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標的1







「こんなんじゃ…レギュラー落ちだよ…」
テニスコートにぽつりと佇む。私が無我夢中で打ったテニスボールがそこら中に転がっているのを見てどれほど熱中していたのかがわかった。1年生ながらレギュラーを勝ち取り今ではチームの、並中のホープとまで言われるようになった。そんな私は今までスランプを体験したことがなかった。サーブが入らないなら練習すればすぐ出来るようになった。スマッシュが打てないなら練習すればすぐ出来た。しかし、今は、ボールを打てども打てどもなかなか入らない。…レギュラー落ちだけは絶対に嫌だ。グッとラケットを握る手に力が入る。

「あ、あの〜…」
「っ!?…って沢田…?」

1人考え込んでいたせいか大げさに反応してしまった。そこにいたのはダメツナこと沢田綱吉。最近、めまぐるしい活躍を見せてくれる私の注目株だった。

「ボール落ちてたから…」
「あ!ありがとね!」

(彼に相談してみれば何か答えが見つかるかも…。)

「れ、練習熱心なんだね」
「…それがさー、最近ダメダメなのね…」
「え?」
「打っても入んないし、そもそも集中出来てないし…何か私ってダメだなあって」
「そ、そんなことないよ!山本さんは運動神経抜群だし、俺みたいに何もできない訳じゃないし…俺の方がよっぽどダメダメだよ」

綱吉は内心すごく驚いていた。山本優月は笹川京子と並ぶ学園のアイドルだからだ。いや、優月はアイドルというより憧れの的だ。笹川京子は可愛さで人気だが山本優月は持ち前の運動能力はもちろんその容姿の綺麗さで男女ともに人気があった。

そんな彼女と自分が話している時点で奇跡的なのに、あまつさえ悩み相談らしきものをされるなんて…!彼は半分パニック状態だ。

「アハハ、ツナって面白いなー!あ、ツナって呼んでもいい?私も優月でいいし」
「え!?う、うん!もちろん!」
「あー…どうしようなーツナはどうすればいいと思う?」
「え、と…」

女の子と話したことさえない綱吉は、答えが出なかった。チラリとコートを見回すとそこら中に転がっているボール。

(きっと、優月は…)

「休んだほうがいいんじゃないかな…」
「え?」
「優月は…ちょっと頑張りすぎというか…肩の力抜いてみてもいいんじゃないかな」
「…………」
「あっ!い、いや、俺ってさ何かに熱中したことも努力したこともなくて…優月見てると自分なら多分休んじゃうっていうか」

ツナの答えを聞いてびっくりだ。今まで相談してみた友達は頑張って!としか答えなかった。休んだほうがいいなんて…言われたことがなかった。肩の力を抜く、か。そっか、私、焦りすぎてたのかな。

「俺はたまに休んでみてもいいと思うよ」

そっか、休んだっていーんだ。そっか、そっか。なーんだ。簡単なことだったね。

「さすが私の注目株!」
「ええ!?」
「ツナに赤丸チェックしてたけど、こりゃ華丸だね」
「え?ええ!?」
「ありがとー、ツナ!おかげでスッキリした!」
「!ううん、役に立てたなら光栄だよ」
「アハハ!ツナと友達になれて嬉しい!」
「っ!俺も優月と友達なれて良かったよ!」



女友達第一号
それは山本優月




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