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スノウが一番大事なのって、セラさん?そう聞くとにっこり笑って一番なんて決められない、と僕の頭を掻きまわしながら言った。そして皆大事なんだよ、と。それなら、僕の事も大事なんですか。聞こうとしてやめた。今、そう言ったじゃないか。皆大事だって。ああ、もう。笑ったその顔を殴ってやりたいですよ。どうせなら一番大事なのはセラだ、と言って欲しかった。こんな、人の気持ちも汲み取れないような鈍感のどこが良かったんだろう。僕は僕で、女々しいのだけれど。はじめは彼に、憎しみ以外の感情なんて持ってなかった。どうして自分だけ幸せそうに笑っていられるのか。こんなにも憎んでいる人間が傍にいるっていうのに。あんたが手を離した母親の子供だっていうのに。ライトさんからお守り、と渡されたナイフがやけに重く感じられたのも僕の醜い、黒い感情のせいだと気付いたのはつい最近だったかもしれない。その時はスノウのせいだとばかり思っていたから。僕も彼も、何かと鈍い。

「皆、大事なんですか。一番大事な人っていないんですか」
「そう言われてもなあ…。皆大事だし。だから皆を守りたいんだ」
「例えそれが無理な事だと分かっていても?」
「努力は、するさ。しないと何も始まらないだろ?」

そう、ですよね。少しばかり俯きながら言うとスノウは具合でも悪いのか、とか的外れな事を聞いてきた。ほら、やっぱり鈍感だ。手を前に組んでぎっちり握ると、大きな手が添えられた。一人で抱え込むなよ。何でも相談していいんだからな。またぐしゃぐしゃに頭を掻きまわされながら僕は口に出さずに問う。あなたの事が好きだ、なんて言ったら困るでしょう?この曖昧な、仲間という関係さえも僕は壊したくないんです。前は憎しみの対象だったのに、可笑しいですよね。僕だけを守る、とその口はいつ言ってくれますか。嗚呼、やっぱり僕は一人で抱え込む事しか出来ないじゃないか。僕は男。スノウも男。僕がその感情を抱く事態が間違っている。肩に置かれた手がとても醜くて綺麗なものに思えて、僕はそれを払って言う。やっぱりあなたの事、嫌いです。


口が紡いだ矛盾
(僕の意思とは関係なしに)



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