×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


強く、美しく、おまけに独身。我々CCGの活動を世の中に発信し、好感度を高めるにあたり、これほどの適任が他に居るだろうか。ちなみに、現在のテレビCMにはアカデミー生が切磋琢磨していく様子をシリーズ化して起用している。それ以前にはテレビタレントを利用していたが、胡散臭いと内部の人間からはあまり評判が良くなかった。何よりコストが掛かるので、我々広報課としても有難くなかった。せっかく人員だけは常時確保しているのだから、それを使わない手はないだろう。税金が占める運営資金の割合が小さくない以上、国民感情はとても大事だし…。
「有馬さんの動画をネット配信するのが私の目標なのよね」
キーボードを叩きながら、私が作成する記事に添えるクインケの写真を選んでいる部下に声をかける。真面目な経済誌に掲載されることを考慮して、意図してかたい文面に仕上げていく。
「凄惨過ぎてすぐ規制掛かかりますよ、キジマさんの時みたいに」
キジマさんの時というのは、あの困った捜査官が喰種を拷問する様子を独断で動画サイトにアップロードした件を指す。クリーンかつ市民の皆さんの安全を守るヒーローとしてのCCGのイメージアップを目標に活動を続ける我々にとって、あの事件は最悪を三乗にしてもまだおつりがくるくらいの損失を被った。わかりやすく言い換えると、無関係なのに上層部から滅茶苦茶怒られた。勿論即座に削除という対応をとったが、何も知らなかったにも関わらず、その動画に関する問い合わせや苦情の処理をすべて一任された。事態の収束が先決と、サービス残業は当たり前。電話応対が辛すぎて毎日泣きながら働いていた。流石にあの数日間は喰種よりよっぽど人間が恐かった。
「撮り方次第でアクション映画みたくなると思うのよね、ほら…有馬さん男前じゃん?」
「そういう問題ですか…」
部下は苦笑しているが、私の方は大真面目である。実はもう上層部に掛け合って、許可も貰っている。あとは被写体さえ了承してくれればすぐにでも撮影に取り掛かることができるのだが、肝心の有馬さんが首を縦に振らない。忙しいというのは事実だろうが、方便も多少含まれているのだろう。

有馬さんのハイパークールな映像をCMに使って、悪いイメージを払拭してやろうと心に決めたあの日から、私は有馬班の同行をなるだけ把握し、本人に直談判する機会を逃さないようにしている。
「鈴屋なんかいいんじゃない?」
私に待ち伏せされることにすっかり慣れた有馬さんは、挨拶もなしに唐突に言った。これは昨日の会話の続きである。
「あくまでもCCGのPRなので、可愛い系はなんか違うかなって…」
鈴屋さんの可愛らしい顔立ちを思い出す。女の私より綺麗なのはちょっと…じゃなくて、私たちの求めている白鳩のイメージからかけ離れているような気がする。
「じゃあ、排世はどう?」
「クインクスは世間様への説明が面倒臭いのでなしの方向で」
絵になるという意味では佐々木さんは持ってこいかもしれないが、些か背景事情がややこしい。有馬さんは却下する私を不思議そうに見詰めた。
「それなら…」
「有馬さん!」
まだ続けようとする有馬さんを、失礼にあたると思いながらも遮った。
「私はあなたが良いんです!あなたじゃなきゃダメなんです!」
だから大人しく戦闘シーンを撮らせてくださいと、やや喰い気味に身を乗り出す。有馬さんは何故か、わざわざ膝を折って私と視線を合わせた。
「すごい口説き文句だね」
そう言われて初めて、私は署員たちが出入りする公共のロビーで、ほぼ公開告白のような真似をしてしまったことに気付いたのである。

2016.02.11 ぐみさまへ 糖度低めでスミマセン