text | ナノ

ぎっちりと掴まれた腕を振り払って僕は逃げたかったのだけれど生憎僕はそれほど力のある男ではなかったので僕と違って力があるスノウから逃れるのは到底無理な話だった。離せ、と言わんばかりに(まあ、実際離して欲しいんだけど)僕は掴まれた腕をぐいぐい自分の方に引き寄せる。それでも反動で結局はスノウの方に戻ってしまうのが同じ男として悔しい。スノウは、男の枠を越えているんじゃないだろうか。
「、離してください!」
「じゃあ逃げようとすんなよ!」
冷ややかな目を向けながら溜め息を吐くとスノウは急に焦りだして悪い、と俯いた。何なんだこの大人は。これじゃあまるで僕が悪い事をしたみたいじゃないか。逃げようとしてません。そう言えば腕、振り払おうとしなくたっていいだろ、と少しばかり唇を尖らせて言った。ああもう気持ち悪いなあ。な!と言ったスノウの手を僕はありったけの力でぎっちりと握って握手。逃げてません、これで良いですか。何かもう本当に面倒になってスノウの掌から手を離そうと腕を引くけど僕の腕はびくともしなかった。
「…何ですか」
「手、繋いでてもいいだろ?」
「男二人が手を繋いでるってどんな光景ですか気持ち悪い」
「でもさあ、俺お前の事好きだし」
「そうですか。そうですね。僕だって悔しいけれどあなたの事好きです」
顔だけは見られまいと後ろに逸らせば手が解放されて次に縛られたのは僕の身体だった。これってだ、だ、だ、
「何抱き締めてるんですか気持ち悪い!」
「うわ、ひっで!さっきから気持ち悪い気持ち悪いって!」
「その通りでしょう。こんな光景誰かに見られたらどうするんですか!」
「ぜーんぶ始めっから最後まで皆に見られてるけどね、少年」
突然聞こえた女の人の声に僕は視線を一生懸命そちらに向ける。スノウが悠長にもおー、ヴァニラ!どうした?なんて聞いてるからその人の名前はすぐに分かったんだけど。ヴァニラさんが青春だねえ、とにこにこしながら言って、ファングさんがそういうのは他所でやれよ、と冷やかす。何だ、何だこの状況。僕の背中に嫌な汗が流れた。
「セラもいるっていうのにホープにまで手を出すとは良い度胸だな」
「ね、義姉さん。これは違うってほら何て言うか男同士の友情っていうか」
「ライトさん助けてください僕襲われます!」
「お前どこでそんな言葉!」
スノウが焦っている間に僕は緩められた腕をくぐり抜けて脱出。ライトさんが武器を取りだすとスノウは意味のない説明をしながら後ずさり。何て間抜けな大人。はー、と溜め息を吐いているとヴァニラさんが何だかんだ言ってスノウの事、好きなんでしょ?と聞いてきたから僕は笑いながらまあ、はい。と答えた。どうやら鬼ごっこが始まるらしい。


大人と子供の事情
(好きって、あなたはどういう意味の好きか分かっているのでしょうか)



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