最後にあったのは約一ヶ月前。連絡して「いつ会える?」と緊張気味に言ってみても、「忙しくて会えそうもない、ごめん」という返答が返ってくるというのが、ここ最近続いていた。

つまり、大きな仕事をしていて忙しかったんだと思った。そんな忙しい彼にわがままなんて言えるような人間じゃないわたしは彼の仕事が一年かかろうと待つつもりで、その後、ゆっくり二人で過ごそうと思っていた。

久しぶりに会った今日、前みたく夜遅くまで街中にいると思っていたわたしは不意に「もう遅いし、帰ろうか」という彼の言葉にかなり驚いた。

「なんか、仕事でもあるの?」

「いや、そんなこたぁーねぇけどよぉ」

いつもだったらあと3時間くらいはいた気がするけど、とは思いつつ、彼もきっと疲れているのだと思いなおす

「もしかして、仕事疲れ?」

「んーだな」

「じゃ、今日は帰ろうか。また、都合があったら連絡してね!」

「おう、じゃな」

いつもと同じような別れかたなのに、なぜか急に不安になる。気のせいだとは思っているけど、隙間にある少しの不安が消えてくれない。

そんな気を紛らわすため、近くのデパートに入って洋服でも見ていくことにした。


いろんなところを見て回っても、不安はなかなか消えなくて、仕方なくカフェに行くことにした。いつまでも回っていても埒があかないことは目に見えている。

行きつけのド○ールでコーヒーでも飲もうと店のドアに手をかけ、入ろうとしたとき、見覚えのある白髪の男性と
見たことのない女性が楽しそうに話しているのが目に入った。

少しだった不安は大きくなっていく

携帯電話のアドレス帳の「サ」行から彼の名前を見つけだして、電話を掛ける。何かの間違いだと思いながら

「もしもし?」

「銀ちゃん?」

「どうした?」

目の前の白髪の男性が携帯を耳にあてていることで、その人が坂田銀時だとわかる

「いま、どこ?」

「えっと・・・家」

家と答えるまでの沈黙それが何を意味しているのか。それぐらい幼稚なわたしだってわかる。

涙が頬を伝う

「オイオイ・・・どうした?」

すすり泣きが携帯電話を通して聞こえたのか、困ったように聞いてくる。

「銀さん、なんかした?」

嘘ついたってバレバレなのに、わたしのことを心配するように聞いてくる

「ばか・・・!」

投げつけるように言い放って、電話切る

それが少しの嘘への対抗だから


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