加齢臭 ep.桐生の場合



「なぁ、なまえ、もういいだろう。俺、そろそろ・・・」

「あぁ・・・ いいわ、一馬、来て・・・」


汗でしっとりと湿ったシーツ。

今だけはうるさい神室町のサイレンも雑踏も、なまえと桐生の吐息にかけされる。

ゆっくりと、その湿ったお互いの愛が歩み寄る。

息苦しい程の熱情と欲望の中、桐生となまえの体が重なり、そして・・・


「・・・そんなに暑い?」


予想だにしなかった反応に、桐生が体を離す。

もっとこう、あぁ一馬すてきぃ、とか。

すっごぉい、とか、もうだめぇ、とか。

そういう言葉がくるものだと思っていた。


「どういう・・・意味だ?」

「なんていうか、今日の一馬、とっても・・・」



『汗臭いっていうか・・・』



堂島の龍の目が凍り付いた。

“恐ろしい子・・・!”状態とでもいうのだろうか。

神室町を彩るネオンに映し出された桐生の顔は、

間違いなく一昔前の少女漫画のそれと一致していた。


「汗・・・くさい、だと?」


白目をむいたまま桐生が言う。

なまえの体に侵入を試みたそれは、もはや見る影もなく沈黙している。


「・・・うん、あの、なんかごめん。」

「いや、いいんだ。」


俺が・・・汗臭い?

遥にも言われたことないのに・・・ いや、気を遣っていたのか?

さっきシャワーも浴びたし、毎日風呂に入っているし、

何なら日常的な運動(喧嘩)で汗も流しているから新陳代謝はいいはずなのに・・・


気にしなくていいよ!却ってセクシーだよ!とフォローするなまえの声は

神室町の雑踏よろしく今夜の桐生の耳には届かないようだ。


後日、紙袋いっぱいのエ●ト・フォーやら汗拭きシートやら香水やらを下げた桐生の目撃談が

神室町を一部騒然とさせることになるのは、そんなに後の話ではない。







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