手だから、こうしたら伝わるんじゃない?って昨日一松兄さんがくれたんだ!
百円ショップの少し大きめの画用紙にぐりぐり文字を書いていく。

「あ、俺の名前こう書くんだ〜!よく鳥の十姉妹と間違えられんの!」
「あ、やっぱり…私も十姉妹だと思ってた」
「だよね〜」

初めに書いたのはぼくの名前!
松野十四松!

「五男なのに十四なんだねぇ」
「よく言われる〜」

あとは兄弟の名前を書いていった。
おそ松兄さん、カラ松兄さん、チョロ松兄さん、一松兄さん、トド松。
一松兄さんの横には猫も描いたよ!

「みんな仲良しなの?」
「うん!みんな仲良し!いっつもいっしょ!」
「そうなんだ、羨ましいな」
「なまえちゃんはっ?」
「え?」
「なまえちゃんは兄弟いないのっ?」

聞いて良かったかな?
聞いてから少し後悔した。
ほら、表情が少し曇ったもん。
聞いちゃダメな事だったかな?

「私はひとりっ子だから、兄弟ってとっても羨ましいよ」
「そうなんだ…」

これはよくいろんな人に言われる。
兄弟がたくさんいて羨ましい!って。
なまえちゃんもそんな感じだったから、聞いて大丈夫だったみたい!
良かった〜。

「6人もいると逆に大変だけどね〜〜」
「そうなの?」
「そうだよっ!男ばっかり6人!生活臭も野郎6人分!このパーカーもみんな同じ!色違い!」
「おそろいなんだ、かわいいね」
「成人男性がおそろいの服着てるって痛いけどねぇ〜〜」

ぐりぐりぐりぐり、パーカーの絵を描く。
色鉛筆もあったら良かったかなっ?
ぼくの手元を見てるなまえちゃんが時々首をかしげてる。

「十四松、ケータイ持ってる?」
「ケータイっ?あるよ!ほとんど使ってないけど!」

ぼくの手元をのぞき込んでたなまえちゃんが、少しだけ顔を上げてそんなこと聞いてきた。
上目遣いってやつかなっ?

「なんでっ?」
「お兄さん達の写真とかないのかなーって思って」
「!トド松がいっぱい持ってるかも!」

LINEしてみるね!
そう言ってポケットからあんまり使わないスマホを取り出した。

「いつも忘れそうになるけど、トド松が渡してくれるんだ!」
「良い弟さんだね」
「うんっ」

トド松に、みんなの写真送ってーって連絡した!
友達が見たいって言ってる!って!
すぐに既読つくんだ!
いっつも手に持ってるもんね!

「既読早ッ」
「やるなトッティ!」
「トッティ?」
「トド松のあだ名!バイト先の女の子にそう呼ばれてた!」
「へえぇ…可愛いね」
「うん!俺の弟可愛い!」
「ホントに仲良しなんだねぇ」

そういいながらスマホをのぞき込むなまえちゃんはやっぱりどこか寂しそう。
ひとりっ子ってなったことないから分かんないけど、やっぱり寂しいのかな?
なんて考えてたら写真が送られてきた!
アルバムで!

「お、多いね?」
「いっぱい撮ってるのよく見るよ!」

アルバムをタップして画像を開く。
いろんな写真があったけど、6人みんなが写ってるのを探した。
意外と6人みんなっていうのは難しいみたいで、トド松とツーショットとか、ほかの兄弟のツーショットやスリーショットが多い。

「あ、これ上の兄さん3人〜」
「わっ!ホントにそっくり…」
「でしょでしょー!」

なんたって六つ子だし!
あっ!トド松からメッセージで、友達との写真ヨロシクねって来てる!
なまえちゃんも覗き込んで目に入ったみたいでこっちを見てきた。

「しゃ、写真…」
「1枚お願いしてもいいっスかっ?」
「えっ!あっ!で、でもスッピンだし!入院中動いてないからちょっと太り気味だし…!」
「えー?全然可愛いよー!撮ろー!」
「っ…!!」

真っ赤な顔を隠すように右手をぶんぶん振ってる姿が可愛くて思わず口に出た。
そしたらピタッて動きが止まっちゃった。

「じ…じゃぁ…1枚だけ」
「やったぁー!オナシャス!」

カメラを内側に設定してトド松が良くしてるみたいに自撮りのポーズ。
なまえちゃんも極力隠したいのか顔の前でピースしてる。
真似してぼくも顔の前でピースしてみた。
パシャリと音がして写真をチェック。
なまえちゃんがガン見してる!

「送るね〜!ありがとー!」
「えっ!あっ!」

やっぱり恥ずかしくなっちゃったのかバツ印を押そうとしてたから送信。
すぐに既読がついたけど、しばらくしても返事は来なかった。

「弟さんにブスだと思われたかな」
「そんなこと無いよ!きっと可愛くてびっくりしてるんだと思うよ!」

自信もって!
ニコニコ笑顔でそう伝えると、ありがとう、と小さな声でつぶやいて顔を赤くする。
友達が女の子だってトド松に伝えてなった事をそこで思い出したけど、まぁいっか!




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う、ぅわぁぁぁぁぁぁぁあ!!
五月蝿いよ!トド松!!
じゅ、十四松兄さんンンンン!!!
ええ無視ッ?なんなの?!




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