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希望20歳で現代パロ


こつ、と僕の額がテーブルにぶつかって音を立てた。どうしようもなく眠い。僕は虚ろな意識の中、重い瞼を上げるように頑張りながら近くにあるワイン瓶の中身を注ぐ。少しきつめの葡萄の匂いが少しばかり僕を覚醒させた。時計を見ると0時ちょっと前。もう少しで今年が終わるんだな、と悲しくも僕が一人で呟くと同時にポケットの中に入れておいた携帯が震えた。飲もうと持っていたグラスを置いて携帯を手に取りゆるゆるとボタンを押して耳に当てるともしもし、と少し低めの女の人の声が聞こえた。
「…起きているか」
「寝てたら出ませんよ、ライトさん」
「それもそうだな。今、お前一人か?」
「はい。ライトさんの方は…騒がしいですね」
今、馬鹿が来ていてな。とライトさんの苦笑いが聞こえて僕も釣られて苦笑い。スノウ、ライトさんの方にいるんだ。セラさんも一緒、かな。小さく溜め息を吐くとライトさんがお前も来い、と言う。僕は少し考えた後歩きなので遅くなりますけど行きますね、とだけ言って電話をきった。準備をしようとゆっくりと立ち上がると再び携帯が震えた。今度は何ですか。
「よう、ホープ。お前一人だって?」
「…スノウ、声大きいよ」
「んー。俺今そっちに迎え行くから待ってろ」
「ライトさんに頼まれたんでしょう?いいよ、歩いて行くから。それに酒飲んでそうだし」
「義姉さんがお前歩きだって言うからさあ、俺迎えに行こうと思って。大人に任せとけって」
「僕も二十歳で大人なんですけどね」
だいじょーぶ。任せとけよ。その言葉を最後に電話をきられた。何なんだもう。やっぱり変わってない。立っているのも面倒になって僕は先程まで座っていた椅子に腰掛けた。時計の針は0時を当たり前のように過ぎていた。もう明けましておめでとう、か。それから少し経って色々考えていると車の音が聞こえて玄関を開けるとやっぱりスノウだった。早い、ね。飛ばしてきたのかな。
「…飲酒運転」
「一口だけだから」
「そういう問題じゃないです。それと飛ばしてきたでしょう」
「ん、まあな。いいから乗れよ。あ!」
「何ですか。大きな声出さないで下さいよ近所迷惑になります」
「明けましておめでとう!」
え、このタイミング?僕が思わず口を開けているとスノウは間抜け面だなあ、と笑った。慌てて口を閉じて明けましておめでとう、と言い返すと満足そうに僕の頭を掻きまわす。不思議な、人だ。おまえに一番に言いたくてさあ、と聞こえて僕はでも一番に言ったのはセラさんでしょ、と嫌味を込めて言えば今度はスノウが間抜け面になった。そして目を細めるとまだ言ってない、と驚愕の事実を僕に告げる。何だか嬉しくて僕が抱きつけば大きな腕が僕の背中に回った。少しだけ、優越感。僕は彼にとって一番の存在になれなくてもこうやって何かの一番になれればそれでいいかな、なんて。


一番に言いたいんだ


▼明けましておめでとうの時にこっそりフリー配布してたもの。現在はアンリンクのみフリー。


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