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例えば。僕がそう言うとスノウがこっちを見て例えば?と聞き返してきた。例えば性格も、声も、容姿も、全部同じの人と出会ったらどうしますか。
「うーん。俺は考えた事もないな。お前は?」
「僕、ですか。僕は特に何も。似ていますね、と言うだけな気がします」
「…簡単な答えだなあ」
「僕自身、そう思います。それなら、」

僕が死んだらどうしますか。

「…そんな事させない」
「それは分かりませんね。僕たちはいつも危機に立たされてますから」
不意に肩に衝撃が来た。スノウの大きい手が僕の肩をきつく掴んでいる。僕はクスクス笑って冗談ですよ、と言えば蒼褪めた顔に赤みが戻った。大切にされている、と自惚れてもいいんですか。敢えて聞かずに肩に置かれている手に僕の手を重ねて痛いです、と言う。悪い、と彼は言って笑った。もしこの世の中に僕のコピー…そのコピーにとっては僕もコピーだけれど、その人がいたとしたら僕はその人を殺そうと狙って、僕も狙われているのかもしれない。スノウは僕の(正式に言えばセラさんのだけど)だから僕に似た人はいらない、と言って僕はきっと僕自身を殺すのかもしれない。この世に似て非なる自分がいるのなら僕はきっとその人の身近な人とも繋がっているのかな。
冗談、と僕は笑ったのにそれでも少し真剣な顔して守るからな、と言ったスノウが目にこびりついて離れない。


例えばの話
(それでも本気になってくれて有り難う)



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