xx years old








事を終えたら、余韻も冷めぬうちに煙草に火をつける。
それはとてもさっぱりとした関係。

まだすこし火照っていた肌をごまかすようにシャツを羽織ると、珍しくその肩を引き寄せられた。


「おい、お前誕生日だったらしいじゃねぇか。なんで言わねえんだよ。」


知ってたら祝ってやったのによ、と言う佐川の言葉は本心なのか建前なのか。

きっと後者であることはわかっていた。

確かなまえは以前、何かの話のついでに佐川に自分の誕生日を伝えた気がするから。


「わざわざ言うことじゃないし。誕生日くらいで一喜一憂するような年齢でもないしね。」


髪をかき上げて、肩に回された手を振りほどいた。
いつもなら、頼んでも触れてこないこの男が
こんなスキンシップをしてきたら密かに喜んでしまうのに。

今日は、シャツ越しに伝わる佐川の体温が気に入らなかった。


フン、と口元を上げるだけの佐川の横顔を視界の端に捉える。
なんとも言えない居心地の悪さすら感じて、ベッドの下に落ちて丸まった下着を拾い上げる。


「お前、幾つになったんだよ」

「それ、言う必要ある?」

「そう怒るなよ」


佐川に背を向けるようにして、ベッドから出ると身支度を整える。
別に怒っているわけではなかったけれど、それを否定する言葉を考えるのが面倒だった。

そこいら中に散乱した衣服を拾い集めるたびにすこしだけ下半身が軋んだ。


「何歳でもいいけどよ。心配してんだよ俺ぁ。
可愛いお前に幸せになってもらいたいじゃねえか。」


今日の佐川はいやに饒舌だ。
そう、彼は何かにつけてなまえを試すかのように、自分と関係を続ける意味や意義のようなものを考えさせる。


「だってよ、お前。婆になった時一人じゃ寂しいだろ?」


いつもはここまで追求しない佐川の本心は、今度こそわからない。
謎かけのような言葉に、黙ったまま、服を着て、乱れすぎていた髪は簡単にまとめ上げた。

化粧も適当に、家に帰るくらいまではしのげる程度に直した。


「ご忠告、どうもありがとう。」


でも、と付け足しながら化粧ポーチを仕舞って肩にバッグを担ぐと、顔だけ振り返る。


「私は私なりにこれでも幸せだと思ってるから。
あなたが死ぬまで、厭だと言ってもずっと私は側にいてあげるの。
そして、一人になったら、とってもセクシーでロックなお婆ちゃんになるわ。」


「そりゃ、おっかねぇ。」


なまえの抑揚のない言葉に、
まぁ、じゃあ仕様がねえなと、愉しそうに佐川は嗤った。










【 xx years old 】



ふたりともに 夢から醒めた時には







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