第一話


高校1年夏、私は野球部に入部し、毎日夜遅くまで練習があるおかげて家に帰る頃には辺りは真っ暗。あ、もちろんマネージャーだけど。いつも通り練習が終わり、私は片付けてから学校をでた。
夜なのに暑い…。昼間よりかはるかにましだけど暑い。
疲れきった身体をなんとか動かして、あともうすぐで家に着くはずだった。よし、もうちょっと!そう一歩踏み出せば、何故か広がる青い空。……え?目を凝らしても頬を叩いても、広がるのは青い空。キョロキョロと周りを見回すとここが何処かの屋上、たぶん学校の屋上だということが分かった。…………え、なんで?……夢?妙に冷静な自分にビックリしながら考える。白昼夢、だろうか…。夜でも白昼夢って見るの?
その時、声が後ろから聞こえ振り向いた瞬間、首にヒヤリとした感覚。……なに?チラリと視線を向けると自分の首に添えられ銀の、鉄の棒……、

「ねぇ、今何したの?」

ギロリと睨まれる。まるで獣。刺々しいそれに私は何も言えなくなってしまった。口を開こうとしても言葉がでない。スッと細められる目と息苦しいほどの重い空気。蛇に睨まれたの蛙。まさにそれ。目を逸らしたいのに出来ない。なんとか絞り出した声は私のものとは思えないほど掠れていた。

「…あ、あの…こ、こってどこ、ですか?」
「質問の答えになってないよ」
「え、」

そう言われても、何がなんだかわからない。

「もう、いいよ。どうせ不法侵入したんだ…咬み殺す」

―――ガツン

何も理解できないまま私の意識は闇に落ちた。












ズキズキと後頭部に痛みを感じながら私は身体を起こした。病院…?いや、ここはまるで保健室のようだ。先ほどのことを思い出すが、やはり謎だらけだ。分かることなんてもちろん無く、手がかりさえも無い。ただ私は歩いていた。ただそれだけ。…1つ言えるとしたら、夜から昼にいきなり変わり、場所まで違っていたこと。

ガラリと扉が開かれ入ってきたのは先ほどの男の子だった。私より年下なのだろうか。顔つきがどことなく幼い。
「起きてたんだ」と言う彼の手には私の鞄と生徒手帳。…勝手に女子の鞄の中を探るのはどうかと思うけど。ちょっと見られたくないものとかあるんだから!…たぶん!
「ねぇ、君って日本人?」
「…は?…生粋の日本人ですけど」

何を言い出すかと思えば奇想天外な質問だ。私はすこし焦げ茶の髪に黒目といった日本人らしい日本人。…日本人らしい日本人ってなんだ一体。とにかくお母さんもお父さんも生粋の日本人なのだから私だけがまさか外国人な訳がない。

彼の口から発せられた言葉は、今までの出来事をひっくり返すような言葉だった。

「君、“存在”しないよ」


「…え?」
「風紀委員が全力を挙げて調べても、戸籍はおろか君の高校すら存在しない」

―――ねぇ 君はなに?





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -