馬場 × スクランブルエッグ という可能性



珍しくとてもすっきりと目が醒めた。

コンマ1秒ほど寝室の天井を見上げ、なまえはハッと息をのむ。

おかしい、いつもと違う。

朝の静かでピンとした空気と違い、ひと段落ついたような午前10時の空気感。

サァーっと血の気が引くのを感じ、ガバッと飛び起きる。



「あ、おはようございます。」



パジャマ替わりの大き目なTシャツのままリビングに出ると

コーヒーの匂いと洗剤の匂い。

それと、恋人の爽やかな挨拶。



「…そっか、今日休みだ。」



脈拍が落ち着いていくのを感じる。

ここの所激務が続いていたせいか、すっかり曜日感覚もなくなり

たまの休日だというのに、すわ遅刻かと焦って損をした気分になった。



「ゴメン、いろいろやって貰っちゃって。」

「いいえ。そろそろ起こしに行こうかと思ってたんですよ。」



3日分の溜まった洗濯物はベランダで、すっかり高くなった陽に当てられて揺れている。

キッチンに溜まった洗い物は乾燥機の中でピカピカに並んでいて

昨日まで埃っぽかったリビングはキチンと整理整頓されている。

馬場は朝刊と湯気の立つコーヒーをなまえに手渡しながら、よく眠ってましたねと笑う。



「いびきかいてましたよ。」

「えっ、ほんと?」

「嘘です。」



新聞でリビングに引き返す馬場の背中を軽くたたく。

へへっと優しそうに力の抜けた笑顔で笑う馬場の向こうから、美味しそうな匂いがする。

昨夜スーパーに夕飯の食材を買いに出かけた際、ついでに購入した

朝食用のベーコンが焼ける匂い。



「たまご、固めにします?」

「うーん…、任せる。」



眼鏡をかけて朝刊を広げ、2面を流し読みしながら返事する。

はいはい、と馬場の返事が聞こえたかと思うと、野菜を洗う水の音。

経済欄を読み進めるなまえの隣で、朝食の支度がテキパキとダイニングに並べられていく。

シャキッとしたレタスと水にさらされたレッドオニオンにはドレッシングがかけられ

くし切りのトマトと斜め切りにされたきゅうりが彩りよく添えられている。


まだ油がプチプチ音を立てるベーコン。

固めと柔らかめが混在した、絶妙な加減のスクランブルエッグ。

焼きたてのトーストが別の皿に盛られて置かれると、やっと馬場も席についた。

ほとんど読み終えた朝刊を脇に置いたなまえと対面で朝食を食べながら

すっきりとした快晴にどこへ行こうかと相談する。



「公園でも行く?」

「いいですね。なまえさんと外でデートするの、久々だなぁ。」



デートなんて気恥ずかしいけれど、嬉しそうに笑いながらサラダを口に運ぶ馬場に

平日の殺気立った毒気が抜かれていくような気がする。

こんな散歩日和の暖かい日は、依然馬場が似合うと言ってくれた

綺麗な色のシャツを着ようと考えながら、なまえはこんがり焼けたトーストに手を伸ばした。




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