そういう馬もあると云う





好き、嫌い、どうでもいい。

真島の抱く感情なんて、そんなものだと思っていた。

広大な『どうでもいい』を抜け出して『好き』に分類されたことは嬉しいけれど

なぜ『好き』に分類されているのか、理由は今でもわからない。



「まぁた殺しかい。物騒やのぅ。」



テレビをザッピングしている真島が珍しくニュースを見ながら呟いた。

物騒が服を着て歩いている癖に何を、と思ったが

なまえは何も言わず新聞から顔を上げた。



「近いじゃん。犯人捕まってないの。」

「知らん。」



大切な情報が流れる前に、違うテレビ局へ移ってしまった。

どうせ数日後には無事に逮捕されるであろう優秀な警察が

存在が既に凶悪な真島を娑婆に出しているとはどういう了見なのだろう。

ザッピング中にちらりと映ったバラエティ番組はトークが中心になっていて

昔のような危険と隣り合わせの企画はもう流行らないと、少しだけ寂しくなった。



「真島さんさぁ。」

「あ?」



この寒いのにアイスを食べている真島が、テレビを見たまま返事をする。

煙草は催促すれば一口くれるのに、アイスはくれない。



「私が殺されたら、どうする?」



案の定催促する手を軽く無視して、アイスを食べ続ける。

先ほど同様知らんと返されることは、まぁ想定の範囲内だった。



「なんやなまえ、殺されるようなことしてんのか。」

「してないけど。」



服装も行動も突飛なら、発想も突飛。

一介のサラリーマンに殺される理由があってたまるかと思いながら

また新聞に目を通した。



「桐生ちゃん時は、4tやったと思う。」

「は?」



本来舐めるべきアイスキャンディを噛みながら、ソファに足を組んだ真島が言う。

何のことかわからず聞き返したけれど、真島の目線は明後日の方を向いていて

記憶を辿っていた。



「10tでええか?」

「だから、何の話?」



困惑するなまえに、お前の話やと返される。

意味はよくわからないけれど、愛されているということは何となくわかった。





あんまりにも現的な御伽噺




prev next









「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -