リーダーの横暴
愛していると言ってくれ
所持金が心もとない。
ギルドの仕事も今はない。
となれば、やることは必然的に決まってくる。
「新術いくわよっ」
「行くぞラピード!」
「いい練習台ね」
つまりは、魔物狩りである。
「よしよし、だいぶ溜まったな」
「当面大丈夫そうだよ。武器の合成しようか」
開いた財布を覗き込んで言うユーリに、満足そうにカロルが返した。
いそいそと重くなった財布を、いくらでも入るカバンにしまい込む。
「そいじゃ町までもう一稼ぎしながら戻るか」
「あ、ユーリ、怪我してますよ」
心配そうなエステルの声に、指差した場所を見れば確かに血が滲んでいた。
別にこんぐらい平気だ、と笑うも、彼女は変わらず心配そうに眉を歪めている。
「次の戦闘に入ったら、おっさんに治してもらうさ」
「せいね〜ん…」
笑うユーリの言葉に、名を出された当の本人は不満そうに声を上げた。
「なんだよ」
「なんだじゃないわよ!そろそろパーティ変更しない?おっさん回復専念するの飽きた」
「飽きたっつわれてもなあ。おっさんが回復してくんないと」
「だーかーら!そもそもなんで嬢ちゃんやフレンちゃん、パティちゃんと少年ですらパーティに入ってないの!」
「別におっさん一人で平気だろ」
「平気だけど!飽きたの!」
地団駄を踏む姿はまるで子供のようだ。
だがその程度でユーリの意思が揺らぐことはなく、ひらひらと手を振ってレイヴンの意見を受け流す。
「いいの?」
さっさと歩き出したユーリに微笑むのはジュディスだ。
何が、ととぼけようとも思うが、無駄なような気がしてとりあえず頷いておく。
その時突如現れた魔物を、ためらいのカケラもなく切り刻みながら、ジュディスは変わらない調子で続けた。
「意外と純情なのねえ」
「は?」
「本人に直接言ってもらえばいいのに」
「…言えるかよ」
後ろからリタの魔法が飛ぶ。
残ったもう一匹に剣を振るいながら、ユーリは言った。
「おっさん!回復!」
「へーへー…わかったわよう」
がくりと肩を落としながらも、了解の返事を返す。
レイヴンが矢を引き絞ると、それはキラキラと癒しの力を纏って飛んだ。
同時に、もはや癖なのだろう彼の声が響く。
「愛してるぜえ!」
言ってくれなんて言えるかよ、とユーリは再度胸中でつぶやいた。
それを聞きたいがためにスタメン指名