「ねぇ、大丈夫?」

逃げていったのを確認してから池沢くんを見ると口がぽかーんと開いていた。
いつも冷静な彼からは想像できない表情だ。
(レアだ、レア…!!)
すぐに戻ったけど。残念だな。


「なんで助けたりしたの…?」

「なんでって…だって、池沢くんが」

「助けなくていいから」

「え、なんで…?」

「同情なんていらない」


そう言った池沢くんの目は鋭くこちらを睨んでいた。それに戸惑った。


「ど、同情なんかじゃないよ」

「…お礼は言わないから。もうほっといて」


彼はそのままどこかに行ってしまった。なんで、池沢くんは…
ほっといてってそんなの…出来る訳ないよ。だって、



(…………泣きそうな顔してた)



















あぁ、無性に腹が立って仕方がない。一応助けてくれた彼女に冷たく当たってしまったことに少し悪かったなと思うけど…でも、悔しかった。


(―――そっか、だからこんなにムカつのか)


自分に対しての情けなさと女の子なのにあいつらを簡単にやっつけた彼女に対しての嫉妬などいろいろあって、彼女に当たってしまった。
でも、僕に関わって彼女を巻き込みたくないから…濱川に同じ思いをさせたくないし…これでいいんだと自分に言い聞かせた。








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